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3-3.帰還

ようやく私達の町に帰ってきた。



町についた時点で日が暮れていたので、

ギルドへの報告にはよらず、真っ直ぐ家に帰る。



家に着くなり、声を合わせる私とノアちゃん。


「「ようこそ、そしておかえりセレネ!」」


「お邪魔しま~す」


戸惑いながらセレネが言う。



「もう、そうじゃなくてただいまでしょ?

セレネは今日からこの家の子なんだから」


「はい!ただいまです!これから宜しくお願いします!」


「はい。こちらこそ」






「ノアちゃん、セレネ、明日は朝からギルドに行くから、

今日は早く寝てしまいましょう。」


「「は~い」」



私は二人を寝かしつけて、

収納魔法に入れていた荷物を整理していく。

明日はギルドへ行くついでにお土産も渡してしまおう。


ドワーフ爺さんの店にも顔を出すことになるから、

猫耳を依頼しておくのも忘れないようにしなくちゃ。









----------------------







翌朝、予定通りギルドに向かった。


ギルドに着くと、おっかない顔したギルド長が待ち構えていた。


何も言わず、会議室に向かっていく。


「ご苦労だったな。いろいろ大変だっただろう。」


席に着くなりそう言うギルド長。

言葉の内容と表情が合っていない。


「ようやく長旅から帰ってきたのに、その反応は何よ?」


「いや、お前が悪いわけでは無いことはわかっているのだが、

どうして、お前は毎度毎度、面倒事を引き当てるんだと

言いたくないでもない。」


「口にしてるじゃない!何が気に入らないの?」


「いや、何も無いとも。お前ならそうするとわかっている。」


一瞬ギルド長の視線がセレネに向くが、すぐに反らした。

セレネの前では口にし辛い事なのだろう。




「ノアちゃん。なんか話が長くなりそうだがら、

セレネと一緒に遊んできて。

お昼くらいに戻ってきてくれればいいから。」


「わかりました。セレネ行きましょう。」


「はっはい!」


流石ノアちゃん。すぐに察してくれた。

セレネはただごとでは無さそうな雰囲気に困惑しているようだ。


ノアちゃんはセレネの手を引いて退室していった。



「すまん。助かる。」


「それで?」


「まあ、まずは改めて今回の依頼ご苦労だった。

詳細は向こうのギルドからも聞いているが、

当事者の話も聞いておきたい。

お前の視点からも話してくれるか?」


「わかったわ。」


そうして、私はセレネの護衛依頼にまつわる出来事を話していく。



「魔王か・・・

やはりその件も本当なのだな?」


「そうね。奴らの口ぶりからするなら、

放っておけば復活も時間の問題ね」


「そちらもそうなのだが、

聖女セレネだけではなく、

ノアまで目を付けられているとは。」


「その件は向こうのギルドに伝えてないもの。」


「まあ、下手な事を言ってしまえば

拘束されてもおかしくはないからな」


「わかっているとは思うけど、

漏らしたら承知しないわよ。」


「当然だ。」




ノアちゃんにも聖女に似た力があると言われた事は、

向こうのギルドには話さなかった。


セレネの事は隠しようがないから仕方がないが、

ノアちゃんの事は隠し通すつもりだ。


万が一、国に目をつけられて

聖女を保護する名目で拘束されたらたまらない。


また、敵の標的である事が国に知られることによって、

敵を呼び出すための餌として利用される可能性すらあるだろう。





「お前にだけは伝えておく。

これは俺個人の意見は一切関係無い。

ギルド長の立場としての言葉だ。」



よっぽど言いづらいらしく、

ギルド長は一度言葉を止める。



「魔王の眷属一味の標的をこの町に迎え入れるのは認められない。

いらぬ災厄をもたらす原因になりかねん。」



たしかに、あの二人には聞かせられないし、

言いたくない気持ちもわかる。


ギルド長の立場としては、

冒険者が行った事に責任を持つ必要があるのだから、

聖女を敵の標的とわかって連れ帰った冒険者である

私には言わざるをえないだろう。


ノアちゃんまでもが標的になった事を気にしていたのも

これがあるから尚の事か。





どうしようか。

確かにこうなることは想定して然るべきだった。

この件は私の考えが足りていなかった。



この町を引き払う?

どこに行ったって同じだ。

黙っているかバレているかの差でしかない。



私が冒険者を辞める?

最高ランクの冒険者である私が、

辞めますと言った所でそう簡単には認められないだろう。


それに、冒険者を辞めてしまえば、

国からの防波堤を失う。


そうなってしまえば、大きな力を持つ個人である私も、

敵から標的にされているセレネもいつ国から呼び出されるかわからない。

国の要請に抗う大義名分を失ってしまう。


別の国に逃げたところでこれは変わらない。




少しの間私が考え込んでいると、

ギルド長が語りだした。



「これは俺個人の言葉だが、

まあ、お前の事は信じている。

魔王が襲ってきたところで、

お前ならなんとかしてくれるだろう。

むしろ居てくれた方が心強い」



なにちょっと照れてるのよ!

こっちの方が照れるじゃない!




「そして、これはまたギルド長としての考えだ。

クレアを制御出来るのはお前だけだ。

きたる魔王の脅威へ向けて

勇者クレアと聖女を導いてくれ。


本当にあいつが勇者なのか?」




「・・・そこは私もまだ飲み込めてないわ」


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