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21-7.白紙の計画

 私はカノンに説明を続ける。



「私達の目的は資金稼ぎと情報収集を行うための組織づくりよ。

 私達の命は何千年でも続くから、この計画も数年で進める必要はないわ。

 何十年、何百年かけてでも良いから、世界中に根を張りたいの」


「かつて戦った敵も六百年かけてそんな事をしてきた組織だった。

 本体は潰したけど、まだ残党も残っている筈なのよ。

 けれど、その後については何も把握出来てなくてね」

 

「それにギルドも完全な味方とは言い難いわ。

 本部には私に敵意を持つ者達もいる。

 今のところ実害はないけれど、私が人前で動けば動向が筒抜けになる程度には警戒されているわ。

 それだけでも、正直気分が悪い」


「そんな人達に対抗するには、相応の規模が必要だと思ってる。

 だからその為の準備を始めたいの。

 けれど、私は正直な話、組織なんてものに自分では関わりたくなくてね。

 誰か信頼出来る人に代わりにトップに立ってほしいの」


「当然、いきなりそこまで覚悟を決めろとは言わないわ。

 計画自体を詰めたりとか、どんな準備が必要かとか、相談に乗ってくれるだけでも嬉しい。

 勿論、相談だけでも相応の報酬は支払う。

 念の為言っておくけど、断ったからって危害を加えたりなんてしないから安心してね。

 どう?興味はあるかしら」



「アルカはあまり話し方が上手くないわね。

 最後の危害を加えないって言うのも本気なのでしょうけど、そのタイミングじゃ匂わせているようにしか聞こえないわ。

 本当に危害を加える気がないのなら、あなた達の致命的な情報を話す前に、今引き返すのならと前置いて、詳しい内容を聞くかどうか確認するものよ。

 話してから念を押しても実質一択になってしまうもの。

 まあ、私も詳しく聞きたいと言ったし、途中で話を止めようともしなかったのだし、あまり言えた事でもないのだけど」


「ともかく、その辺りも含めて状況は察したわ。

 つまり、本当にまっさらなのね。

 ニクスの言う、一般常識に疎いというのもこういう所からどうにかする必要がありそうね」


「ここまで知ってしまった以上は協力させてもらうわ。

 あなた達の秘密を知ったからじゃなくて、アリアとルカが想像以上に不味い状況なのだと把握したのだもの。

 けれど、今の時点でどこまでとは言えないから、まずは計画を立てましょう。次の話はそれからよ。

 私の考えはそんなところね」



「色々ごめんなさい・・・」


「私の事はともかく、今のままではいつか二人が社会から締め出されてしまうかもしれない。

 あなた達ならほとぼりが冷めるまで身を隠す事も容易なのでしょう。

 けれど、あの念話?魔法とかいう遠方との連絡手段が流通すれば、いつかは逃げ場も無くなるんじゃない?

 あなた達が本当に何千年でも生きるのなら、そんな未来もあり得ない話じゃない。

 だからまあ、問題視して動こうと考えていた所には感心するわ。そうして私に声をかけてくれたのも嬉しい。

 是非私にも協力させて欲しいわ」


「カノンお姉ちゃん!」


アリアが席を立って駆け出し、カノンに抱きつく。



「アリア。まだ話は終わってないわ。

 もう少し大人しくしてましょうね」


「は~い」


「いえ、話は一度終わりにしましょう。

 カノンが何時までも行方をくらましているわけにもいかないでしょう?

 それにもう少しくらいはアリア達とも話したいだろうしね。

 その間に私達ももう少し計画を話し合っておくわ。

 この件は私とニクスだけで考えていたような思いつきでしかないの。

 カノンの言う通りまっさら白紙の計画なのよ。

 せめて家族にも相談してから巻き込むべきだったわね。

 グダグダで申し訳ないけど、今日は一旦切り上げましょう。

 協力の方も折角決断してくれた所で申し訳ないけれど、アリアとルカの為だけなら全ては任せられないわ。

 この計画はそれこそ人生を賭けてもらう必要があるの。

 だから、自分の為にやりたいって理由でないと続かないと思うのよ。

 カノンもそこだけはもう一度考えておいてね」


「そうね。アルカの言う事ももっともだわ。

 私も気が急いていたのね。

 頭を冷やして考え直す事にするわ。

 正直な所、今日は驚きすぎて気持ちが高ぶっているの。

 一晩程度じゃ落ち着ける気がしない。

 悪いけど一週間程時間を貰っても良い?

 私の身の回りの事も含めて整理しておくわ」


「ありがとう。お願いね。

 じゃあまた一週間後にでも迎えに行くわ。

 今日も帰りたくなったら私に言ってね。

 すぐに城の近くまで送り届けてあげるから。

 けど、出来ればもう少しだけアリアとルカの相手もしてあげてくれると嬉しいわ」


「もちろん!

 改めてこれから宜しくね!

 計画の件は置いといても、アリアとルカの姉として、あなた達家族にも仲良くしてもらえると嬉しい!」


「こちらこそ。

 よろしく。カノン」



「さて、話も済んだしアルカは来なさい。

 ハル、アルカの中から出てきなさい。

 アルカと二人きりで話をさせてもらうわ。

 またあんな卑劣な手段で遮られたら困るのよ」


「まだカノンを送る必要もあるんだけど・・・」


「ハルも転移使えるじゃない。

 カノン!悪いけど、ハルが送るから。

 これからアルカは折檻しなくちゃいけないの」


「ええ。構わないわ。

 なるほど。そういう力関係なのね。

 少し興味深いわ。

 そう言えば、私の事もお嫁さんに誘ってくれるの?

 そっちも興味があるんだけど」


「え!?」


「ア・ル・カぁ?」


「待って!本当に私まだ何もしてない!」


「あなたの話なんて聞く必要はないわ。

 あなたが私だけを見てくれればそれで良いの」


「待って!嫌!もう拘束は嫌なの!お願いセレネ!!!」


「良いから自分で歩きなさい。

 言っておくけど転移で逃げたら承知しないわよ。

 私と本気で喧嘩したくないのなら止めておくことね」


「お願い聞いてセレネ!今回は本当に何もしてないんだってば!」

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