21-5.緊急回避
私達は場所を改める事にした。
これからする話は私達の秘密も込みになる。
出来るだけ外界と接していないところでするのが望ましい。
それにどの道、ノアちゃん達の許可も必要になるので、最初から伝えておく事にしたのだ。
そうして、カノンを連れて別荘に転移した私は、セレネの前で正座していた。
今頃カノンは、アリアとルカとの再会を楽しんでいるはずだ。
ノアちゃんは一応そちらに付いてくれている。
流石に出会って数時間の人を大事な家族の前で放置できなかった。
まあ、今更疑ってもいないのだけど。
「信じてください。今回は本当に何もしてないんです」
「何を?私がアルカを信じると思うの?」
酷い・・・
「セレネ。今回引き入れる事を提案したのは私なんだよ。
アルカは一度は立ち去ろうとしたカノンを呼び止めただけなんだよ」
ニクス!?何で刺すの!?
「で?経緯を説明しなさい。
一応聞いてから判断してあげるわ」
「細かい話は全員の前で改めてするけど、結論だけ一言で言うなら組織を作りたいの。
目的は資金稼ぎと情報収集。
私達の寿命は半永久的に続くのだから、どれだけお金があっても足りないわ。
だから、誰かに経営を任せて起業したいの。
いずれは組織的な情報集めも任せるわ。
その創始者にカノンを勧誘したいの」
「まあ、言っていることには同意するわ。
けれどね。アルカ。
なぜその大役を子供に任せようと思ったの?
どう見てもカノンは私達と大差ないじゃない。
アルカの趣味ではないと言えるの?」
「セレネ。それについては心配無いよ。
カノンの能力を見込んで提案したのは私なんだよ。
アルカの趣味が入る余地なんて無かったから安心して」
「・・・その言葉は信じるわ。
けどね、毎度毎度出かける度に増やされたんじゃ堪んないのよ!
そもそも何でそう都合よくアルカの趣味の範疇の人材に出会うのよ!?
ニクス!これは世界の因果とやらが関係してるんでしょ!?」
「アリアはともかく、アルカにはそんなはず無いはずなんだけど・・・」
「まさか私が好みの女の子に出会うよう仕向けることで、内部分裂を狙ってるとか!?」
「"好み"の女の子?」
「あ!?」
「もう!良い加減にしてよアルカ!」
ニクスまで敵に回った!?
嫁増やしに賛成してるんじゃなかったの!?
だってしょうがないじゃん!
あのアリアの姉だよ!
義理の姉とは言え、同じ血が流れてるんだよ!
敢えて地味に見せる化粧してるけど絶対正体はとんでもない美少女だよ!?
私のセンサーがそう言ってるんだよ!!
つい呼び止めちゃったってしょうがないじゃん!!!
などとは口が裂けても言えないので、余計な事を言わないように気を付けながら、必死に二人を宥める。
「ちょっとニクス!
アルカ全然否定しないじゃない!
やっぱこいつもう目を付けてるわよ!」
こいつ!?
「アルカ流石におかしいよ!
つい数時間前に出会ったばかりだよ?
ずっと私達と一緒にいたんだよ!?
いくらアリア達に好意的だからってなんでもう完全に心を開いてるの!?
もう目移りしちゃったの!?
今朝まであんなに愛してくれたのに!!」
待ってニクス!それ以上はダメよ!
あかん・・・
二人とも全然収まらない・・・
『まかせて』
ハルちゃん!?
いつの間にか同化していたハルちゃんが頼もしい一言を発すると共に、私の視界は暗闇に包まれる。
と思った次の瞬間には、セレネが抱きついていた。
「アルカ!それは卑怯よ!
その姿のアルカを責められるわけ無いじゃない!」
ああ。子供化したのか。
グッジョブハルちゃん。
まあ、流石に私も卑怯だと思うけど。
『もどす?』
『いえ、このまま行きましょう。
カノンも待たせているのに、これ以上時間を取られるわけにはいかないわ』
『しょうち』
「セレネ~
もう行こう?
お客さんもいるんだから~」
「毎度毎度あざといのよ!
何なのこの美少女!
なんであんなのに成長しちゃったの!?」
「私はいつもの大人アルカの方が好きだなぁ・・・」
テンション上がりまくりのセレネと対象的に、ニクスはトーンダウンしていた。
まあ、何れにせよ二人とも追求は諦めたようだ。
正気に戻る前にとにかく移動しよう。




