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20-26.vs女神②

「そういう事なのね。今のでやっとわかったわ。

 ニクス、あなたは私を見下しているのよ。

 しかもあなた自身はその事に気付いてもいない。

 だって、あなたはとっても愛情深いもの。

 けれど、まるで母親のように世話を焼いてはいても、子供達の主体性なんて信じていないの。

 全て自分が何とかしてあげなきゃって本気で信じているの。

 私のことですら、手のかかる幼子やペットにしか見えていないのよ」


「何でもあげる、何でも聞くと言いつつ、何の逡巡も無く無理だと答えるのは、自分の考えが唯一絶対だと信じて疑っていないからなのよ。

 私の言葉なんて人生経験の短い子供が我儘を言っているとしか受け止めていないのよ。

 対等な恋人の望みをどんな事をしてでも叶えるという気概なんてないのよ。

 出来る範囲で頑張ろうともせず、代替手段を提案する事もしないのは、あなたがそうやって引いた線から先に私を踏み入れさせる気がないからなのよ。

 あなたは私を欲しがるくせに、何時までも側にいて欲しいと望んでいるくせに、本当に自分の全てを私に明け渡す気なんて無いのよ」


「あなたは私に何の期待もしていないの。

 自分一人で出来ない事を私達が一緒にやってあげると言った時は泣いてしまう程に嬉しかったのでしょう?

 なのに、結局その言葉を真に受けられなかったのよ。

 どうせ私達に何が出来るとも思えなかったの。

 だからあなたは私に望みを聞かれても何も答えられないのよ。

 何も出来るはずがないと見下しているのよ。

 期待して裏切られたくなんて無いのよ。

 私を共に生きる相棒なんかじゃなくて、心を癒やすためだけの愛玩動物だとでも思っているのよ」


「そんなわけ!」


「黙りなさい!

 あなたは私を対等な存在だなんて思ってない。

 それが神と人の根本的な差なのよ。

 だからあなたは私に何をされてもケロッとしていたのね。

 どれだけ泣かされても、所詮は子供やペットのしたこと程度にしか感じていないのね。

 あなたには私の与える責め苦なんて、正面から受け止める気持ちは無いのよ。

 ならあなたの言う自分を罰して欲しいなんて言葉には、何の意味もなかったのよ。

 だからあなたは、何時までも幸せになれないんじゃない」


「・・・」


「あなたを救う方法を一つだけ思いついたわ。

 私は同格だと、最低でも見下せるような相手では無いのだと認めさせれば良いのよ。

 その為にはどうにかして打ち負かす必要があるんだわ。

 良いわ。なら戦いましょう!

 肉体言語くらい原始的なら、人と神に思考のずれがあったって正確に伝わるでしょう!

 ハルちゃん!力を貸して!

 さあ!ニクス!構えなさい!」


「何を言ってるの!?

 そんな事出来るわけ無いよ!

 今の私には戦うすべなんか無いんだってば!

 何より、アルカに攻撃なんて出来るわけ無いんだよ!」


「いいえ、戦うすべがないなんて嘘よ!

 自分の為に戦うだけなら問題は無いはずよ!

 だってこれからあなたがする事は、この世界の誰かを守るためなんかじゃないもの!

 それに神との戦いなんてこれ以上ない災いじゃない!

 今のあなたは攻撃だけは何の制約も無くできるはずよ!

 この状況でまだ、私に攻撃出来ないなんて見下しているのなら、死ぬまでそうしていなさい!

 私はあなたを殺してでも、あなたを救い出してみせるわ!」


 私はニクスに向かって、視界を埋め尽くす程の光弾を放つ。

何の遮蔽物もないこの空間では、ニクスの全身を囲う程の弾幕を放つ事など造作もない。

私に融合したハルちゃんの補助もあり、どれだけ放ち続けても力が尽きる気がしない。


 光弾がニクスに着弾し、少しずつニクスに衝撃を与えていく。

 けどこの程度ではダメだ!未だに構えてすらいない。

ただ立ち尽くして、されるがままになっているだけだ。


 この空間にあるのはニクスの精神だけのはずだ。

本人の口ぶりからするなら、肉体がなければ大きく力が削がれているはずだ。

それでも覆せないのではとすら思う程の、大きな力の差を感じている。


 私は一発一発の光弾に込める力の量を増やしていく。

量でもダメなら質も増やしていこう。

攻撃が届くまで、ダメージを与えられるまで死力を振り絞ろう。

 きっとここでニクスを振り向かせられないのなら、永遠に私達の関係が変わることは無いだろう。

やっぱり、人間なんてその程度なのだと、自分が護ってあげるしかない存在なのだと思うのだろう。


 そんな事は認めない。

絶対ニクスを振り向かせてみせる。

私がどれだけニクスの事を想っているのかわからせてみせる。



 どんどん苛烈さを増していく私の攻撃に、少しずつニクスも振り回されていくが、それでもニクスはただ巻き上げられた木の葉のように舞い狂うだけだった。


 このまま私はニクスの本気を引き出すことすらできないのだろうか。

それとも、このまま何もしないニクスを嬲り殺しにしてしまうだけなのだろうか。


 ほんの少しだけこみ上げてくる不安はすぐにハルちゃんが打ち消してくれる。



『だいじょうぶ』

『ハルがみきわめる』

『アルカはなにも』

『しんぱいない』

『このままつづけて』


 私はハルちゃんを信じ、攻撃の勢いを更に増していく。


 もうすぐ今の私では限界じゃないかと思うほどに力を振り絞り始めた所で、遂にニクスの力が急激に膨れ上がった。


 ニクスを囲っていた弾幕が全て吹き飛ばされる。

衝撃の中心に立つニクスは、いまだかつて感じたことのない程の大きな力を振りまいていた。


 単純な力の量は私より遥かに上だ。

 これでもまだ信仰が集まりきっていないニクスは、全盛期の力には遠く及ばないはずだ。

 ニクスのあまりの力の大きさに、少しだけ弱気になりかける。


『だいじょうぶ』

『ハルがいる』

『アルカのきもち』

『ニクスにとどける』


 そうだ。私にはハルちゃんがいる。

一人の力で届かなくても、誰より心強い味方がいてくれる。


 それに、やっとニクスも本気を出したんだ。

ここで尻込みしてたら意味がない。



『ありがとう。ハルちゃん。行こう!』


『うん!』

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