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21-9.退行

 私、ノアちゃん、ニクス、ハルちゃんの四人は、一度自宅に転移した。このままギルドに向かうつもりだ。

セレネ、レーネ、幼少組は別荘待機だ。今日も訓練に勤しむらしい。


 別荘組が少し手薄な気もするけど、子供モードの私ではギルドで色々手間取り兼ねないので、今日はノアちゃんにも来てもらった。

今後も、ハルちゃんとニクス以外にも誰か一人は付いてきてもらう事にしよう。

なんせ、よりによって外回り担当がコミュ障ズだし。


 ハルちゃんは私の力の一部みたいな側面もあるので離れられないし、ニクスはせめてもう少し心を開けるようになるまで、側に居る必要があるだろう。


 あれから少しだけ、冗談めかさずに頼み事や我儘を言ってくれるようになったけれど、もっと信頼されたいのだ。


 昨日、ニクスがカノンへ提案してくれた事は正直嬉しかった。

今までどこか一線を引いていたニクスが、自分の意思で私の為だけでなく、全員の為になる事を口にしてくれたのだ。

これまでにも、私がやりすぎたりすれば口を出してくれたけれど、平時にそこまでしてくれた事は無かったと思う。


 それに、この計画はニクス個人の為にもなるはずだ。

ニクスの手が及ばない一番の理由は知ることが出来ない事にある。

魔王の時も、アムルの時も、ニクスがもっと早く知っていれば打てる手はあったはずだ。


 ニクスは全知全能ではない。

自分で知ろうと思った事しか知ることは出来ない。

そこは私達人間と大きくは変わらないのだ。


 ならばせめて、私達がその力になろう。

ニクスが気付いていないことを知らせられるようになろう。

その為にも、この計画を進める価値がある。



 私達はギルドに到着して、受付のエイミーに声を掛ける。



「お姉ちゃん。ギルド長いる?」


「・・・!?アルカ!?

 何やってるの!?今度は一体何なの!?」


 私を見て錯乱するエイミー

流石お姉ちゃん。すぐに私だと気付いてくれた。

この姿の頃からもうすぐ十年近く経つのに。


?あれ?

エイミーいくら何でも変わらなすぎじゃない?

私と出会った頃からこの姿よ?

二十歳くらいの容姿で全く変わってないわよ?



『にぶすぎ』

『さすがにへん』


 ハルちゃんが辛辣な事を言う。



「とにかく奥に行きましょう」


 いつもの会議室に行き、ギルド長も揃った所で話を始める。



「毎度毎度、お前はエイミーをからかって遊んでいるのか?」


「この姿がそう見えるの?」


 私はいつもはギルド長の隣に座るエイミーを自分の側に座らせて膝に座っていた。


 流石に調子に乗りすぎた?

でもなんか久々にこうしたくなったんだもん・・・


 エイミーも何も言わずに私の腰に手を回してるし良いよね。



「・・・それで?もう休暇は良いのか?

 とはいえ、流石に半月程度で新しい依頼なんぞ無いぞ。

 前回根こそぎ済ませただろうが」


 ギルド長は早くもツッコミを諦めたようだ。

結局、私の姿について直接的に言及する事は無かった。



「え?」


「まあ、今のアルカが一月も全力で働いたら依頼も枯渇しますよね」


「じゃあ、今日はエイミーお義姉様への挨拶に来たと言うことで。

 申し遅れました。私はニクスです。

 この姿では初めてお会いしますね。

 この度無事、降臨に成功しました」


「・・・」


 エイミーはフリーズしていた。

どうやら気絶しているわけではなさそうだけど。

そこに、私の中から大人モードで出現したハルちゃんが追い打ちを掛ける。



「私はハル。アルカの新しい恋人」


 大人モードだともう殆ど普通に話せるんだな~

でも人見知りの方は?


 それから暫く停止していたエイミーが、私のお腹をギリギリと締め上げる。っていうかエイミー、力強!



「お姉ちゃん!ギブギブ!お腹痛い!」


「ああ!ごめんなさい!つい!」


 無意識だったの?


 その後もエイミーは黙り込んでしまった。

今は考え込んでいるように見える。



 少しだけギルド長との近況報告を交わすと、ギルド長はエイミーを残して立ち去った。

本当にエイミーを貸してくれるらしい。

折角だからお言葉に甘えてお姉ちゃんに甘えよう。


私はエイミーの方に向き直って、正面から抱きついてみる。



「アルカ。調子に乗りすぎです。

 私達の前で何をやってるんです?」


 静かにブチギレるノアちゃん。



「なんか硬まちゃったから~、どうしたら動き出すかな~って思ったの~」


「良いから降りなさい」


「は~い」


 私がエイミーの膝の上から降りようとすると、エイミーが腕に力を込めて、逃がすまいとする。



「お姉ちゃん?正気に戻ったの?」


「アルカ?」


やばい?記憶飛んでる?



「そうだよ~アルカだよ~この姿懐かしいでしょ~」


「そうね。あれ?

 ギルド長は?」


「もう話し終わったよ~」


「そうだったのね・・・」


「大丈夫~?」


「ええ。もう大丈夫よ。

 それより、何でニクスさんはこんなに幼い容姿なの?

 アルカのせい?アルカみたいに子供に変えたの?

 ハルちゃんってこの前連れてきたあのハルちゃんよね?

 あなた、あんな小さな子にまで手を出したの?」


「ニクスは元々だよ~

 ハルちゃんなら、私の方が小さいよ?」


「真面目に答えなさい」


「ハル吸血鬼。アルカより年上」


「・・・吸血鬼?」


「エイミー何者?」

「純粋な人間種じゃない?」


「ハル!いきなり失礼ですよ!!」


「・・・普通の人間よ」


「嘘。なにか微かに感じる」

「けど、これ知らない」

「ニクスは気付かない?」


「・・・?

 ・・・・!

 ・・・・・ハル。あまり無理やり暴くもんじゃ無いよ」


「・・・わかった」

「エイミー。ごめんなさい」


「ええ。気にしてないわ。

 私の容姿が若いままなのは自覚しているもの」


「きっとエルフの血でも混ざってるんだよ~

 お姉ちゃん綺麗だもん!」


「アルカ・・・

 今更だけどあなた、精神まで退行しているの?」


「ううん~

 変わってないよ~」


「恥ずかしくないの?」


「う~ん・・・すこし~

 でもこれ、セレネのせいなの~」


「ノアちゃん?どういう事?」


「・・・多分可愛がり過ぎたんです」


「・・・そう」


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