22-2.名前
「まずは名前を決めましょう」
私から一通りの説明を受けたカノンは、進行を引き継ぐと最初にそう言い放った。
「名前?組織のってこと?」
「そうね。組織名も大事だわ。
けれど、それだけではなく、プロジェクト名をまず考えましょう。
名前は大事よ。
皆で一つの目標を目指すためには指標が必要よ。
名前はその最たるものよ。
指標がなければ何れは目的を見失うわ。
自分達が何のために頑張るのか常に思い出せるようなものがいいわね。
例えば、楽園計画みたいなね」
「はい!」
「どうぞ!アリア!」
「アルカのお嫁さん化計画!」
「没」
「はい」
「ルカ!どうぞ!」
「アルカ真人間化計画」
「方向性は悪くないけれど、少しだけ今回の趣旨とは違うわ。
この計画は、皆でいつまでも仲良く健全に暮らしましょうというのが大本の目的よ。
最初にやることは、金銭と情報の収集を目的とするのだけど、それは結局のところ手段でしか無いの。
私達が誰にも害されずに、永遠に人の社会で生きていくためのね。
つまり、行き着く所としては、私達全員が人として在り続ける事が一番の目的なのよ。
それがわかる名前にしましょう」
「はい!」
「リヴィちゃん!どうぞ!」
「アルカこうせいけいかく!」
更生?
リヴィ私のこと社会不適合者だと思ってるの?
というか、よく更生なんて知ってたわね。
しかも、カノンの話もある程度は理解しているのね。
「アルカだけ更生させてもダメよ。
私達皆で人で在り続けなければね。
皆も、気持ちはわかるけど、プロジェクト名にアルカの名前を入れるのは止めておきましょう」
「「「は~い!」」」
私に更生が必要なことは共通認識なの?
「はい」
「ノア!どうぞ!」
「真人計画」
「う~ん。少しそれでは足りないわ」
「はい」
「セレネ!どうぞ!」
「楽園計画で良いんじゃない?
私達にとっての楽園を維持するために人で在りたいのでしょう?
そういう、外部との関係も含めた在り方に幸せを見出すのでしょう?」
「ごめんなさい。私が言っておいてなんだけど、それでは遠回し過ぎるの。
目標の形がぼやけてしまうと、きっといつか最初の夢を見失ってしまうわ。
そうなれば、道を間違える可能性だって高まるの。
もう少しだけわかりやすい名前がいいわ」
「なるほどね」
「一旦各自で考えてみてはどうかね?
少しばかり休憩を挟むとしよう。
脱線ばかりとは言え、ここまでそれなりに時間が経っている」
「そうね。そうしましょう。
皆もそういう事でお願いね。
それと、少しだけアルカを借りても良いかしら?
話したいことがあるのだけど」
「カノン。そこまで気を使わなくて大丈夫です。
この人数ですから気にしすぎていては、いつまでもアルカの事を独占できませんよ?
むしろ、自分から奪い取るつもりでいってもらって構いません。
アルカは意外とその辺りだけは上手くバランスを取ってくれますから」
「そうなの?
ならお言葉に甘えさせて貰うわ。
ありがとう。ノア。
後でノアともゆっくり話したいわ」
「ええ。私もです。
さて、セレネ。
一緒にクレアさんのところにでも行きましょうか。
少し息抜きに体を動かしましょう」
「絶対少しで済まないやつじゃない!
今日はもう会議再開できないわよ!?」
「別にそれでも構わないですよ?
私達には時間ならいくらでもありますから。
それに、カノンとアルカも色々あるでしょうし、今日くらいは気を使ってあげましょう。
という事で皆も行きますよ。
観戦して下さい。お望みなら参加も自由です」
『「「「はい!」」」』
子供達を引き連れながら、セレネを引きずって訓練場に向かうノアちゃん。
「そういう事なら、ハル君を出してくれたまえ」
『ハルちゃんどうする?』
『いってくる』
『きょうだけ』
『カノンにゆずる』
『ありがとう。ハルちゃん』
私の体からハルちゃんが出現し、グリアと共に部屋を立ち去る。
そうして、あっという間に私とカノンだけが取り残された。
「カノン。色々勝手してごめんね。
皆、私達に気を使ってくれたみたいだから、今日の所は会議は終わりにしましょうか。
少し二人きりで親睦を深めましょう」
「ううん。気にしないで!
皆の気遣いは嬉しいわ!
私だって色々と我慢していたのだもの!
折角ならこれからアルカを独り占めしてしまうわ!
じゃあ、アルカ。
今度はアルカがエスコートしてくれるかしら?」
「喜んで。お姫様」




