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22-1.脱線

 私達は前回のようにダイニングテーブルに集まって会議を始める。

今回は、私の隣にはノアちゃんとカノンだ。

ノアちゃんの隣にはセレネ、カノンの隣にはグリア。

対面にはレーネ、リヴィ、アリア、ルカと並んでいる。



「これまでにも何度か話し合ってきたけれど、今回からはカノンにも加わってもらうわ。

 最初だけは私から現状を説明させてもらうわね。

 その上で、本当ならカノンに協力して貰えるかの確認から始まるはずだったのだけど、カノンも家族に加わってくれた事だし、一言だけで済ませましょう。

 カノン。私達の計画実現の為に力を貸してくれる?」


「ええ。任せて!

 アルカとその家族の為に私も尽力するわ!」


「ありがとう。とっても心強いわ!

 じゃあ、まずはこの資料を見てくれる?」


 私はカノンに作成した資料を手渡す。




 グリアと協力して作成したドワーフの組織に関する資料。


 クレアとニクスに棚卸しを手伝ってもらった、

収納空間内の素材等含む、私個人の資産状況に関する資料。


 私達家族のそれぞれの立場に関する資料。


 転移や念話等の組織に役立ちそうな技術に関する資料。




 カノンの決定次第では、少しずつ開示する選択もあったのだろうけど、私は全て包み隠さず伝えてしまうことにした。



「これは興味深いわね。

 例の組織についてあらましは聞いていたけれど、まさかここまで細かい情報が出てくるとは思わなかったわ。

 それにアルカや皆の事まで……

 これ本当に見せてよかったの?

 私のことを信頼してくれるのは嬉しいけれど、もう少し用心するべきではなくて?

 私がアルカを好きな事に嘘偽りは無いけれど、あなた達の立場からしたら、正直胡散臭すぎると思うのだけど。

 たった数時間しか会ったことのないアルカに惚れたから、姫の立場を捨てて転がり込んできましたなんて、我ながら冗談みたいな話だと思うもの」


「疑問はもっともですが、心配は不要です。

 私達も何も考えずに受け入れたわけではないのです。

 カノン。私は人の感情が読めます。

 カノンが本気でアルカを好きになったのだと理解しています。

 皆も私の判断を信じているのです。

 まあ、アルカ本人は何故か初対面の時からカノンに心を開いていたようですが」


「その考えはわかるのだけれど、その判断は危ういと思うわ。

 好意と利用しようという感情は両立できるのよ?

 私個人はアルカの事が大好きだけれど、私の以前の立場からすれば、どんな手段を用いてもアルカに近づきたいと思うのは当然の話だわ。

 だって、アリアとルカの事も好きだし、あの国の事も好きなのだもの。

 それだけで全てを守れるのなら、私は迷わずアルカに嫁ぐわ。

 そして、そんな場合でもノアは真意を見抜けるの?

 そこに打算があったとしても、私がアルカを好きな事には変わりないのよ?

 見抜けなければ、何かあった時に、アルカと国のどちらを取るかわからないのよ?」


「その心配に至るのはカノンがまだアルカの事を真に理解していないからです。

 アルカに好意を寄せた以上、打算等に意味はありません。

 アルカへの好意はある種の洗脳です。

 一度関わってしまえば逃げることなど出来ません。

 カノンこそおかしいとは思わないのですか?

 大切な妹であるアリア達を誑かした上、自分の事を良く知りもしないのに想いに応えた軽薄なアルカに、なぜ自分は好意を持てるのだろうと疑問には感じませんか?

 冷静に考えてみると、この人欠点だらけなんですよ?

 それでも、全員が好意を抑えられなくなるのです。

 おかしいことはわかっていても好きで好きで堪らないのです。

 私もセレネも、アルカには何度も泣かされました。

 正直、アルカの言動については信用に値しません。

 けれど、それでもアルカを愛しています。

 絶対に側を離れる事等出来ないのです。

 カノンも何れそうなります。

 ならば、裏切り等考えるだけ無駄なのです」


「……何だか怖くなってきてしまったわ。

 確かに私らしくない事をしすぎている自覚はあるわ。

 そうね。言われてみればこれは全てアルカへの好意が故なのよね。

 まあ、でもノアも言う通り、今更アルカの側を離れるなんて気にはならないわね。

 もしかしてアルカって、あの国の王族にとっては致命的に相性最悪何じゃない?むしろ相性最高?

 ともかく、私もアリアもルカもアリア達のお母様も、私のお父様も、好きになったら形振り構わないところがあるし、実際ルカと私はかなり強引な方法でアルカの所に転がり込んできたのだし。

 アルカ。もうあなたはあの国の王族と関わってはダメよ?

 この調子で引き抜いていたらきっと国が滅びてしまうわ。

 逆に、アルカの魅力で乗っ取るという手も無くはないけれど」


「それは嫌です。

 アルカを好きな人が増えるのは仕方がないことと諦めつつありますが、率先して増やしたいわけじゃありません」


「そうね。私もそう思うわ。

 まあ、まだ暫くは私も城に通う予定だから送り迎えだけはお願いするけれど、他の妹達に出会わないように細心の注意を払いましょう」


「まだいるんだ」


「アルカ。まさか興味を持っていたりしませんよね?」


「そんなわけ無いでしょ!」


「どうだか。アリアもルカもカノンも可愛すぎるくらい可愛いのだもの。

 その上、アルカの好みなのも間違いないわ。

 そんな子達がまだいるかもって思ったら顔くらいは見てみたくなるんじゃない?」


「そんな事思わないってば!」


「アルカがそう思わなくとも、向こうから近づいてきてしまう可能性はあります。

 カノンの時もそうだったのですよね?」


「そうね。元はと言えば私から話しかけたんだったわ。

 今思うと、あの瞬間から私の人生変わりすぎじゃない?

 元々城を出るつもりではいたけど、ここまで急激な変化を迎える予定は無かったわ。

 でも、今の私はそれを嬉しいとしか思っていないのよね。

 これまで沢山頑張って準備してきたものが、全部このときのためだったんじゃないかとすら思うわ。

 洗脳……そう。確かにそんな感じね」


「少し研究してみるのも良いかもしれんな。

 仮に何らかの力によるものならば、アルカ君自身が制御できるに越したことは無いし、抵抗する術も見つかるかもしれん。そうすればこのハーレム状態も終焉を迎えるのではないかね?」


『「「「それはないです」」」』


「ならばいつまでも脱線しているのはやめたまえ。

 カノン君は資料には目を通し終えたのかね?」


「ええ。一通りは。

 ありがとう。助かったわ。

 早速話を始めましょう。

 アルカからまだ話があるのよね」


「ええ。この情報を元に、私達がどんな計画を考えたのか提案させてもらうわね。

 それ以降は一先ずカノンの好きにやっていいわ。

 いくつかの最低条件はあるけれど、それ自体も話し合いましょう。

 その上で提案を取り入れるも良し、一からカノンの好きにやるも良しよ」


そうして、私達はようやく組織創設計画の会議を再開した。

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