23-1.家族会議
「皆。賛成してくれてありがとう。
一旦この話は終わりにしましょう。
それで、もう一つお願いしたい事があるの。
今度はリヴィとノアちゃんによ。
リヴィと契約を結びたいのだけど認めてくれないかしら」
「嫌です」
「リヴィけいやくする!」
意見は真っ二つに分かれた。
「そういう話は私に先にしてください。
こんな全員の前でいきなりする事ないでしょ」
「そうよね。ごめんなさい。
リヴィと契約できれば、ハルちゃんの力でリヴィの成長が早まるかと思ったのだけど」
「どういう事ですか?」
「契約で私を介してハルちゃんがリヴィの補助を出来るんじゃないかって話なの。
ハルちゃんの補助って凄いのよ。
私の魔法もあっという間に強化してくれたんだから」
「まだ必要ないんじゃありませんか?
アルカと違って、リヴィの成長はまだ途上です。
自分で試行錯誤する事にも意味があるはずです。
何でもかんでも教えれば良いわけではないでしょう?」
「うぐ……仰るとおりです」
「後で二人で話しましょう。
いえ、ハルとリヴィも含めて四人ですね。
もう少し細かい所を確認してから判断しましょう」
「わかったわ。
えっと。あと三つ話をさせてもらうわね。
一つが、この拠点の改築がしたいの。
ヘパス爺さんにはこれから頼むけれど、レーネとの式典の後にするつもりよ」
この件は満場一致で賛成してくれた。
「二つ目が、こことは別にもう一つ拠点を作ろうと思うの。
今度は何処かの無人島に作りたいと思っているわ。
海で遊んだり魚を釣ったりが出来るように整備しておきたいの。
それで、来年の夏から利用できると良いと思うのだけどどうかしら」
この件も満場一致で賛成してくれた。
「良い考えね!是非やりましょう!
また水着も買わなくちゃね!」
セレネの興味はわかりやすい。
「うみ?」
「水がいっぱい」
「リヴィしってる!」
三人娘はいつも仲良しだ。
『海は良いですね。
私も楽しみです。
いっそ、私の国と近い場所で探すのはどうでしょう』
レーネは魚を食べることに抵抗が無くなったようだ。
以前のレーネは意思の疎通が出来るために、魚介類を友達と考えており、食べることを拒絶していた。
人魚の国では、原型がわからないように加工する事で食べさせていたようだが、この別荘で暮らし始めてから、ノアちゃんは近くの滝で釣った魚を元の姿のまま、容赦なく食卓に並べていた。
まさか、食べられるようになった理由が川魚は友達じゃないからとかじゃないよね?
「それも良いわね。
候補に入れておくわ。
そういう事なら候補地を探しに行くときはレーネにも付き合ってもらいましょう」
『はい!お供します!』
「海辺は耳がベタつくので何か対策が欲しいです」
ノアちゃんは一応賛成はしつつも、唯一難色も示した。
「魔法を作っておくわ。
多分、水中適応の魔法と同じような感じでいけるでしょ」
あれ使ってれば水に入っても濡れないし。
海水浴用に指定部位だけ濡れることも出来るように調整しておこう。
水の感触を楽しめなければ海水浴の意味も薄くなってしまうし。
『ハルやる』
『かんたん』
『お願いね!ハルちゃん!』
早速私の記憶を覗いて、私の中で魔法を弄りだすハルちゃん。
相変わらず魔法の解析、改良が好きな子だ。
新しい魔法を知る度にチャレンジしている。
ハルちゃんの魔法知識はこうして育まれてきたのだろう。
「島探しに行く前に港町に連れて行ってくれるかしら。
色々と下調べをしておきたいの」
「わかったわ。カノン。
こちらこそお願いね。
カレンがいてくれて心強いわ」
「ふっふっふ!」
どやカノ可愛い。
「何だかズルいわ。
私はそんな自由気ままに暮らす気にはなれなかったのに」
「お姉ちゃんが何の憂いも無く暮らせるようにしてみせるからね!
