20-29.ツンデレ
「大体の話はハルからの説明と今の会話でわかったけれど、アルカは当然覚悟は出来ているんでしょうね?」
「セレネ怖いわ・・・」
「当然でしょう。
アルカはセレネとの一件をもう忘れ去ったのですか?
なぜよりによってニクスとのパスなど繋ごうと考えたのですか?
私達の頑張りを全て踏みにじって台無しにするのがアルカの趣味なのですか?」
「ごめんなさい・・・」
「ごめんなさいじゃないわよ!
あれだけ教育してやったのにまだ足りないの!?
あなたの一番であるこの私が、ニクスにどんな感情を抱いているのか忘れたの!?
なんでそんなやつ助ける為にそこまでするのよ!
私たちがどれだけじんばいじだどおぼっでるのよ!!!」
セレネは泣きながら私に縋り付く。
「ハル。アルカはこの通り、無茶苦茶な人です。
あなたが本当にアルカを支えたいと思っていのなら、ただ言いなりになるのではなく、アルカを止めてあげてください。
アルカにはそんな人が必要なんです」
ノアちゃんの言葉に応じて、私の中からハルちゃんが出てきた。
「ノア。いうとおり」
「ハル。アルカとめる」
「アルカきえかけた」
「もうぜったいいや」
「信じますよ。
ハル。今回はありがとうございました。
あなたのお陰でアルカは生きています。
それだけは心の底から感謝します」
涙声でそう告げながら、ハルちゃんに縋り付くノアちゃん。
「ちがう」
「ハルのせい」
「ハルがパス」
「つないだ」
「みんな」
「ごめんなさい」
「違うの!ハルちゃんは悪くないの!
私が頼んだの!」
「アルカ以外のだれもハルが悪いなんて思っていませんよ。
全てあなたのせいです。履き違えないでください」
「はい・・・すみません」
「アルカ。お姉ちゃん達泣かすの良い加減止めない?」
「アルカ。反省して」
「アルカ。きらい。ママなかした」
『アルカ様、流石に今回は擁護のしようがありません。
もう少し考えて下さいませ』
「皆、すみませんでした」
私は全員に頭を下げる。
「私もだよ。
皆、ごめんね。
私がアルカを追い詰めすぎたの。
だから、アルカは」
「ニクス。もう良いわ。
この人が支離滅裂な事をするのは今に始まった事じゃないもの。
私はあなたを許せないけど、アルカはあなたを愛しているの。だからもう少しだけ歩み寄ってあげて。
それでこの件はチャラよ。ノアもそれで良いでしょ?」
「ええ。セレネがそれで良いのなら、私は構いません」
「セレネ。ノア。ありがとう。
その約束は必ず果たすよ。
直ぐには心の準備も出来ないけど、近い内に必ず」
「あんたも頑固ね」
「仕方ありません。あんな暗闇で数年間も過ごしたアルカが一瞬で潰されかける程の感情です。
どう考えても生半可なものではありません。
ニクスの権能を考えれば、何千年も世界を守るなど、不可能に近い無茶振りです。
きっと途方も無い努力が必要だったはずです。
それでも投げ出さず、後悔も悲しみも忘れ去る事すらせずに抱え込んできたのです。
その点については、素直に尊敬します。
いささか抱え込み過ぎだとは思いますが」
「そうよ。ニクスが不器用すぎるのが悪いんじゃない。
普通はそんなもの全部抱え込んだりなんてしないわよ。
あんた仕事ばかりで心に余裕が無さすぎるのよ。
ちょっとアルカ貸してやるから、少しくらい休んで余裕を持ちなさい」
「セレネ・・・」
「勿論あんたの事を許したりしてないんだからね!
あくまでもアルカの為なんだからね!」
「ツンデレ・・・」
「ぷっふふ」
「つん?何?
何でニクスは吹き出してるのよ!」
「という事で、アルカは仕事を再開する前に、ニクスとハルを連れて買い物にでも行ってください。
二人の生活に必要なものや服を買いに行かねばなりません。
それにハルの指輪も依頼する必要がありますね。
お仕置きは全部終わった後まで待ってあげます」
「無くなるわけじゃないんだね・・・」
「アルカ?どうして反省すらしていないの?
あなたの記憶はどうなっているの?」
「ごめんなさい・・・」
「ともかく、今日の所は休んでなさい。
買い物は明日からよ。
ニクスとハルもわかったわね!」
「「うん。ありがとう。セレネ」」
「今だけよ!」




