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21-10.人の道

 あれから暫くエイミーとの話を続けていた。

何故か私をガッチリ掴んで離さないエイミーと、私の昔話で盛り上がるノアちゃん&ニクス。

ハルちゃんは言いたいことを言って満足したのか、また定位置わたしのなかに戻っていた。



「お姉ちゃん仕事に戻らなくて良いの?」


「うっ・・・」


「そうでした!エイミーさんはお仕事中でしたね!

 長々と話し込んでしまってすみません!

 アルカの昔話が聴けて楽しかったです!

 また是非聴かせて下さい!」


「そっそうね!

 私もそろそろ戻らないと。

 また、今度家にでも遊びに来てくれると嬉しいわ」


 そう言いつつ、中々私のお腹に回した手を離さないエイミー。


「お姉ちゃん寂しくなっちゃった?」


「え?」


「お姉ちゃんも一緒に暮らす?」


「・・・いいえ。あなたにはもう守るべき家族が居るのでしょう?

 そうやって次から次へと手を出すべきではないわ」


 そう言って、先程までのぎこちなさが嘘のように、エイミーは私を離して立ち上がる。



「エイミーまでそんな言い方しなくても・・・

 私はただ、大好きなお姉ちゃんに恩返ししたいだけなの」


「そんな事は気にしないで大丈夫よ。

 こうしてたまに顔を見せてくれるだけで十分だから。

 そのついでで良いからまたその姿も見せてね。

 久しぶりに一緒に暮らしていた頃を思い出せて嬉しかったわ」


「うん!約束!」



 私達はようやくギルドを出て、昼食に向かう。

午前中の内にテッサの支部にも行くつもりだったけど、随分と時間を使ってしまった。



「ノアちゃんは何食べたい?」


「お肉にしましょう」


 聞くまでもなかった。


 ノアちゃんは迷いなく目標と定めた店に歩いていく。



『ハルちゃんはお昼は?』


『いらない』

『パンある』


『そう?折角なら一緒にお肉食べない?』


『・・・いい』


『ハルちゃん元気ない?

 何か気になる事でもあったの?』


『ううん』

『なんでもない』


 そう言いつつも、ハルちゃんのもやもやした感情が伝わってくる。

これはなんだろう?

私とハルちゃんの心は隷属の契約で繋がっているとはいえ、どうやらノアちゃんとセレネ程、ハッキリと伝わるわけではないようだ。


 私の心も中から見ているハルちゃんには全て筒抜けなのに、本来主人のはずの私の方が、得られる情報が少ないのは、どういう事なのだろうか。私が鈍すぎるから?

結局、ハルちゃんが何かを教えてくれる事は無かった。



 昼食を済ませた私達は、今度はテッサのギルド支部に転移する。

こっちは予め部屋を抑えておいてもらった。

下手に入口から入って大騒ぎされても面倒だ。



「ア・・ルカ?」


転移してきた私を見てフリーズするギルド長さん。



「ちょっとぶりね~

 変わりないかしら~」


「お前は変わりすぎだろ!

 なんでまたそんな懐かしい姿してるんだ!?」


「ちょっと罰で~、いえ、変装よ~。

 これなら誰も私だなんて気付かないでしょ~?」


「やめておけ、そっちの姿は別の意味で目立つ。

 知れ渡るのも時間の問題だ」


「新しく登録し直せば良いんじゃない?」


「それでは意味が無いだろうが。

 お前の目的はアルカとしてのものだろう。

 それに、あの地下の町を放り出すつもりも無いだろ?」


「ああ。それもあったわね。

 諸事情で今すぐには元の姿には戻れないけど、

 なにか良い感じの依頼はある?」


「いや。何も無い。

 ここ最近は大人しいものだ。

 依頼も小さいものはともかく、Sランクに頼む様なものは何も無いぞ。

 それに本部の連中も妙な動きは見せていない。

 例の組織の件もだ。

 潜伏して雌伏の時を待っているのか、

 もう手を出すつもりなどないのか。

 それすらも何とも言えんな」


「そう。まあ何も無いに越したことはないわよね~」


「どうしても何かする気なら他の地域にでも行くしかないが、正直それは止めておくべきだと思うぞ?