だから、安心して身も心も委ねてね!」
「今まで深雪はあまり派手に動きたくなかったんだよね。
今後はアルカがいるから気にしなくても大丈夫だよ」
「うん……」
お姉ちゃんはまだ現状を受け入れきれていないようだ。
大きく歴史を変えてしまわないように、数百年も静かに目立たないように暮らしてきたのだろうし無理もない。
お姉ちゃんの心もゆっくりと解きほぐしていくとしよう。
体を揉んであげれば心にも届くかしら。
『ハルもやる』
『そうね。早速今晩にでも試してみましょう』
ニクスはお姉ちゃんに優しく声をかけてくれた。
さっきまでの意地悪ニクスではなくなったようだ。
わかってくれて何よりだ。
「それで、三つ目が例の計画の事よ。
お姉ちゃんにも詳しく説明しておきたいの。
皆も説明に協力してくれると嬉しいわ」
「計画?」
「ええ。題して方舟計画!
又の名をプロジェクト・◯ーク!」
「その名前はやめなさい」
「深雪も特撮好きなの?」
「あなたの入れ知恵ね!?」
「時期的にアルカの失踪から一年も経ってないよね?
意外と余裕あったの?」
「小春が似たようなのを見ていたからよ!
小春の手がかりが少しでも欲しかったの!」
「……ごめんなさい」
「お姉ちゃん。本当に形振り構わずだったのね」
「当たり前でしょ!」
「もう素直にアルカの想いに応えたら?」
「どうしてそこに繋がるのよ!」
「はいはい。その話はそこでお終い。
話を先に進めなさい」
「は~い。
それで何がしたいかと言うと、永遠に近い寿命を持つ私達が、人間として生き続ける為に出来る事をしていきたいの。
これはお姉ちゃんの目的とも合致するでしょ?
それで、そのためにまずは組織を作ることにしたわ。
組織の目的は情報と資金を集めること。
私達が人間社会に関わり続けるにはその二つが必要なの。
そして組織そのものも、私達が社会に関わる為の窓口の役割も果たすわ。
まさに一石三鳥ってやつね。
ここで問題です!
その組織名とは一体何でしょうか!」
「何でアルカこんなに燥いでるの?」
「お義姉様に会えて、その真意を知って色々ギリギリなの。
あまり気にしないであげてね」
「カノンがそう言うなら、まあ良いわ」
「ありがとう。セレネ」
「何で二人はそんなに仲良くなってるの?
セレネもう手を出したの?」
「まだよ。アルカが出してないのに私がするわけ無いじゃない。
それくらいは弁えてるわ」
「レーネには手を出したよね?」
「ちょっと戯れただけよ。
アルカこそ、いい加減レーネにもしてあげなさいよ。
いくら何でも放置しすぎじゃない?」
「仕方ないでしょ!
あと少しの辛抱なのよ!
式典が終わったら全て貰うつもりよ!
それまでは我慢するために少しだけ距離を置いてるの!
そうでなきゃ私の理性なんて保たないわ!」
『アルカ様ったら!皆の前で恥ずかしいです!』
「アリアにはいつ手を出してくれるの?」
「ルカも出して」
「リヴィも!」
「子供達の教育に悪いので止めて下さい。
早く話を進めましょう。
ということで、お姉さんお答え下さい」
「……ユ◯ドラ◯ル・コーポレーション?」
「違いま~す」
「鎧◯ネタいつまで引っ張るの?
というか、なんでそんな事覚えてるの?
六百年も覚えてたの?アルカ関係ないよね?
やっぱり特撮好きなんじゃないの?」
「うるさいわね!」
「はいはい。喧嘩しない。
ニクスは次にお姉ちゃんに喧嘩売ったら今夜は別の部屋で寝てもらうからね」
「ごめんなさい……」
「では気を取り直して、答えを発表します!」




