表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

441/1372

22-17.報告

 ハルちゃんの夜の営み公開事件のお陰で、お姉ちゃんは少しだけ元気を取り戻した。

いや、別に映像のお陰で何かが元気になったわけじゃなくて、私を叱るために落ち込んでる場合じゃなかっただけなんだけど。



「さて、そろそろ帰りましょう。

 と言いたいところだけど、せめてギルドには顔出しておかない?

 エイミーとしてギルド長にくらいは謝っておきたいでしょ?」


「うぐ……」


「いい歳して怖気付いてるの?

 無断欠勤したくせに」


「ニクス!いい加減にしなさい!

 お姉ちゃんをイジメたら怒るって言ったわよ!」


「ごめんなさい……」


「ニクス」

「がくしゅうしない」

「おばか?」


「そうなのよ。

 どうしたら直るのかしらね」


「もう相当なお歳だから……」


「カノン!?

 そういうの良くないよ!」


「ニクスが言えることじゃないでしょ!

 反省しなさい!」


「はい……」


「ごめんなさい。

 私も言葉が過ぎたわ」


「ニクスから悪い影響は受けないでね」


「うん。気をつける」


「ともかく、いつまでも脱線している時間は無いわ。

 早く済ませないとセレネの迎えに間に合わなくなっちゃうもの。

 どうするのお姉ちゃん?

 私が代わりに行ってこようか?」


「……行くわ」


「今後はどうするの?

 まだ受付嬢は続けるの?」


「それは……」


「辞めても構わないよ?

 うちの子供達の教育もお願いしたいし。

 私とカノンがいればお金だって困らないし。

 私としてはずっと側にいて欲しいから正直その方が嬉しいし」


「うぐ……」


「まあ、ともかくギルド長に話して許してもらってからよね。

 あのギルド長だから、捜索に冒険者達を派遣したりもしていたかもよ?

 前回私達が行ってから、一月近くは経っているのでしょ?

 攫われたとかでもないんだから、クビになるかもよ?」


「うっ……」


「なにか適当な良いわけでも考える?」


「いえ……ちゃんと正直に話すわ」


「そっか。まあ、とにかく行こう。

 どうせなら、一度謝ってから少し考える時間も貰えば良いよ。

 どうせ迷惑は沢山かけたんだからもう少しだけ甘えちゃおう。

 もちろんギルド長が許してくれたらだけど」


「……そうね」


「じゃあ、カノンとニクスは一度別荘に送るからね」


「わかったわ。帰って来るのを待ってるね」


「私も今回は流石に空気を読むよ。

 後はアルカに任せるよ」


「ありがとう。二人とも」


 私はカノンとニクスを別荘に送り届ける。

ハルちゃんはまた私の中だ。

お姉ちゃんはエイミーの姿に変身した。


 私はギルド長に小型転移門を繋いで、部屋を用意してもらう。

それから、お姉ちゃんを連れて転移した。






 私とお姉ちゃんはギルド長の正面に並んで座り、お姉ちゃんの口から自分の意志で失踪した事を伝えた。

ギルド長には異世界云々の話はしていないので、少しだけ内容を変えて説明した。


 お姉ちゃんと私は実の姉妹であること。

お姉ちゃんは私にそれを隠していたこと。


 エイミーの姿は変身魔法で作り出した仮の姿であること。

私達がお姉ちゃんの正体に気付きそうになった為に、慌てて

逃げ出したこと。


 今回の件で私に全てバレてしまったこと。



「話はわかった。

 いや、正直意味がわからない事ばかりだが。

 まあ、無事で何よりだ。

 本当に心配したんだぞ」


「すみませんでした」


「せめて一言くらいあればなぁ」


「重ね重ね、すみません……」


「ギルド長。今回の件でギルドが負担した分は私に補填させて欲しいの。捜索に冒険者を派遣したりとかもしたのでしょう?その費用とかは出させてもらえる?」


「いや。それは必要ない。

 確かに捜索は出したが、この業界じゃ別に珍しいことでもないからな。

 その辺りはギルドで負担するから気にするな。

 言うなれば福利厚生の一環だ。

 まあ、流石に本当の理由を話せば通らんけどな。

 その辺りは俺の方で上手くやっておく。

 それでどうするんだ?

 お前はこれからもギルド職員を続けるのか?

 それともアルカに付いて行くのか?

 正直、続けてもらえるとありがたいがな。

 何せ、お前は優秀だからな。

 いないと困ることも多いんだ」


「それは……」


「まあ、すぐに答えなくてもかまわん。

 たまには長めの休暇を取ると思ってゆっくりして来い。

 またいつ戻ってきても良いからな

 やり辛いなら、また別の姿で一からやり直しても構わんしな。

 新しい身分は何とでもしてやる」


「至れり尽くせりね」


「なんせ十五年近くも真面目に仕事に取り組んできたんだ。

 俺はエイミーを信頼しているからな」


「良かったね。お姉ちゃん」


「でもまさか、本当に姉だとはな。

 たまにふざけてそう呼んでいた事は知っていたが」


「私も本当に驚いたわ。

 まさか会えるなんて夢にも思っていなかったもの。

 まあ、エイミーの事をお姉ちゃんだと思っていたのは冗談でもないし、呼び方の方は違和感とかもないんだけどさ」


「元の姿はやっぱりアルカに似ているのか?」


 お姉ちゃんは変身を解除して、二十代後半くらいの姿になる。


「本当に姉妹なのか?

 全然似てないぞ?」


「そうなのよ。

 私はお姉ちゃんみたいになりたいってずっと思ってたのに、全然似てないんだもの。悲しいわ」


「私は両親とも似ていないので……」


「なんか隔世遺伝?なのかな。

 少し前の先祖に外国の人がいたらしくて、その人の影響が強く出たみたい。

 けれど、ちゃんと血の繋がった実の姉よ。

 少なくとも両親はそう言っていたわ」


「えっとエイミーで良いのか?

 本名も聞いたほうが良いのか?

 ともかく、その姿でもこの辺りの者とあまり変わらんな。

 アルカは別の国の人間だと一目でわかるが」


「お姉ちゃんの本名は深雪っていうの」


「ミユキ?あまり馴染みの無い響きだな。

 ということは、アルカも違うのか?」


「うん。私は小春よ」


「コハル?

 まあ、聞いといて何だが、面倒だ。

 アルカとエイミーで通させてもらおう」


「ええ。それで良いわ。

 とりあえず、色々ごめんね。

 今日の所はお姉ちゃんも連れて帰るから。

 近いうちにお姉ちゃんの覚悟が決まったら、また来るようにするからね」


「ああ。それでいい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