21-13.マーキング
私はアリアとルカを連れて、ノアちゃん達の元に戻る。
「アルカ!来てください!」
レーネとリヴィ相手に訓練をしていたノアちゃんは、私を見るなりアリア達も含めた生徒四人に指示を出してから、私の手を握って歩き出す。
そのままノアちゃんの部屋に連れ込まれて、ノアちゃんのベットに押し倒される。
「やっぱりアリア達の匂いです。
アルカ、いい加減にしてください。
あんな小さな子供達にまで手を出してはダメです。
我慢出来ないのなら私にしてください」
ノアちゃんは私にキスするなり、顔中を舐めながら、体を擦り付けてくる。
「我慢出来ないのは、ノアちゃんの方でしょ?」
私はノアちゃんと上下を逆にして、お腹に顔を埋める。
「違います。これは躾です。マーキングです。
アルカは私のものだという自覚が薄すぎです。
常に私の匂いだけ付けておいてください」
私の頭を抱え込んで思いっきり抱きしめるノアちゃん。
そのまま、私の髪に頬ずりしたり、舐めたりし始めた。
ノアちゃんが正気を取り戻す頃には夕方になっていた。
ノアちゃんの希望で今は大人モードだ。
ついさっきまで、私に体を預けて甘えてくれていた。
「そろそろご飯の準備しなきゃです。
アルカは先にお風呂に行ってください」
「折角付けてくれたのに消さなきゃダメ?」
私の体中からはノアちゃんの匂いがする。
髪まで舐める程の徹底ぶりで、全身に匂いを擦り付けてくれた。
「ダメです。何したかバレちゃいます」
「でもマーキングなんでしょ?
バレなきゃ意味ないじゃない」
「訓練をサボってこんな事していたら示しが付きません」
「じゃあ寝る前なら良い?
ノアちゃんにいっぱい匂いを付けてもらって、ノアちゃんの布団で、ノアちゃんの腕の中で、ノアちゃんの匂いに包まれて眠りたいな」
「なら一人で私の部屋に来てください。
楽しみに待ってます」
「明日行くわ!」
「今日はセレネとの約束がありますもんね!」
「ノアちゃんとも約束したじゃない」
「あれは半分冗談です!その場のノリです!」
「半分は本気なの?」
「……良いから動きますよ!離してください!」
「い~や~!このままノアちゃんと二人でいるの!」
「そっちの姿で子供みたいな我儘言わないでください!」
「言うほど私って普段から大人らしい事してなくない?」
「自分で言わないでください!!」
「ノアちゃんママ」
「怒りますよ!」
どうしよう。本気で離したくない。
考えてみるとノアちゃんとの二人きりは久しぶりだ。
最近は必ずセレネもいたし。
『ハルもいる』
『わすれるダメ』
『ごめんごめん。ハルちゃんは私の一部だものね』
『そう』
『いつでもいっしょ』
ハルちゃんも独占欲?
『ちがう』
『ハル、アルカのいちぶ』
『アルカ、ハルのいちぶ』
『じぶんのからだ』
『すきにするだけ』
ハルちゃんも順調に愛が重くなっていってるわね。
うちの子達なんで皆そうなるのかしら。
『アルカのせい』
ごもっとも……
「ノアちゃん。ノアちゃん」
「なんですか?離してくれる気になりましたか?」
何時までも手を離さない私に、面倒になったのか脱力して身を任せていたノアちゃん。
ノアちゃんも離れ難いだけかもしれない。
「ううん。離さないわ。もう一生手放さないの」
「それは困ります。ご飯作らないといけません」
「なにか良い方法は無いかしら。
ノアちゃんも私の中に閉じ込めてしまおうかしら」
「あんな暗闇は嫌です!」
「そうよね~」
「でも言いたいことはわかります。
もういっそのこと、ここに全員で引きこもってしまったらどうですか?
お金なんか無くたって生きていけますよ。
私が狩りも畑も全部やってあげます。
そうやって、完全に社会から切り離されて生きていくのも悪くないかもしれません」
「ノアちゃんが本気でそう望むのなら叶えてあげる」
「いじわる」
「でも、いつか諸々落ち着いたら、数ヶ月くらいそうして過ごしてみましょう。きっと楽しいわ」
「抜け出せなくなるかもしれませんよ?」
「ノアちゃんがいれば大丈夫」
「ひどいです。私にそんな役割を押し付けるなんて。
アルカは私を何だと思ってるんですか?」
「私のもの。私の一部。私の娘。私のお嫁さん。私の愛してる人。私の大好きな人。私を愛してくれる人。私を助けてくれる人。私を導いてくれる人。私の」
「もう良いです!
それずっと続ける気ですね!?」
「ぶーぶー!まだ言い足りないぞ~!」
「ほら、もう本当に離してください。行きますよ」
「仕方ないな~
ノアちゃんを困らせたくないし離してあげましょう」
「なんでそう言いつつ力を込めるんですか?」
「離そうとすると体が勝手に」
「転移させれば一瞬ですよ?」
「いやよ。そんなの勿体ないもの。
キッチンまではノアちゃんと一緒に行くの」
「その後はちゃんとお風呂に行ってくださいね」
「……本当にダメ?」
「ダメです。恥ずかしいです」
「さっきと理由が違うじゃない」
「どっちも本心です」
「私このままここで寝てしまおうかしら。
少し物足りないけど、ノアちゃんの匂いは残ってるし」
「人の事臭うみたいに言わないでください!
そもそも、今日は会議するんでしょ?
諦めて動いてください」
「は~い」
私はノアちゃんにキスをしてから、ようやく動き出した。




