23-8.秘密
「これダンジョンよね」
私達は開拓候補の島を探している最中に降り立った島で、洞窟を見つけて覗き込んでいた。
「そうだね。
しかもかなり強い力を持ってるよ」
『なかみたい』
『コアほしい』
「ハルちゃんって自力でコアの制御奪えるの?」
『うん』
『かいせきした』
「ハルは凄いわね……
私と生きてる期間は殆ど同じくらいなのに」
「お姉ちゃんは無理そうね」
「まだあの魔道具持ってるから奪うだけなら出来るわよ。
流石に道具無しの自力では無理だけど」
「お姉ちゃんも収納魔法使えるの?」
「ええ。使えるわ」
「グリアにも教えてあげてね。
グリアが使えるやつは色々と制限が多いから」
『ハルおしえた』
『もうつかえる』
『グリアすごい』
「あの魔法陣の技術はやだなぁ……
あんなの広まったら手に負えないよ」
「ニクスって技術発展に干渉して制御していたりするの?」
「……場合によってはね」
「ドワーフの国だってそうやって滅ぼしたのでしょう?」
「お姉ちゃん!?」
「いや、あれは少し違うよ。
私が手を加えなくてもいつか滅びていたんだよ。
世界を巻き込んでね」
「ニクス……」
「大丈夫。
深雪の件があったから話せる事が少しだけ増えたんだ。
うっかり口が滑ったわけじゃないよ。
アルカに嫌われたくなくて我慢出来なかったのはあるけど」
「大丈夫よ。信じているわ」
「ありがとう」
「本当に国ごと滅ぼすしか無かったの?」
「そうだよ」
「……」
「お姉ちゃん。それ以上は止めてほしいな。
言いたいことがあるのなら、はっきり言おうよ。
含みを持たせるだけじゃ何が不満かわからないよ?
私も思う所が無いわけじゃないけれど、ニクスの事を信じるって決めたの。
私はニクスの味方をするよ。
こんな事、ヘパス爺さんには言えないけど」
「……いいえ。何も無いわ。
私が言えたことじゃないもの。
ごめんなさい。ニクス。喧嘩がしたい訳じゃないわ」
「ううん。こちらこそ」
「とりあえず、家に帰ろうか。
ダンジョンならノアちゃんも興味があるだろうし。
というか、黙って攻略したなんて知られたら怒られてしまうわ。
折角なら、アリア達の初めてのダンジョンチャレンジにしちゃいましょうか。
ここなら貸し切りよ!
なんせ冒険者どころか、他の人間自体いないのだし」
「島の大きさもちょうど良さそうだよね。
いっそダンジョンも資源として利用するのも良いかもしれない」
『まかせて』
『ハルせいぎょ』
『おいしいまもの』
『いっぱいだす』
「いっそ、ハルちゃんの妹でも生み出してみる?
あれ?娘かな?
お姉ちゃんならノウハウも持っているんじゃない?」
「そういえば、ハルがやたら従順だったり、マゾっぽい所があるのは深雪の趣味なの?」
「なんの話?
私は変な事してないわよ?」
『ママせってい』
『ちのうたかい』
『てきいない』
『ふたつだけ』
「ハルちゃんそんな事まで自覚してるの?」
『うん』
『コアかいせき』
『りれきみた』
「そんな機能まであるの?
なんかダンジョンコアだけゲームみたいね」
「まあ……うん。
ところで、ハルはなんで普通に喋らないの?
知能の高い吸血鬼なら普通に喋れるでしょ?」
『のーこめんと』
「わざとなの?
でも私と契約した時に少し流暢になったわよね?
大人モードの時は殆ど普通に喋れるわよね?」
『……』
『のーこめんと』
「ハルあなたキャラ作りでもしてるの?」
『ちがう』
『ちゃんと』
『はなせるまえ』
『ママ』
『ハルすてた』
「うぐ……」
『それから』
『はなしたこと』
『なかった』
『アルカと』
『さいしょ』
『あったころ』
『はなしかた』
『わすれてた』
「つまり今ならやろうと思えば普通に話す事も出来るけど、いきなり普通に話すのが恥ずかしいから、段階的に解除していく気なの?」
『アルカきらい』
「ごめんなさい!もう言わないから!
お願い!嫌いにならないで!!」
『ゆるす』
「ありがとう!ハルちゃん!
それで、話し方は置いておいても、敵意が無いって思っているより厄介なんじゃないの?
反撃する意思すら持てないとか無い?
最初、アリアにすら怯えていたのは、ハルちゃんが優しいだけじゃなくて、その設定も原因じゃないの?」
『だいじょうぶ』
『かいじょした』
「もう何でも有りね……」
「つまり苦しいのが好きなのはハル自身の嗜好だったんだね」
「ハル……どうしてそんな事に……」
『ママのせい』
「え!?」
『ママ』
『ちからつよい』
『ママのぎゅ』
『くるしい』
『ハルすき』
「苦しいから好きなんじゃなくて、お姉ちゃんに抱き締められるのが好きだったから、苦しくさせるのが好きなのね」
「同じじゃない?」
「違うでしょ?」
「ハルちゃんぎゅってして良い?」
「して」
「ズルい私も!
ハルに負けないくらい苦しくして良いから思いっきり抱き締めて!」
「三人ともこんなとこで何してるのよ。
家に帰ってからにしなさい」




