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22-12.無計画

 私はお姉ちゃんと手を繋ぎ、カノンはハルちゃんを抱っこして街を歩く。


 ニクスは一人でうろちょろしてる。

綺麗な金髪が奇異の目で見られていてもお構いなしだ。

本当にこの町はニクスの趣味で作られたのかもしれない。

なんかやたら詳しかったし。

今も興味津々だし。

随分都合の良い人見知りだわね。


 というかニクスの場合、人と話したりとかそのものよりも、人と深く関わるのが怖いのだろう。

相手を傷つけてしまうのが、そして自分が傷つくのが怖いのだろう。

あの心に抱えた悲しみがまた増えてしまうのが怖いのだろう。


 だから、初めて話す人には緊張してしまうのだ。

その先の未来を想像して怯えてしまうのだ。

ニクスの人見知りを治すには、あの悲しみをどうにかするしかないのだろう。

道理で何千年も治らないはずだ。

今は何も出来ない以上、せめてこうして、少しずつ楽しい思い出を作って薄めていくしか無いのだろう。


 私はニクスの事から思考を切り替える。

暗い顔をしている所を見られたら意味がない。



「流石にそのサイズじゃ重くない?

 カノンって意外と力持ちなの?」


 今のハルちゃんは十歳のアリアより少し小さいくらいだ。

体重もそれなりに増えているはずだ。

普段から鍛えている私達ならともかく、お姫様が抱いたまま町中を歩き続けるのは大変そうだ。



「それなりには鍛えているわ。

 それにハルちゃんったらとっても軽いの!

 まるで羽のようだわ!」


「サービス」


「なるほど。

 ハルちゃんが気を使ってくれていたのね。

 それにしても、カノンは本当に頑張り屋さんなのね。

 あんなに仕事も抱えていたのに、鍛錬までなんて。

 凄いわカノン!」


「ふっふっふ!

 アルカになら褒められると素直に嬉しいわ!

 もうすぐ仕事は終わるから、そうしたら私もノアの訓練に参加させてね!

 もちろん空いた時間で構わないわ!

 組織づくりも頑張るから!」


「いいえ。最初は訓練メインで構わないわ。

 むしろそうして欲しいと思っているの。

 組織作りよりカノンの安全が一番よ。

 その方針は今後も変わらないからね。

 危険だと思ったら組織なんて捨てて逃げ出して良いんだからね。

 カノンさえいてくれれば何度でもやり直せるんだから。

 私達には時間だけはいくらでもあるのだから」


「わかった!

 お言葉に甘えさせてもらうわ!

 変身とか転移とか可能な範囲で使えるようにしてから動いた方が効率も良いものね!」


「そうね。それもあるわね。

 今はハルちゃんに加えてお姉ちゃんまでいるんだから。

 きっと先生には事欠かないわ。

 私も一緒に教わっておこうかしら」


「組織って今度は一体何をするつもりなの?」


「お姉ちゃんにも後で教えてあげる!

 結構長い話になるから、家でゆっくりできる時にしましょう!

 もし協力してくれるなら、当面はカノンの護衛兼教師にでもなってくれたら安心ね!」


「それは悪いわ!

 折角姉妹で本当の再会が果たせたのに、私の方ではなくてアルカと一緒にいるべきよ!」


「もちろん、カノンが家で訓練をしている間はお姉ちゃんとも一緒にいるし、カノンが外に出るようになっても、私が護衛の名目で側にいたいとも思うだろうし。そこは臨機応変に行きましょう!」


「アルカの場合は行き当たりばったりじゃない?

 先延ばしにしている皆とのデートの事とか、レーネとの婚約式典の事とかも忘れてないよね?

 式典なんてあと数日後だよ?

 ちゃんと準備は済んでるの?

 人魚の正装なんて持ってるの?」


「その辺りはレーネが大丈夫だって……」


「レーネが人魚の国で着ていたような際どいやつで人前に出るの?

 ちゃんと当日の流れは確認したの?」


「うぐ……」


「小春。帰ったら全てのスケジュールを教えなさい。

 一度一緒に整理しましょう」


「お姉ちゃん、なんか声が怖いよ?」


「気のせいよ。

 小春は相変わらずね。

 夏休みの宿題も良く溜め込んで、私が言うまで何一つ手を付けていなかったものね」


「なんでそんな事憶えてるの!?

 何百年も生きていたんでしょ!?」


「それはもう言ったじゃない。

 小春の事だけは忘れないように魔法で何度も思い返したり、保護かけたり頑張ったもの。

 お陰様で記憶操作の魔法は得意な魔法の一つよ」


「どう考えても悪役の魔法だよ!?

 使い方がおかしいよ!

 そんな些細なことまで憶えておくよりお母さんとお父さんの事も憶えててあげてよ!」


「二人のこともそれなりに憶えているわよ。

 小春に関する記憶の半分くらいには二人も関わっているもの」


「私のついでじゃない!」


「アルカとお義姉様ってとても良く似てるのね」


「愛が重いのか、執着が強いのか。

 カノンの前でそんな言動見せてたっけ?」


「少し違うけど、セレネを覗いてたって話を聞いたわ」


「ああ。その話ね。

 ところでカノンはどっちだと思う?

 アルカのせいで周囲の愛が重くなっていくのか、愛の重い人がアルカを好きになるのか」


「アルカのせいに一票」

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