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20-18.一心同体

「随分のんびりしていたわね。

 一日待つとは言ったけど、この時間まで声もかけてこないとは思わなかったわ」


 夕方になり、今度はセレネを中心にして話し合いを始める。

今度は、私がセレネと共にテーブルの片側中央に座り、

対面にノアちゃん。片隅にニクスとハルちゃんだ。



「その分準備は済ませてきました」


「そうね。ノアから余裕が伝わってくるもの。

 それだけ自信があるのね。楽しみだわ」


「一切そんな風には思っていないようですが」


「皮肉って知らないの?」


「私のも皮肉ですよ」


「喧嘩を売りに来たの?」


「そうですよ。今日の話し合いの趣旨はそれです。

 最初に宣言しておきましょう。

 私はセレネを挑発しに来たのです。

 セレネに本音でぶつかって貰う必要がありますから」


「そんなの言ったら意味がないじゃない」


「そうでもありませんよ?

 私達は互いに感情が見えているのです。

 そうでなくとも誰よりも通じ合っているのです。

 その程度は造作もありません。

 けれど、途中で衝動的に退席されては困るのです。

 それを避けるための宣言です」


「・・・そんな風に使うなんて嫌よ。

 これはノアとの大切な繋がりなの」


「私だってそう思っていますよ。

 けれど、繋がりよりもセレネの方が大切です」


「挑発するんじゃなかったの?」


「あくまでそれは手段です。

 目的はセレネの本音を引き出すことです。

 その為には、まず私が本音を話す必要があります」


「ノア・・・」


「これも予め言っておきますが、私もセレネの為にこんな事をしているのであって、やりたくてやっているわけじゃありません。

 セレネには当然わかっているのでしょうけどね。

 そう考えるとセレネって酷いと思いませんか?」


「・・・」


「私はセレネの事を愛しています。

 そして、セレネも私を愛してくれていると知っています。

 私達はアルカ以上に繋がっています。

 なのに、セレネは私を突き放しました。

 私よりアルカと繋がっていたいのだと」


「そんな事言ってないわ!」


「私はアルカと繋がる事を反対しました。

 それに対して、セレネは自分だけ繋がると言ったのです。

 これは裏切りでは?

 私達は一心同体なのですよ?

 セレネは私を捨てるのですか?」


「ノア!」


「セレネの不安はわかっています。

 セレネの望みもわかっています。

 けれど、私はセレネとは違います。

 例え今のアルカの言動が信用に値しなくとも、言葉を尽くせばわかりあえると信じています。

 わざわざ心を繋ぐまでもありません。

 私はアルカを愛しています。

 アルカの気持ちを信じています。

 セレネは違うのですか?

 ただアルカを独占したいだけなのですか?

 ただアルカに愛されたいだけなのですか?

 セレネがアルカを理解する努力を放棄するのですか?」


「全部わかってるくせに!何でそんな言い方するのよ!

 挑発したいからってそんな言い方はあんまりよ!」


「それを言葉にしてください。

 私はアルカにも同じ事を言いました。

 ニクスと繋がったせいで、アルカは言葉を尽くしてくれなくなったと。それはセレネも同じなのですよ?

 セレネは私とわかり合っていればそれで良いのですか?

 アルカに知ってもらいたいのではないのですか?」


「私だって言ったはずよ!

 私はノアほど強くないの!

 頭ではわかっていても!言葉は制御できても!

 心はどうにもならないの!

 アルカが離れていっちゃうんじゃって不安でたまらないの!

 アルカの気持ちを心の底から信じているのにその不安が消えてくれないの!

 パスの何がいけないの!?

 私とノアの間でなにか不都合でもあった?

 それをアルカとも繋ぎたいと思っちゃいけないの!?

 私はこんな不安もう嫌なの!

 アルカの事を疑いたくなんてないの!

 何でノアがわかってくれないのよ!

 ノアが一番私の事を知っているはずでしょ!」


「セレネ。人はわかり合うために、そうして言葉を交わすのです。

 どれだけ感情が見えていようとも、それは必要なことなのです。

 それは私達であっても同じことなのです。

 私がどれだけセレネを愛していようとも、どれだけセレネの気持ちをわかっていようとも、セレネが言葉にしていない以上、隠しておきたい気持ちなのだと判断するしかありません。

 それを私が勝手に汲み取ってアルカを説得しても意味がないのです。

 それでアルカの言動が変わっても、それではセレネが納得できないのです。

 そんな事をすれば、セレネだけを蚊帳の外に置いて、私達が仲を深めるだけです。

 それでは意味がありません。

 セレネが自分でアルカにぶつかる必要があるのです。

 けれど、その手段がパスではまた同じことを繰り返しますよ?

 きっとアルカと繋がって、アルカとわかりあえても、

 その事でセレネと私との不和が生じるはずです。

 今度はセレネとアルカが私を仲間外れにするのです。

 セレネはそんな関係が望みなのですか?

 自分がアルカの一番なら、私のことはもう要らないのですか?」


「そんなわけないじゃない!

 どうしてそんな事言うの!?

 私がノアを切り捨てるわけないでしょ!

 それを言うなら先に私を捨てたのはノアじゃない!

 私の不安をわかっていて、アルカとのパスに反対して、

 そのまま放っておいたんじゃない!

 慰めの言葉一つくれなかったじゃない!

 ノアの覚悟が決まった時には私にも伝わっていたのよ!

 なのに待っていても声をかけてくれないどころか、ここに戻ってすら来ない!

 あげく、こんな時間ギリギリになってから挑発してるなんて意味がわからないわよ!」


「そうですね。放置していた事はすみませんでした。

 私も言葉を尽くしていなかったのですね。

 セレネの感情を勝手にみて、セレネが抱えている不安の大きさに尻込みして、今は声をかけてもどうにもならないのだと、勝手に諦めていたのです。

 すみませんでした。どうか許してください。

 辛い時に放りだしてごめんね。セレネ」


「何でノアが泣くのよ・・・

 何で急にそんな大きな感情が湧いてくるのよ・・・

 止めてよ。それも作戦なの?

 ニクスがなにかしてるの?ハルが?

 これじゃあもうノアの事だって信じられないわよ・・・」


「なぜわからないのですか?

 私達の心は一心同体です。

 これはセレネの悲しみですよ?」


「何を言って・・・」


「セレネの悲しみが私に流れ込んできたのです。

 私はその気持に押し流されただけです。

 セレネは私に映った自分の悲しみを感じているだけです」


「そんなこと・・・」


「セレネ。お願いだから話しをしよう。

 こんなになるまで一人で抱え込まないでよ。

 私にこんなもの押し付けないでよ。

 パスなんかあったって無駄なんだよ。

 私はセレネがこんなに追い詰められるまで何も出来なかったんだよ。

 勝手にセレネの気持ちを察して、勝手に口をつぐんだんだよ。

 それじゃダメなんだよ。

 ちゃんと言葉を交わそうよ。

 アルカともそうしようよ。

 不満が、不安があるならちゃんとそう言おうよ。

 私達がそれを受け入れないとまでは思っていないでしょ?

 アルカの事だってそこまで疑ってはいないでしょ?

 もう怒るだけなのも、抱え込むだけなのも止めよう。

 ちゃんと気持ちを言葉にして欲しいものを伝えよう。

 私達はちゃんと聞くから。

 私もちゃんと言うから。

 だからお願いだよ。セレネ」


「ノア・・・」

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