20-31.顛末②
私は再び眠りについたニクスから、少しだけ体を離す。
顔を見ていたら、きっとまたキスしてしまうだろう。
そう何度も起こしてしまっては可哀想だ。
天井に視線を移して、ニクスと繋いだ手に少しだけ力を込める。
ニクスの後には、ハルちゃんにも首輪を贈った。
その際に、私とハルちゃんは隷属の契約を結んだのだ。
そうして、ハルちゃんは心身共に私のものとなった
更にそれがキッカケで、セレネとノアちゃんをまた悲しませてしまった。
その話し合いの際、私の不用意な一言で取り乱したニクスが気になり、先程の騒動へと繋がったのだった。
ノアちゃん達の協力もあってなんとかセレネとも仲直りできたけれど、その後は暫くセレネに監禁されて、教育を施された。内容については考えるまい
『アルカかわいかった』
『そういえばハルちゃんも中途半端に巻き込まれたんだったわね。その説は大変失礼いたしました』
『ハルにもして』
『今からして良い?』
『だめ』
『いまはニクス』
『気を遣ってくれてありがとう。ハルちゃん』
『うん』
セレネとの監禁生活で長い事家族の前から姿を消した私は全員に謝った。
その最後に、一方的にニクスとの話し合いの続きをしようとしたのだ。
相変わらず口を閉ざすニクスに業を煮やして、散々に酷いことを言い放った。
その結果が、先程の状況に繋がったのだった。
『おちついて』
『もうおわった』
『ニクスおこすダメ』
私の内心の乱れを察して声をかけてくれるハルちゃん。
『ありがとう。ハルちゃん』
『ハルはアルカの』
『アルカささえる』
『うん。もう何度も助けてくれたものね』
『すきにつかって』
『そしたらうれし』
『けど、アルカ』
『こまらないよう』
『ハルもかんがえる』
『ダメなことダメって』
『いえるようになる』
『大丈夫よ。ハルちゃんはもう何度も言ってくれてるもの』
『もっとかんがえ』
『がんばる』
『ありがとう。ハルちゃん大好き』
『ハルも』
『アルカすき』
『けど、いまダメ』
『ニクスのため』
『ニクスのアルカ』
『だから』
『ハルのアルカ』
『おやすみ』
『うん。ありがとう。優しいハルちゃん。
けれどあと少しだけ、ハルちゃんとも話をさせてね。
ハルちゃんも我慢のしすぎはダメよ。
ハルちゃんだってニクスの心を覗いてしまったのでしょう?
ハルちゃんは大丈夫なの?
私を守ってくれたとは聞いたけど、ハルちゃんには影響はない?
そもそも、ニクス程では無いにせよ、ハルちゃんも似たような気持ちは抱えているのでしょう?
きっと長く生きるとはそういう事なのでしょう?』
『もんだいない』
『ハルもちがう』
『にんげんじゃない』
『こころずっとつよい』
『ダメよ。ハルちゃんは強くて頼りになるけど、ハルちゃんはハルちゃんが思っている程には強くないのよ。
ハルちゃんは優しすぎるの。
アリアにすら怯えてしまう程に怖がりなの。
ダメだとわかっていても、町の近くに引っ越してしまう程、寂しがり屋さんなの。
だからハルちゃん。ハルちゃんも辛い時はそう言ってね。
ニクスのように抱え込む前に私にも背負わせてね。
パスだけでは心の全部は通じ合え無いの。
だから言葉を交わしましょう。
今回もいろんな事があったけど、きっと一番大事だったのはそのことなのよ。
だからハルちゃんもね。
まだ怖いかもしれないけど、いずれは私だけじゃなくて、皆とも話をしましょうね。
私が隣で手を握っていてあげるから。
私が心の中から応援してあげるから。
私達でもその程度なら伝えられるものね。
ハルちゃんは私のものだけど、私はハルちゃんのものなのだから、ハルちゃんも好きなように使ってね。
したいことは何でも言葉にして伝えてね』
『・・・うん』
『じゃあすこし』
『やっぱりいっしょねる』
ハルちゃんは私の中から出て、私の隣に寝転がる。
私は片手ずつでニクスとハルちゃんの手を握る。
「そうね。一緒に眠りましょう。
目が覚めたら、美味しいものを食べましょう。
きっとノアちゃんが何か作ってくれているわ。
その後はお風呂に入りましょう。
いっぱいぎゅってしながら温まりましょう。
最後はまた一緒に寝ましょう。
明日の買い物に思いを馳せながら語り合いましょう。
眠くなったらキスをして眠りましょう。
そうすればきっといい夢が見れるわ。
それを繰り返していけば、心のなかに抱えた悲しみも寂しさもきっと薄れていくはずよ。
ハルちゃんにだってそれが必要なのよ」
「うん・・・」
「ありがと。アルカ」
「どういたしまして。
おやすみ。ハルちゃん」
「うん。おやすみ。アルカ」




