22-16.映像
「それじゃあ、お姉ちゃんも元気になった事だし、改めて宣言しておくわ!
私はもうお姉ちゃんの過去については何も聞かない。
私自身ももう考えたりしない。
そのかわりに約束して欲しいの。
もう側から離れないと。
今後は過去のことは一切忘れて私と共に生きてくれると。
そう約束してくれる?」
「小春……」
「それとも、やっぱりお姉ちゃんの小春に会いたい?
そのために私達は力を貸したほうが良い?
お姉ちゃんが望むならそうしてあげるよ」
「どうしてそこまで!?ニクス!!!」
「私じゃないよ。自分で気づいたんだよ。
君達の世界は多元宇宙論まで義務教育になってるの?
普通はそこまで想像が及ぶものじゃないんだけど」
「ドラ◯もんの解釈はやっぱり間違ってたのね」
「M◯Uのやつが近いんじゃない?」
「そんな話出てきたっけ?」
「小春はニクスのせいで一作目しか見れてないから」
「深雪は続き見たの?
アルカがいなくなってそれどころじゃないかと思ってた」
「映画くらい良いじゃない。
私がいなくなって何年も探したって言っても四六時中それだけじゃ心が保つわけ無いわ!
というかニクスがそれ言うのはおかしいでしょ!
流石に怒るわよ!」
「小春……」
「何でお姉ちゃんが落ち込むの!?
お姉ちゃんが私の事以外にも興味を持っていたのなら、私は嬉しいの。
今、向こうの世界にいるお姉ちゃんも、いつか私が失踪したことによる悲しみを乗り越えられるって思えるの。
それだけが、今の私にとっての気がかりなんだから。
お姉ちゃんさえいてくれれば、お母さんもお父さんもきっと大丈夫だから。
だから落ち込まないで。お願い。お姉ちゃん」
「ごめんなさい……」
私は泣き出したお姉ちゃんを抱きしめる。
「もうお姉ちゃんったら。
ほら元気だして。
何も謝ることなんて無いんだから。
その事に関しては100%ニクスのせいだから」
「ごめんなさい……」
「ニクスは反省して!
私を転移させた事じゃなくて、お姉ちゃんに嫌なことを言ったことをよ!
お姉ちゃんを虐めるんだったら、ニクスだからって許さないからね」
「はい……」
「何の話だかさっぱりだわ。
ハルちゃんはわかるの?」
「さぶかるちゃー」
「?なに?」
「ごらく」
「アルカたちのせかい」
「いっぱいある」
「かこかいへん」
「テーマにした」
「そうさくぶつ」
「たくさんある」
「そのはなし」
「う~ん?
う~ん……」
「えんげき」
「きろく」
「いつでも」
「みれる」
「過去改変をテーマにした演劇がいっぱいあるの?
それを記録しておいて、好きな時に見れるってこと?
劇場に行かなくても家でとか?」
「そんなとこ」
「なるほど!
それは是非実現したいわね!
過去の記録をいつでも見れるなら情報収集にも役立つんじゃない?」
「そう」
「じつは」
「ハルも」
「きろくまほう」
「つくってみた」
「え!?凄いわ!
見せて!見せて!」
「アルカいい?」
「うん!私も見てみたいわ!」
「それじゃ」
ハルちゃんが手のひらから黒い霧を出すと、そこに映像が浮かび上がる。
「小春!!!」
「アルカ!?」
「ぷっふふ。ハルそれは。ふふ」
「ハルちゃん!?なんてものを!!」
「たいせつ」
「ハルのおもいで」
その映像は、数日前に私とハルちゃんが夜のベットの上でお楽しみ中の時のものだった。しかもハルちゃん目線。
「ハルちゃん!お願い!もう止めて!」
「しかたない」
「まだまだあるのに」
ハルちゃんが手のひらを握りしめると、黒い霧はかき消えた。
「おとがまだ」
「しょうじんする」
「もう撮っちゃダメ!
普通の時だけにして!」
「イヤ」
「ハルちゃん!お願い!」
「小春ちょっと話があるわ」
「うわー!あれって!うわー!」
「カノンはお子様なの?」
「ニクスも」
「じぶんがやるとき」
「うろたえるくせに」
「余計なこと言わないでよ!」
「じごうじとく」




