20-23.妹姫と小さな竜
私は部屋を出るアリアを見送り、今度はルカを魔法で抱き寄せる。
ルカも何が起きたのかと驚きはしたが、すぐに状況を察して、私に抱きついてくる。
今度はアリアの時とは違い、私は何も言わずにひたすらルカを抱き締め続ける。
長い事そうして過ごし、ルカが口を開くのを待ち続けた。
「アルカ。ありがと。
もう大丈夫。満足した」
「そう。良かったわ。
ごめんね。ルカ。今度こそちゃんと約束を守るからね」
ルカには少ない言葉で一番伝えたいことを伝える。
「うん。わかってる。アルカの気持ちはちゃんと伝わった」
私はルカを横抱きにして、ルカの指輪を取り出す。
「ルカ。これからも私と一緒にいてくれる?
いつか必ず私と結婚してくれる?」
「うん。嬉しい。ルカも約束する。アルカ」
「ありがとう。この約束は必ず守ると誓うわ」
私はルカの小さな指に、指輪を着ける。
そして、私はルカにキスをする。
真っ赤になったルカは何も言わずに私に抱きついて、顔を隠してしまった。
また暫くしてから、抱きしめる力を緩めたルカ。
「次はリヴィ。まだ物足りないけど我慢する」
「ありがとう。ルカ。一通り落ち着いたらまた抱き締めさせてね?」
「うん。待ってる。
アルカ。好き」
「私もルカの事が大好きよ」
また一度だけ、思いっきり抱き締め合ってから、ルカが私の部屋を後にした。
次はリヴィを腕の中に抱き寄せる。
やっぱり、リヴィも対象になってるんだ・・・
あとこれは耐性とかも突破できるの?
いくら相手を無力化させてから呼び出すとは言え、やっぱり不自然な程強力だ。
「アルカまほう?」
「そうよ。リヴィとお話がしたかったの。
無理やり呼び出してごめんね」
「ううん。リヴィもアルカとおはなししたい!」
「そう。それは嬉しいわ。
リヴィはこんなに小さいのに、いつも頑張ってくれてありがとうね。
何日も会えなくてごめんね」
「アルカないてる?」
「え?何でそう思ったの?
涙なんて出ていないでしょ?」
「う~ん?なんでだろう?
アルカつらい?そんなきがする」
「リヴィ・・・
それはきっと自身への不甲斐なさが原因ね。
こんな小さなリヴィにまで頼ってばかりだから、自分が情けなくなってしまったのね」
「だったら」
リヴィはそう言うと、光りに包まれる。
私の腕の中で急激に成長し、いつか見た大人モードに変身していた。
私は想像していなかった事態に慌てるが、何とかバランスを崩さないように踏ん張った。
「これでアルカかなしくない?」
「ふふ。ありがとうリヴィ。
リヴィはとっても優しいわ」
「アルカわらった!」
「けれど、少しだけ困ってしまったわ。
リヴィにも指輪を贈りたいのだけど、今のサイズでは指に合わないのではないかしら」
「だいじょうぶ!ゆびわ、かして!」
私はリヴィの差し出した手のひらに、リヴィの指輪を乗せる。そうすると指輪が輝き出し、今のリヴィに合う程度にサイズが大きくなった。
「くびわ、こわさないように、れんしゅうした!」
なるほど。以前思わぬ変身でチョーカーが千切れてしまったのを気にして、対策を用意しておいたのか。
尻尾につけていたはずのチョーカーは、今は首に付いている。変身時には場所の移動も自由自在のようだ。
相変わらずリヴィも中々の天才っぷりだ。将来はニクスに迫るのではと言われるだけの事はある。
今更気づいたけど、リヴィの着ている服も三歳児モードの物を大きくしたものになっている。
冷静になって見ると違和感がすごい。
スタイル抜群の大人の女性が、大きな子供服を着ている。
どうして私は言われるまで気付かなかったのかしら・・・
「アルカつけて!」
「うん。ありがとうリヴィ。
これからもずっと一緒にいてね」
「うん!」
私はリヴィの手を取って、指輪を着ける。
そうして、リヴィの頬にキスをする。
照れてクネクネする大人モードリヴィ。
なに・・・この・・・形容し難い感情は。
「ありがとう!アルカ!
つぎは、レーネのばん!」
そう言って、リヴィは私の部屋を飛び出していった。
違和感たっぷりの大人モードのまま。




