3-7.三人の日常
あれから、度々ノアちゃんはクレアと一緒に訓練をしている。
「いってきま~す!」
「「いってらっしゃ~い!」」
今日も元気にギルドに向かっていった。
ノアちゃんがいない間、
私はセレネと過ごしている。
そうしてご機嫌になったセレネを見たノアちゃんは、
帰宅後は私を独占すると宣言した。
今日も帰宅した途端、私の元に来るノアちゃん。
「アルカ!今からは私の相手をしてください!」
ノアちゃんは結構ヤキモチ焼きなようだ。
私の膝の上でゴロゴロしている。
その姿はもはや完全に猫だ。
ノアちゃんのそんな姿を見て、
セレネは微笑ましそうだ。
普段は頼りになるノアちゃんだが、
こんな風に年相応に甘えてくれる事も、もう珍しくない。
セレネが来た当初は少し控えていたようだが、
また甘えてくれるようになった。
ノアちゃんが独占すると宣言したため、
セレネは律儀に距離を取っていた。
セレネ優しい子!
「セレネもおいで~」
思わず遠巻きに見ていたセレネを呼んで、
隣に座ってもらって頭を撫でる。
すると、膝の上で転がっていたノアちゃんが
私のお腹に額を押し付けるように抱きついてきた。
私はもう片方の手でノアちゃんの頭を撫でる。
どうやら正解だったようだ。
顔は下をむいたままだけど、
嬉しそうな気配が伝わってくる。尻尾から。
これがハーレム!
両手に花!
うちの子達可愛すぎる!
私はしばらく至福の時を過ごした。
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「セレネ!勝負です!」
「いいよノア!受けて立つ!」
二人は盤上に白黒の小さな丸い板を乗せて遊んでいた。
まあ、オセロだ。リバーシとも言う。
ドワーフ爺さんに最近作ってもらったやつ。
私一人の時はそんなものやる相手がいなかったので
考えもしなかったのだが、人数も増えたので、
いくつかボードゲームを作ってもらった。
最近の二人はオセロに夢中だ。
勝率はどっこいどっこいだ。
意外といい勝負をしている。
私の相手はしてくれなくなった。
私は誰かとゲームで遊んだ経験が
家族としかないせいか手加減が下手だ。
容赦なく勝つか、あからさまに手抜きの
どちらかにしかならないとはノアちゃんの言だ。
お姉ちゃん悲しい・・・
まあ、二人が喜んでくれたので良しとしよう。
あんまり相手してくれないと、
ゲームは一日三十分にしちゃうからな!
冗談だからそんな酷いって顔しないで二人共。
セレネ用の猫耳も完成したので渡したら、
喜んで付けてくれた。
付けた状態でノアちゃんと同じ服を来ていると本当に双子みたいだ。
今度エイミーにでも見せてみよう。
シャッフルクイズしてみたら楽しいかもしれない。こっちは。
私は間違えないけどね!
この前、わざと悩んで見せたら、
ノアちゃんが思いっきりショックを受けてた。
もう二度とやらないと誓ったよ。
あんな顔されるとは思わなかった。
ごめんよノアちゃん。
セレネは私達の間で起きた事に何も気が付かず喜んでいた、
そういうとこだぞ!セレネ!
まあ、そんなところも可愛いのだけど。
セレネは少し天然さんだ。
対してノアちゃんはしっかりしすぎるくらいだ。
よく回りを見ていて、とても気を使ってくれる。
このあたりは二人の境遇の違いが思いっきり出てて
なんとも言えない気持ちになる。
セレネはお付きの人達には良くされていたようなので、
箱入り娘に近い状態だった。
ただ、家族と呼べる人物は一人もいなかったようだ。
だからセレネは甘え方を知らない。
結局、脅威は本人には見えない形で潜んでいたのだけど。
仮に事件が起きず、あのまま教会にいれば、
いずれは枢機卿達に散々に利用されて命を落としていただろう。
対して、ノアちゃんは生まれた時から生き残るのに必死だった。
その果に、自ら奴隷になる事すら選ぶほどに。
そんな環境で生き残るには回りの事を誰よりも
察する必要があったのだろう。
今では甘えられるようになったけど、
今思うと来たばかりのノアちゃんは私にも警戒していた。
命を預けられる相手なのか見極めようとしていたのかもしれない。
「ノアちゃん、セレネ、二人共ちょっとこっち来て」
「「な~に?」」
近づいてきた二人を思いっきり抱きしめる。
「「どうしたの?アルカ」」
「なんでもな~い。
ちょっとこうしたくなったの~」