20-9.約束
私は再び町を歩く。
今度の町はさっきの所よりずいぶんと人が多い。
もしかしたら、この国全体でも大きい方なのかもしれない。
私が服屋を探して歩いていると、突然念話が届いた。
『アルカ!今どこ!』
『ニクス?どうしたの?
今は海を渡って見つけた島国だけど』
『すぐに戻ってきて!』
『何か緊急事態?』
『良いから早く!』
『わかった』
『ハルちゃん』
『うん』
『もどる』
私はニクスを移動先に指定して転移する。
転移した先は私の部屋だった。
「アルカ!ほら行くよ!」
「突然どうしたのニクス?
何を慌ててるの?」
「私の指輪のサイズ!
ヘパスの店に行こうって言ったのに!
もうすぐ日が暮れちゃうよ!」
『「・・・」』
「まあ、でもそうね。
折角肉体を取り戻したのに放置はなかったわね。
ごめんねニクス。
忙しそうだったから何も言わずに出てしまったものね」
「そうだよ!
ちょっと訓練手伝ったらアルカと出かけたかったのに!」
『アルカ』
『やさし』
「ハルの指輪も頼んでおけば?
許可はまだだけど時間の問題でしょ?」
『いい』
『みとめて』
『もらって』
『から』
『おねがい』
「ハルちゃん!!良い子!」
「まあ、ハルがそれでいいなら。
ともかく行こうよアルカ」
「わかった。
折角だから二人の服も買いに行かない?」
『「いらない」』
ニクスはそもそも着飾ることに興味がない。
ハルちゃんは人前に出て買い物する事自体に抵抗があるのだろう。
だけど諦めない!
可愛い二人を見るんだ!
きっと二人はこの言葉で頷いてくれるはずだ!
「私の為にお願い!」
『「わかった」』
二人とも優しい。
即答だった。
私に甘いとも言う。
私はニクスを抱きしめて、自宅に転移する。
自宅でハルちゃんにも出てきてもらい、
片手でハルちゃんを抱き上げて、
もう片方の手でニクスと指を絡める。
「さあ、行きましょう」
「なんかハルがその状態だと、
私まで子供に見えない?」
「?
見たまんまじゃない」
「一番年上なのに・・・」
「ニクスはニクスよ。
どんな風に見られたって関係ないわ」
「アルカ!」
「ニクス」
「ちょろ」
私達はへパス爺さんの店に到着し、
依頼した時点では肉体の無かったニクスの
指輪のサイズ確認に来たことを伝える。
「ふむ。問題ないじゃろ。
他も出来とるぞ。持っていけ」
「ありがとう。ずいぶん早かったわね」
「お前さんが急かしたんじゃろうが。
わざわざ素材を仕入れにまで行きおって」
「だって待ちきれなかったんだもの」
「それで、その抱えてるのは何じゃ?
また手を出したのか?」
「この子はハルちゃん。
私の家族の中ではニクスの次に年長者よ」
「もう何も言わんよ。
指輪はどうするんじゃ?」
「また今度依頼に来るわ。
昨日家族に加わったばかりだもの」
「・・・おう」
「じゃあ、帰るから。
今回も最高の出来よ。ありがとう」
「おう」
私は爺さんの店を出て、
今度はいつもの服屋の近くに転移する。
「そういえば、デートの件は考え直しておいてね。
最高のシチュエーションで指輪をくれると嬉しいな」
「わかった。考えておくわ。
首輪はどうする?一緒でいいの?」
「う~ん。
ううん。帰ったら頂戴。
待ち切れないのもあるし、
指輪と一緒に渡されるのは何か嫌だよ」
「わかった。
ハルちゃんは首輪いる?」
「ほしい」
「じゃあ、明日買いに行きましょう」
「さき」
「が」
「いい」
「ふく」
「あした」
「だめ?」
「今すぐ行きましょう!」
「じゃあ、明日は三人で出かけよう。
ノア達が許せばだけど・・・」
「何としても許可を貰ってみせるわ!
ニクスとの初デートね!」
「違うよ!あくまでも買い物に行くだけだよ!
私の初デートは今度のにとっておくの!」
「ハル」
「も」
「デート」
「まだ」
「だめ」
「そうね。二人の生活に必要なものも用意しなきゃだしね。
また爺さんの所にも行かなきゃだわ」
「毎度のことだけどグダグダすぎない?
もう少し計画的に動けないの?」
「アルカ」
「おもいつき」
「ばっか」
「うぐ・・・」
「今日だって折角肉体を取り戻したのに、
思いつきで出かけて、放置されるとは思わなかったよ・・・
アルカの私への想いはその程度だったんだね。
昨日、散々弄んだからもう用は無いんだね・・・」
「違うの!そうじゃないの!
ごめんねニクス!ちゃんと一緒にいるから!」
「じゃあ、私はアルカの部屋で一緒に生活して良い?」
「もちろん!大歓迎よ!」
「ふふふ。嬉しいよ。
愛しのアルカ」
「ニクス!私も愛してるわ!」
「アルカ」
「てだま」
「とられた」
「アルカ」
「も」
「ちょろ」




