20-10.枷
首輪もとい、チョーカーを購入し、
私達は別荘に転移した。
私は自室で、ニクスとハルちゃんをベットに横たえる。
「何でこの姿勢なの?」
「背徳感が増すかなって」
「前はただのチョーカーだと思ってたから
そんな意図無かったよね?
アリア達にもそう念を押してたじゃん」
「ニクスだけは特別よ。
あなたは私の道具なの。
そういう意味を込めてるのよ」
「だけと言いつつ、ハルも横にいることについて弁明は?」
「そっちの方がハルちゃんの好みかなって」
「うん」
「うんじゃないよ!
ハルも何開き直ってるの!?」
「ハル」
「アルカ」
「どうぐ」
「でも」
「いい」
「すきに」
「つかって」
「わかった。じゃあ二人とも特別よ」
「納得いかない!」
「もう。じゃあ逆に聞くけどどんなシチュエーションが好みなの?
今から首輪を付けようとしているのよ?
ニクスの理想のシチュエーションって何?」
「・・・特別な時は二人だけで過ごしたいの」
「ハルちゃん。ちょっと待っててくれる?」
「うん」
「ありがとう。ごめんね」
私はニクスを連れて、自宅の方の自室に転移する。
「これで文句は無いわね?」
「・・・やっぱり延期しない?
もう少し雰囲気作ってからにして欲しい」
「ダメよ。
もうこれ以上は聞かないわ。
あなたは私のものなの。
私のしたいようにさせてもらうわ」
「アルカ怒ってるの?」
「いいえ。そうじゃないわ。ニクス。
あなたは少し浮かれているのではなくて?
どれだけ仲良しこよしでいようとも、
私のニクスへの想いの根源は変わっていないのよ?」
「あなたは私に何をしたのか忘れてしまったの?
私があなたをどう思っているのか忘れてしまったの?」
「あなたは私の事を狂わせたの。
だからあなたが本当に望む初めてなんてあげないの。
私はあなたを奪い取るの。
あなたは私に全て奪いつくされるの。
そういう関係だと理解していたはずよ?
どうして今更あなたの望む幸せなんかが得られると思ったの?」
「・・・そうだよね。
元はと言えば私が招いたんだよね。
私もその考えに納得していたんだよ。
アルカをそうしてでも手に入れたいと願ったんだよ」
「けれど、私にとってこの状況が相応しくても、
私自身がそんな関係に喜びを感じてしまっても、
それ以外に欲しいものも出来てしまうんだよ」
「もっともっと幸せが欲しいの。
それがかつて自分で切り捨ててしまったものでも。
それでも本当に欲しい幸せを望み続けるんだよ」
「なら、
あなたがもう一度私を口説き落としてみせて。
今度はちゃんと手段を選んで。
私から100%の愛を引き出して見せて。
そうしたら、あなたの望むものをあげる。
そのチャンスならあげる」
「けれど、今はダメよ。
それは次からの話よ。
もう私は我慢できないの。
ようやくニクスをこの手に収めたの。
私の物だって証を刻みたいの。
私にそれを思い出させたのはあなたなの」
「・・・それは首輪だけで済ませてくれるの?」
「そんなわけないでしょ?
さっきまでならそれで済むはずだったのだけどね」
「ここに来た以上はもう手遅れなの。
あなたがどれだけ悲しんでももう手遅れなの」
「大丈夫よ。私はあなたの涙ごと愛してあげるから」
「だから好きなだけ泣いて頂戴」
「あなたの初めては望まない形で奪われるの」
「あなたが悪いのよ?
何時までも勘違いしているから。
あなたのそんな態度が私に火を点けたの」
「愛しのニクス。可愛いニクス。
あなたの事が大好きで大嫌いよ」
私はニクスの首に枷を掛ける。
そして、ニクスの目から零れ落ちた雫に口づけする。
ニクスは最後まで泣き続けていた。
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私は眠ってしまったニクスを抱きながら、
別荘の自室に転移した。
私はニクスを自分のベットに寝かせる。
「待たせてごめんね。
次はハルちゃんの番よ」
「うん」
「つけて」
「お望みのシチュエーションはある?
ハルちゃんの望みなら聞いてあげる」
「・・・」
「けいやく」
「して」
「契約?何の?」
「れいぞく」
「どうすればいいの?」
「ハル」
「する」
「アルカ」
「ち」
「ちょうだい」
「わかったわ。ハルちゃんに任せる」
「うん」
「ありがと」
ハルちゃんに向かい合って立ち、指を差し出す。
ハルちゃんが私の指を咥えて血を飲み込むと、
ハルちゃんを強烈な光が包み込む。
「ぐっ!!」
光の中で苦しみ始めたハルちゃんに慌てるも、
ハルちゃんは私に手を向けて静止するよう伝えてくる。
「「アルカ!」」
異変に気付いたノアちゃんとセレネが部屋に駆け込んでくる。
私は二人に近づかないよう合図して、
苦しむハルちゃんを見守り続ける。
次第に光が収まっていき、
完全に消えた所で、ハルちゃんが脱力して倒れ込む。
私はハルちゃんを受け止めて様子を確認する。
「ハルちゃん!」
「だいじょうぶ。うまくいった」
「くびわつけて。アルカ」
「わかった」
私はハルちゃんをニクスの横に寝かせて、
ハルちゃんの首に、ニクスと同じ装飾の首輪をつける。
「ありがとう。これで」
「ハルはアルカのもの」
「後でゆっくり聞かせてね。
今のハルちゃんは消耗が激しいわ。
このまま眠って頂戴」
「うん。おやすみ」
「それで、これは一体何事なの?」
「話してくれますよね?」
「ええ。行きましょう」
私はノアちゃんとセレネと共に、
ニクスとハルちゃんが眠る部屋を後にした。




