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22-13.変化

 私達はニクスに導かれるまま?

もとい、興味の赴くままにフラフラと進むニクスについて、町の中を練り歩く。


 醤油も大根も小豆も一通り欲しかったものは手に入った。

他にも味噌や蕎麦やわさび等も見つかりホクホクだ。

なんか一通りの食材は揃っていそうだ。

ここには定期的に来ることにしよう。


 予想通り刀も売っていた。

これはノアちゃんとのデートの時に買いに来るとしよう。きっと気にいると思う。


 カノンもこの地の商品には興味津々だ。

あの大陸には存在していないものだものね。

いったいどうやってニクスはこの島国を生み出したのだろうか。

一人転移させるだけでも大変そうにしているのに。

まあ、その辺の事は聞いても教えてくれないのだし、考えても仕方あるまい。



 ハルちゃんはカノンの腕の中でスヤスヤと寝息を立てている。

 今日はいつにもまして睡眠時間が長い気がするけれど、お姉ちゃんの件で色々と余裕がないからなのだろう。

 それでもカノンに気を使ったりと、相変わらず優しい良い子だ。流石私のハルちゃんだ。


 お姉ちゃんはまだぎこちないけれど何とか笑顔を浮かべようとしてくれている。

こうして見ているとエイミーとは違う顔なのに、エイミーの時も、今も雰囲気はお姉ちゃんそのものだ。

なんだか家族の事は殆ど忘れていた筈なのに、どんどん思い出が湧き上がってくる。


 お姉ちゃんはいつもこうして手を握っていてくれた。

中々外に出たがらない私を連れて、毎年お祭りにも連れ出してくれた。

お姉ちゃんが手を握っていてくれるならと、私も喜んでついて行ったものだ。


 私が突然いなくなって、お姉ちゃんまでこちらに来てしまって、残された両親はどうなってしまったのだろうか。

お姉ちゃんも両親の事については語ろうとはしない。

私のせいで……


 あれ?ニクスのせいじゃない?

私の家族を狂わせた元凶は、眼の前で寿司の屋台に夢中だ。

もう散々に仕返しもしたし、今更憎いとも思えないのだけど、お姉ちゃんはどう思っているのだろうか。

ニクスに対しても普通に接しているけれど、一体どういう心境なのだろう。


 お姉ちゃんを呼んだのもニクスではないのだろうか。

違うはずだ。

なら、わざわざ隠す意味がない。

誰がお姉ちゃんを呼び寄せたのか私には知らせたくないらしい。

加えて、私が知ることでニクスにも危険があるかもしれないと言う。

さっきは他の衝撃が大きすぎて深くは考えなかったけれど、少しだけ落ち着いた今になって、改めて考えてみたら、ニクスが殆どバラしてしまっていた事に気がついた。



「私なのね。

お姉ちゃんをこの世界に呼び出したのは」


「小春!?」


「私は神様にでもなってしまったのかしら。

 今でも半分はそうだしあり得ない事じゃないわよね。

 なら、ニクスはどうなったのかな。

 エイミーに助けてもらえなかった私が神様になる迄の展開なんて想像が出来ないけど、きっとニクスの事は私が……」


「小春!もうそれ以上は考えないで!

 今の小春には関係のないことなの!」


「だからお姉ちゃんはニクスに対して強い恨みとかを見せなかったのね。

 既に、私は一度その恨みを晴らしたのね」


「やめて!お願いよ小春!

 考えないでよ!お願いだから!私は何の為にここまで!」


「大丈夫だよ。お姉ちゃん。

 ニクスも言っていたでしょ?

 今の私はそんな事にはならないわ。

 ニクスの深い悲しみを知ったの。

 私はニクスを心の底から許して愛しているの。

 だから、神に成り代わろうなんてしないわ。

 お姉ちゃんもいるのに、そうしてまで元の世界に帰ろうなんて思わないわ。

 そもそも、きっと帰れなかったのでしょう?

 だからお姉ちゃんを呼び寄せたのでしょう?

 寂しかったから。会いたかったから。

 なら、もう何も理由なんてないじゃない。

 お姉ちゃんがここにいてくれて、ニクスは隣で笑ってる。

 それに、他にもいっぱい家族がいるのよ!

 皆大好きなの。愛しているの。

 だから、私は大丈夫よ。

 お姉ちゃんも安心して側にいてね。

 これからも私の事を愛していてね」


「小春!」


「そう考えると、ハルちゃんも私にとっての大きな変化なのね。

 お姉ちゃんが生み出したって事は、前の私にはいなかったのだし。

 ハルちゃんがいたから私はニクスを引きずり出せた。

 ハルちゃんがいたから私はニクスの心に近づけた。

 ハルちゃんのお陰で、今の私はニクスを憎んでいない。

 純粋に愛してる。

 ハルちゃんと出会わせてくれたお姉ちゃんのお陰ね。

 お姉ちゃん。ありがとう。

 お陰で私は幸せよ」


 お姉ちゃんは私に縋り付いて泣き出してしまった。

このまま町の真ん中でこうしているわけにはいかない。

私はカノンとニクスも連れて人目につかない所に潜り込み、自宅に転移する


 もう十分に買い物も済ませたし、お姉ちゃんが落ち着いたら、別荘に帰ることにしよう。


 カノンとハルちゃんはお茶を淹れに行ってくれた。

ハルちゃんは事あるごとに私の記憶を覗いているので、この家のこともいつの間にか把握していた。

カノンを案内してくれているようだ。


 ニクスは側で座っている。

お姉ちゃんが話し出すのを待ってくれているのかもしれない。


 お姉ちゃんはまだ私の腕に縋り付いて泣いている。

きっと溜め込んだものが多すぎるのだろう。

落ち着くまではこうしていよう。

お姉ちゃんだって沢山待っていてくれたのだから。

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