 あまり派手に動きすぎれば逆に刺激するだけだ。

 あくまでもホームであるギルドで貢献するだけでも十分だろう。

 そもそも、Sランク何ぞ、本来は年に数回も働けば十分だろうに」


「まあ、言っている事はわかるけど、それは本末転倒じゃない?

なんで大きな力を持つ者が率先して働かないの?」


「今更何言ってるんだ?

 お前が本気で何でもかんでもやっていたら、

 他の冒険者達が干上がっちまうだろうが。

 依頼が減れば冒険者も減る。

 それに、若い冒険者が育つチャンスも無くなってしまう。

 この支部を守る者としてそんな事は認めん」


「うん。まあ、わかるんだけどさ~」


「ともかく、うちでお前に斡旋する依頼はない。

 せめてもう一月は大人しくしていろ」


「そんなに!?」


「アルカとは思えない発言ですね。

 あの引きこもりは何処に行ってしまったのでしょうか」


「それはノアちゃんが連れ出したのが原因じゃない?」


「つまり私のお陰で今の家族があるのですね」


「ところで、その子供は?」


「この子はニクス。私の愛神」


「・・・」


 苦虫を噛み潰したような顔をするギルド長さん。

流石に開き直りすぎたわね。ノアちゃんもいるのに。



「私にとってもニクスは大切な家族です。

 どうか、アルカを許してやってください」



「まあ、ノアがそう言うなら私がとやかく言う事ではないがな。

 だが、一つだけ言わせてもらおう。

 アルカ。お前は本気で人間の社会で生きていくつもりがあるのか?

 最近の働きっぷりはそれが目的なのだと思っていたが、

 そんな姿でここに来た事と言い、

 ノアが認めてくれるのを良いことに、

 開き直って他の少女にまで手を出し始めた事と言い、

 社会のルールから外れる事を何とも思っていないのだろう?」


「勘違いするなよ。お前のやっている事に良い悪いと言いたいんじゃないんだ。

 神のように大きな力を振るって好きに生きるのなら、そうすれば良い。

 だが、そんな事をすれば早晩、人間の社会からは弾かれる事になる。

 お前は本当にそれを理解しているのか?

 家族をそんな道に巻き込む気か?」



私は変身を解除して元の姿に戻る。



「そうね。あなたの言うとおりだわ。

 少しはしゃぎ過ぎた。

 忠告してくれてありがとう。

 あなたが最初に言った通り、私達は人間として生きていくつもりなの。その為に頑張っているのよ。

 それを自分で台無しにしてたら意味ないわよね」


「そうか。まあ、なら良いんだ

 いや、良くはないがな。

 お前、子供好きと言ったって限度があるだろうが。

 そんな幼子を何人も抱え込んで何やってやがる。

 大体ノアの事だってなあ・・・」


 遂にギルド長さんからも長めのお説教を頂いた。

本来、私の担当でもないのに個人的な都合で巻き込んで、その上、ここまで怒らせてしまうとは・・・

本当にすみません・・・





 諸々話が終わり、私達は一旦自宅に転移した。



「さて、この後どうしようかしら」


「例の組織作りの件を優先すれば良いのでは?

 関わりたくないなんて言っても、本格的に動くのなら最初はやるべき事もあるでしょう。

 カノンとの話し合いの前に、こちらでも出来る事はやっておきましょう。

 計画の内容だけでなく、残りの資産の確認とか、死蔵している魔物素材の仕分けとかだけでもしておく必要はあるでしょう?」


「それもそうね。

 その辺りの情報があれば、計画を詰めるのにも役立つものね。

 悪いけど二人も手伝ってくれる?」


「ええ。もちろんです」


「良いよ!」


『ハルも』


「そうね。ハルちゃんもよろしく」


『うん』


 とりあえずのやる事は決まった。

他にも出来る事を考えながら動いて行くことにしよう。

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