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21-18.姉と母

「ところで、何で元の姿に戻ってるの?

 私は許可出した憶えないわよ?」


「子どものままじゃ、クレアと話す時にややこしい事になるかと思って……」


「勝手に呼んでおいてよく言い訳しようと思ったわね」


「ごめんなさい……」


 リビングにベットを並べていると、子供化変身を解除していた件をセレネに問い詰められてしまった。

今の今まで気付かなかったんだし、そこまで言わなくても良いじゃん……


 今はクレアとグリアとハルちゃんを除く全員でリビングに集まっている。


 流石にお客さんもいるためか、今晩はセレネも自重する事にしたようだ。

まあ、ノアちゃんもあの五人でって約束は半分冗談だったらしいし。

冗談だよね?


 クレアはとりあえず私の部屋に放り込んでおいた。

明日には回復しているはずだ。

ハルちゃんはそう言っていた。


 ハルちゃんはグリアに連れて行かれてしまった。

ハルちゃん大丈夫かしら。

とりあえず震えてはいなかったけど、ちゃんと答えられるか心配だわ。ハルちゃんの人見知りも相当だし。


 ところで、今から話するの?

明日にしない?もう寝ましょうよ。



 私は再び子供モードに変身して、並べたベットの中央に横たわる。

セレネが右隣に寄り添い、ノアちゃんが左隣。

ニクスが私の頭を抱え込むように丸まり、リヴィが上に乗ってきた。


 出遅れたアリア、ルカ、レーネが恨みがましげな目で私を見る。

一体どうしろと……


 結局三人とも、私の足元にくっついてきた。

冬とは言え、流石にこれは暑苦しい。

そう思いながらも、折角落ち着いたのに余計なことを言ってまた騒ぎ出すのも面倒だと思い直し、我慢して眠る事にした。







 翌朝、朝食の席にはクレアとグリアとハルちゃんも現れた。というか、グリア達はノアちゃんに引きずり出された。



「ハルちゃん。お疲れ様。

 一晩中話していたの?」


「グリアすごい」


 ハルちゃんはそう言い残して、朝食も食べずに私の中に戻る。

何が?

グリアと何してたの?



「名残惜しいが今日の所はセレネ君と共に教会に戻るとしよう。また夕方にでも迎えに来てくれたまえ」


「良いけど。グリアは大丈夫なの?

 ハルちゃんと一晩中話し込んでいたんじゃないの?」


「うむ。問題はないとも。徹夜は慣れている。

 それにしても、彼女の魔術知識は素晴らしいな。

 これを殆ど独学で身につけたとは信じ難い。

 基礎を教えたと言う母君にも会ってみたかったものだね」


「もうそこまで話してもらったの?

 随分と打ち解けたようね」


「最初は少々難儀したがね。

 まあ、その程度の事に不満を感じる必要など無い程に、価値の有る時間だった」


「大絶賛ね。流石私のハルちゃんだわ」


「次はハルと直接戦わせてくれよ。

 絶対お前より強いだろ」


「そうなんだけどね。

 ハルちゃんは別に戦う事が好きなわけじゃないのよ。

 私の為に私の力になってくれるのが好きな可愛い子なの」


「一々惚気てんじゃねえよ。

 というか、お前その指輪どうなってやがる。

 いくら何でも節操無さ過ぎだろ」


「クレアも加わる?」


「嫌だよ!私にそんな趣味はねえよ!」


「クレアって相手いるの?

 そろそろいい歳じゃない」


「余計なお世話だ!」


「何当然の様にクレアさんまで口説いてるんですか?」


「流石に冗談よ。クレアは私の趣味じゃないわ」


「こいつ、また性格悪くなってねえか?

 一人で生きてた頃はこんなんじゃなかったろ」


「実際、段々言動が幼稚になってきてるのよね」


「私達が告白した辺りから顕著になりましたね。

 あれ?でも覚視を身に着けた後辺りからかも?

 ともかく、根本的に子供な上に甘えん坊なんでしょう。

 一人で生きる過酷さで鳴りを潜めていた部分が環境の変化で表層化したように思います。

 昨日のエイミーさんへの甘え方とか酷かったですし」


「皆、言いたい放題ね。

 まあでも、お姉ちゃんにもエイミーにもだいぶ甘やかして貰った自覚はあるわ」


「お姉ちゃん?その口ぶりではエイミーさん以外の人ですよね?」


「うん。私、元の世界ではお姉ちゃんがいたの。

 優しくて綺麗で大好きだったなぁ。

 ずっとお姉ちゃんみたいになりたいって思ってたけど、私はお姉ちゃんとは全然似て無くてね。

 なんか、うちの先祖に外国の人がいたみたいで、人種も違うんじゃってくらい似てないの。

 それがとっても悲しかったのを覚えてるわ」


「そういえば、一度取り乱した時にも口にしてたわね」


「もう思い出しても大丈夫なのですか?」


「まあ、うん。たぶん。

 そもそもあまり顔も憶えてないの。

 なんとなくこうだったな~って思い出位しか出てこないの」


「「……」」


「大丈夫よ!今は皆がいるもの!

 それに、お姉ちゃんってエイミーによく似てるの。

 顔はそんな事無いはずなんだけど、雰囲気がそっくりだって、エイミーに出会った当時は思ったの。

 お陰ですぐに話せる様になったわ」


『アルカ……』

『ごめんなさい』


『突然どうしたの?ハルちゃん』


『ハルきになった』

『きおくたどった』


『おねえちゃん』

『アルカおぼえてない』

『ちがう』

『おもいだせない』

『だから、ハルさがした』


『ハル、このひと』

『しってる』

『ハルのママ』

『そっくり』


「……え!?」


『けど、ママ』

『もっととしうえ』

『アルカのきおくと』

『すこしちがう』


『おねえちゃん』

『みたい?』


『ハル。へんしん』

『できる』


「……お願いハルちゃん。

 ハルちゃんのお母さんも見せてくれる?」


『……うん』


 ハルちゃんは私の中から出ると、私の姉に変身した。

顔を見て、記憶が蘇っていくのを感じる。

自然に涙が溢れ出す。

けれど、声を出すのはどうにか堪えて、ハルちゃんに頷きかける。


 そんな私を見たハルちゃんは、今度はハルちゃんのお母さんに変身した。



「……どういう事なのニクス?」


 自分の声が酷く冷たく聞こえた気がした。

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