3-9.魔法大学
魔法大学に到着し、窓口っぽいところで紹介状を提示する。
「え!?・・・グリア教授の研究室ですね。
ご案内いたします。」
何?今の反応。
なんか驚いて固まって
何事も無かったかのように案内始めたんですけど・・・
気になるけど、黙ってついていく。
「こちらです。どうぞそのままお入りください。」
案内してくれた人は扉の前まで私達を連れてくると、
そのまま足早に立ち去っていった。
え?教授に紹介してくれないの?放置?
文句を言っても始まらない。
私は意を決してノックする。
「は~い。誰かね。入ってきたまえ。」
幼い少女のような声が聞こえる。
私は扉を開けて愕然とする。
部屋を埋め尽くさんばかりの本の山。
入れないんですけど・・・
件の教授が見当たらない。
「どこ?」
「ここだ!済まないが助けてくれたまえ!」
声のした方にするすると進んでいくノアちゃん。
器用だな~
積まれた本を崩さないようにしつつ、
平時と変わらないような速度で部屋の中に入っていく。
私とセレネは二人がかりで本の山をどかして道を作る。
ノアちゃんは部屋の中央で立ち止まると、
その場にあった本を次々にどかしていく。
そうして、一人の幼女が現れた。
見た目は。
違う!こいつ幼女じゃない!
私のセンサーがそう言ってる!
こいつはまがい物だ!
実年齢は確実に私より上だ!
なんか本能的にそう思う!
「助かった。礼を言うよ。
え~と君たちは誰かね?」
「私達は転移魔法について聞きたくて来ました。
冒険者ギルドから話は聞いていませんか?」
ノアちゃんが説明してくれる。
「ああ。聞いているとも。
待っていたよ!私の研究に興味を持つ
珍しい者がいると聞いて楽しみにしていたのだよ!」
「転移魔法使える?」
「いや、私には使えん。
魔力が圧倒的に足りんのだ。
残念ながら私に魔法の才能は無い。
だからこそ使える者を探していた!
そこに最高ランク冒険者の魔法使いが
自ら志願してきたとなればこれはもう
利用しない手はない。早速だが誰がその冒険者かね?
是非今すぐに試そうじゃあないか!
なあに心配はいらない理論は完璧だ!
だと言うのに誰もこの研究の素晴らしさを
わかろうとしないのだ!この研究が上手く行けば~」
一気にまくしたてるグリア教授
まだ話続けている。
え?
こんなコテッコテなマッドキャラ出てくるの?
早口過ぎてあまり聞き取れなかったけど、
なんか私の事モルモットくらいにしか思ってないよ?
一気に不安が募っていく。
「私」
ノアちゃんを一人で側に置いておけないと思い、
なんとか近づいて名乗りを上げる。
名乗れてない?
しゃあないだろ初対面なんだから!
「君が例の魔法使いだね!
さあ試そう!今すぐ試そう!
この術式を構築してくれたまえ!
大丈夫ちょっとばかり魔力消費は多いが
おかしなことにはならないさ!」
私は受け取った魔術式を見て驚く。
なにこれ?
術式が複雑すぎて全然わからない。
え?この人本当に天才かなにかなの?
本当にこれ使って大丈夫かしら。
事故って辺り一帯吹き飛んだりしない?
「大丈夫だ安心したまえ!さあ早く!」
それはダメなやつなんよ・・・
でも見た感じおかしなところは無い。
内容自体は理路整然としていて、
時間さえかければ読み解けるだろう。
ただとんでもなく複雑なだけだ。
これ本当に私の魔力で足りるのかしら。
段々と興味が湧いてきた私は
迂闊にも意を決して術式通りの魔法を構築していく。
「おお!きたきたきた!」
グリア教授は一人大興奮。
ノアちゃんは尻尾が逆だってる。
セレネは未だに状況がつかめていない様子。
そして魔法の発動する感覚がした瞬間、
私は膝から崩れ落ちた。
は!?
眼の前には本が一冊増えていた。
私の殆ど全ての魔力と引き換えに。
なにこれ?
こんなん使えないわよ!!!
本一冊転移させるのにどんだけ魔力使うのよ!
文句を言いたいけど言葉が出てこない。
あ、ダメだこれ魔力使いすぎた。
グリア教授は実験の成功に狂気乱舞しているようだ。
慌てて近づいてきたノアちゃんとセレネに抱きしめられる。
私を心配して何か言っている。
ごめんね。大丈夫だよ。
ただの魔力欠乏だから。
少し休めば回復するから。
私の意識はそのまま落ちていった。