20-12.すれ違い
私は再びノアちゃんとセレネと対面する。
「感謝します。アルカ。
私のお願いを聞いてくれて嬉しいです」
「ノアちゃん。ノアちゃんの気持ちはわかったわ。
私のやり方が意にそぐわないのなら無理強いするつもりはない。
それで決裂してしまえば元も子もないもの」
「それに、ノアちゃんが望む理想は私にとっても望ましいものだわ」
「けれどね、
ノアちゃんの言うように努力はするけれど、
それでも私の本心はそう簡単には変わらないの。
今はまだ、ノアちゃんの事を信じて、
間に合うと思ったから手を引くだけよ。
ノアちゃんとセレネを失うくらいなら、
どんな手段でも迷わないわ」
「だから、一つだけ忠告する。
これは年長者として、
何度も命がけの戦場に立ってきた者としての言葉よ。
今はまだ納得できないかもしれないけど、
どうか聞いて欲しいの」
「ノアちゃんは短期間でとっても強くなった。
ノアちゃんが誰よりも努力を続けてきた事は知っているの。
だから、ノアちゃんが努力を続ければ報われると信じている事もよくわかっているの。
そう普段から努めていれば、いざという時に手段を間違えずに済むと信じている事もわかってるの」
「けれどね、
ノアちゃんには自分以上の強敵との
本当に命をかけてもどうにもならない戦いの経験は足りていないの」
「昔の私は弱かった。
最初は弱くて何度も失敗した」
「命がけで立ち向かって、
それでも到底、力及ばなくて、
最後には命からがら逃げ出した」
「ノアちゃんにはそんな経験が足りて無いの」
「もちろん、
昔のノアちゃんが命がけだった事はわかっているのよ。
自分の周囲は敵だらけで、
一人努力を続けてきたのも知っているし、
最後には命がけで逃げ出した事も知っている。
ノアちゃんが努力を続けてきたお陰で、
私の元に来てくれた事も良くわかっているの」
「けれど、きっとそれでも足りないのよ」
「私は今まで何度もそんな事を経験してきた。
禄に立ち向かえず逃げた事なんて何度もある。
力及ばず眼の前で誰かが失われていくのを見ているしかない事もあった。
だから、本当に大切な場面では手段は選べないのだと実感しているの」
「本当はこんな事をノアちゃんに話したくは無かった。
私が余計なことは言わずに済んで、
何時までも真っ直ぐ自分の道を信じるノアちゃんでいてくれる事が理想なの」
「けれど、
ノアちゃんの命が失われるくらいなら、
どんな手段を使ってでも切り抜けて欲しいの。
そんな事がありえるのだと知っておいて欲しいの」
「・・・約束します。
絶対に私はアルカの前からいなくなったりしません。
その為だけなら手段は問いません」
「ありがとう。それでも十分よ」
「セレネ。ごめんねセレネ。
私はセレネの私と違うものになったつもりは無いけれど、
それがセレネに伝わっていなければ意味がないわよね。
セレネも私にチャンスをくれる?
セレネが私を信じられるように、
努力する事を許してくれる?」
「・・・私が許さなければ努力してくれないの?」
「いいえ。セレネが望まなくても押し付けるわ」
「じゃあ何で聞いたのよ」
「必要だと思ったからよ。
セレネの望む事を教えて欲しいの。
セレネもノアちゃんの意見に賛成なの?
それとも、セレネだけ私の心を見てくれる?
直接感じ取ってくれる?
私は正直そっちの方が嬉しいわ。
セレネと、本当はノアちゃんとも、
心の底から繋がりたいわ。
そのための手段として間違っているとは思っていないの。
ただ、それがノアちゃんの望む手段ではないから止めただけなの。
ノアちゃんにはノアちゃんの望む方法で応えたいの。
それはセレネに対しても同じよ。
セレネが本当に望む方法で私の気持ちを示したいの」
「・・・・・・・・・・じゃあ、」
「セレネ!何を言おうとしているんですか!?」
「ノア。私はノア程強くはないわ。
努力だけではどうにもならない事もあると思っているの。
そして、それ以上にアルカともっと繋がっていたいのよ」
「だからアルカ、
私ともパスを繋いでほしい。
手段は何でもいいわ。
私をアルカの道具にしたって構わない。
私にアルカの心を感じさせて欲しい。
私の心に何時でも寄り添っていて欲しい」
「わかった。
ニクス。良い方法はある?」
「アルカ!セレネも!
何を言っているんですか!?
ダメです!そんな方法は認めません!」
「ノア。それは流石に自分勝手じゃない?
私はあなたのものだけど、
私がどんな意思を持つかまでは委ねていないわ。
私の行動が意にそぐわないのなら、
今度はノアが努力する番よ」
「アルカにしたように私を納得させて見せて。
話はちゃんと聞いてあげる。
けれど、認めないなんて言葉だけで止める気はないわ」
「セレネ・・・」
「一日だけチャンスをあげる。
明日のこの時間にまた話し合いましょう。
それまでにノアは私を説得させて見せて?
そうでなければ、私はアルカと繋がるわ」
セレネはそう言い残し、その場を離れた。




