20-25.vs女神①
私はハルちゃんに私の中に入ってもらってから、ニクスを魔法で腕の中に抱き寄せる。
ニクスが無事に私の腕の中に出現し、私は内心安堵する。
「私にまで慰めの言葉をくれる気なの?
必要ないよ?私はずっと一緒に居たじゃん」
「ニクスは別よ。今度こそ本当に落としきるつもりで呼んだのよ」
「?私はとっくにアルカの虜だよ?
もう首輪だって着けてもらったよ?
これ以上、何が欲しいの?
私のあげられるものなら何でもあげるよ?」
「そのすっとぼけた態度を崩したいのよ。
先日の話も決着ついてないのに、どうしてそんな態度が通ると思ったの?」
「私が落ち込んでいた時の事?
その事ならこの通り元気になったよ?
あの時はアルカも言っていた通り、落ち込んでいただけだよ?
もう気にしてないから、アルカも忘れようよ。
そんな風に何時までも気にされたら流石に恥ずかしいよ?」
「まだとぼける気なのね。ハルちゃん。お願い」
「しょうち」
私達は再び私の心の奥底に潜り込む。
「味を占めたの?
セレネがあっさり落ちたからって、私にまで通用すると思うの?」
「早速ボロを出してくれたじゃない。
つまり、あなたはまだ私にすら心を開いてくれていないのでしょう?」
「そんな事無いってば。私はアルカにゾッコンなんだよ?
だからもう、そんな震えたまま強がらないでよ。
良いから早く出よう?ここは怖いんでしょ?
ハルがやらないなら、私がどうにかしてあげるから」
「できるのならご自由に。その度に何度でも引きずり込んであげる」
「何でそんなに意固地になっているの?
私を嫌いになるのが辛いのなら、それはもう良いから。
もう無理強いしたりしないから。
私はただアルカさえ側に居てくれればそれで良いんだよ?
なのに何でそんな事に拘るの?」
「そんな事ってどれの事?
ちゃんと言葉にしてみせなさいよ」
「・・・」
「私はあなたの本当の心が欲しいの。
何でもくれるのでしょう?
神に二言は無いのでしょう?
ならさっさとよこしなさい」
「随分な言い草だね。
心をくれと言いつつ、喧嘩を売っているようにしか聞こえないよ?」
「その通りよ。私は喧嘩を売っているの。
どうせ私に人を説得できる能力なんてないのだから、ノアちゃん達が一緒に考えてくれたセレネの攻略法をなぞるだけよ。少なくとも、十分な効果がある事は立証されているのだしね」
「ひどいな~
他の子を口説いた経験で私に迫っているの?
流石にそれは傷つくよ?」
「それで良いわ。傷つけて傷つけて心の奥の奥を剥き出しにしてあげる」
「止めてよ。私の心なんて覗いても理解できるものじゃないんだよ?
そんな意味の無いことをするくらいなら、キスでもその先でもなんでもして良いから。
きっと、その方が心も繋がるよ?
結局セレネにもそうしたんでしょ?」
「今のニクスにそんな事をしても意味がないわ。
もう良いから余計な抵抗はしないで、私に心を委ねなさい」
「やめてってば!
また私を泣かせたいの?
そっか、そういうことだね!
私が泣くのが好きだって言っていたもんね!
もうそんな回りくどい手段じゃなくてもいくらでも泣いてあげるってば!
神の肉体は丈夫だから傷だっていくらでも付けていいよ!
安心して!ちゃんとアルカ好みの声で泣いてあげるから!
だから、早くここから出ようよ。
そんな弱りきったアルカじゃ、折角の悲鳴も楽しめないよ?」
「もう良いから黙りなさい。
良い加減とぼけても無駄だってわかっているのでしょう?
ハルちゃん。お願い」
「がってん」
私の願いを聞いて、ハルちゃんがニクスの心に魔術的な干渉を始める。
ニクスの本心を読み取って私に届けようとしてくれる。
私とニクスの間に強制的なパスを繋いでいく。
「それはダメだよ!
何のためにセレネを説得したと思ってるの!?
私と繋ぐなんてそれ以上の悪夢だよ!
全部台無しだよ!!
そこまでされたら私だって本気で抵抗しなければならないんだよ!
いくらここにはハル以外の肉体が持ち込めないからって、神である私が吸血鬼ごときに遅れを取ると思うの?
ハルが返り討ちになる前にやめさせてよ!
そんな事でハルまで傷つけたくないよ!」
「今のは少しだけ本心を見せてくれたわね。
ニクスはやっぱり人を傷つけるのが怖くてたまらないのね。
ハルちゃん!構わないわ!そのままパスの構築を続けて!」
「うん」
「もう止めてってば!
アルカだってセレネの怒りを見ていたでしょ!
例えアルカが受け入れてくれたって、アルカを傷つけた私をアルカの周囲の人達まで許すわけが無いんだよ!
ハルまで傷つけてしまったら、アルカだってそう思ってしまうんだよ!
お願いだからもう止めてよ!何でも聞くから!そんな方法は嫌だよ!」
「じゃあ自分の言葉で話しなさい。
あなたは本当は私にどうして欲しいの?
私はどうすればあなたを救い出せるの?
私はあなたと心の底から通じ合いたいの。
あなたを絶対に手放さない為には必要な事なの!」
「そんなの無理だよ!!!」




