19-13.家族風呂
私達は食事を終えて、全員で露天風呂に向かう。
ハルちゃんはどうしようかしら。
首につけたままでも大丈夫なの?
本人に聞こうにも、宣言通り寝息を立てている。
起こすのも忍びない。
ところで、念話の場合もASMRって言うのかしら。
脳内に直接可愛い寝息が聞こえてくるの少しくせになりそう。
『吸血鬼って熱さかお風呂が苦手って事は無いよね?』
『無いね。個人差の範疇だよ』
まあ、良いか。
起きてしまったら一緒にお風呂に入ろう。
温かいものが好きみたいだし喜んでくれるだろう。
「アルカ!」
服を脱ぐなり、早速抱きついてくるアリア。
私はアリアを抱き上げて湯船に向かう。
湯船の近くに腰掛けて、
アリアを頭から洗っていく。
「かゆいところはないですか~」
「ないで~す!」
アリアはノリが良い。
アリア可愛い。
「はい、これでアリアは終わりね。
次はルカおいで~」
「うん」
今度はルカを洗っていく。
少し寒いけど我慢だ我慢。
「ルカの髪も綺麗ね~」
「ふふ。ありがと」
「ルカはこのまま伸ばすの?」
「アルカはどっちが良い?」
「う~ん。どっちのルカも好きだけど、
折角この綺麗な髪なら、長いほうが良いかな?」
「じゃあ伸ばす!」
「ふふ。ありがとう。ルカ。
また私に洗わせてね」
「嬉しい」
「ルカ。抱っこは後ね。
お風呂に浸かってからにしましょう」
「うん」
「はい。ルカもこれでお終い」
「最後はリヴィね」
「リヴィのばん!」
ルカに変わって私の前に腰掛けたリヴィの頭を洗っていく。
「リヴィもかみきれい?」
「うん。とっても綺麗よ。
ノアちゃん達とそっくりな真っ白だけど、
こうして近くで見ると、
二人より少しだけ輝いてる感じよね。
二人は真っ白な雪のようで綺麗だけど、
リヴィのは白銀みたいな感じなのかな?」
「ふふ。リヴィかがやいてる?」
「うん!リヴィはいっぱい輝いてるわ」
「ふふふ」
リヴィ上機嫌。
輝いているという表現がお気に召したようだ。
リヴィ可愛い。
「はい。リヴィもお終いね」
「うん!ありがと!」
早速湯船にかけていくリヴィ。
『ハル』
『も』
『もちろん!洗ってあげる!』
ハルちゃんも起きたようだ。
しょっちゅう寝ているから眠りが浅いのだろうか。
元の姿に戻ったハルちゃんは既に素っ裸だった。
服は収納空間にでも入れたのだろうか。
随分と器用な事をするものだ。
それにしても、本当に全身真っ白で綺麗な肌。
真っ黒な髪と、真っ赤な唇がうまい具合に調和している。
まるでお人形さんのようだ。
思わず私が見とれていると、
ハルちゃんの頬が少しだけ染まる。
照れハルちゃんも可愛いな~
私が笑いかけると、
ハルちゃんはリヴィ達と同じように、私の前に腰掛ける。
また、他の子達と同じように、
ハルちゃんの事も頭から洗っていく。
「ハルちゃんはお風呂好きなの?」
「わからない」
「ない」
「けど」
「あったか」
「お風呂入ったことは無いけど、
温かそうだから気になったのね~」
「うん」
「ふふ。きっとハルちゃんも気にいるわ」
「うん」
「ハルちゃんの髪、
触り心地も最高ね~」
「ふへ」
「体も洗うからね~」
「かみ」
「もっと」
「髪を洗うのが気に入ったのね。
わかった。じゃあもう少しだけね。
あまりやりすぎても傷んでしまいそうだし、
早く湯船にも浸かりたいでしょ?」
「うん」
「浸かりながらいっぱい頭も撫でてあげるからね」
「うん」
「たのしみ」
「ふふ」
もう少しだけハルちゃんを洗ってから、
自分の事も済ませて湯船に向かう。
「アルカ!やっときた!
ハルも一緒なのね!」
「ハルばっかり・・・」
「リヴィもだっこ!」
「はいはい。順番ね~」
私はハルちゃんを片手で抱えたまま湯船に浸かり、
もう片方の手で、一人ずつ抱きしめていく。
それから、ハルちゃんを正面から抱きかかえて、
お湯をかけないように気を付けながら、
後頭部を撫でていく。
「きもちい」
ハルちゃんはうっとりとした声を出す。
いつの間にか、
そばに来ていたノアちゃんがリヴィを抱え、
セレネがルカを、レーネがアリアを抱きかかえていた。
「皆甘えん坊さんね」
「アルカがハルばかり構うからよ!
私もレーネお姉ちゃんに浮気しちゃうんだから!」
『アリアちゃん可愛いです!
そうですよ!私のになっちゃいましょう!』
相変わらず二人は仲が良い。
「全員で集まると流石に蒸し暑いわね」
「ルカじゃま?」
「そんなわけないじゃない。
ルカも柔らかくて抱き心地が良いもの。
このままルカは私のものにしてしまいましょう」
「セレ姉、お尻触りすぎ」
「セレネ?流石にルカに手を出すのはどうかと思いますよ?」
「アルカじゃあるまいし。
普通に抱っこしているだけよ。
邪な気持ちなんてほんの少ししか無いわ」
「あっちゃダメなんです!」
「ママおこらないで。
リヴィこわい」
「ごめんね!大丈夫ですよリヴィ!
リヴィは良い子だから、
リヴィには怒りませんからね~」
「ノアってリヴィにだけは甘すぎるわよね」
「まあ、卵の時から手塩にかけて育てた愛娘だもの。
少しだけ贔屓してしまうのも無理はないわ」
「人聞きの悪いこと言わないでください!
ちゃんと全員平等に扱っています!」
「ママ」
「ごめんね~
もう怒ってないですからね~」
「それにしても、本当に増えたわね。
これでもう八人よ。
二桁までもうすぐね」
『私も忘れないでよ!』
「ニクスも入れてよ。
アルカのハーレムがって話し」
『ああ。そっちね』
「ハルもアルカのお嫁さんになるの?」
「うん」
「なる」
「ハルちゃん!?」
「そうなのね!
じゃあ私のことはアリアお姉ちゃんって呼ぶと良いわ!」
「アリア」
「お姉ちゃん!」
「アリア」
「こども」
「ハル」
「ちがう」
「ハルは大人なの?
ハルお姉ちゃん?」
「そう」
「なんかそんな気がしないわ。
やっぱり、ハルはハルよ!」
「そう」
ハルちゃんがちょっとトーンダウンした。
お姉ちゃんって呼ばれたかったのかしら。
「ハル姉」
「ルカ」
「ハルおねえちゃん」
「リヴィ」
「ハル」
「ノア」
「ハル」
「セレネ」
『ハルちゃん』
「レーネ」
『これ私も続く流れなの?』
「ニクス」
「ハルちゃん偉いわ!
もう全員の名前を覚えていたのね!」
また私はハルちゃんに頬ずりする。
「アルカの浮気者!」
『アリアちゃんには私がやってあげます!』
「リヴィ痛いです」
「ママとリヴィもなかよし!」
「私もルカにやって良い?」
「・・・嫌」
「ふふふ。そんな事を言われても無理やりしてしまうわ!」
「セレ姉!もう!」
「アルカ」
「どうしたのハルちゃん?」
「うるさ」
「けど」
「たのし」
「そう。良かった。
皆と仲良くなれそう?」
「うん」
「みんな」
「やさし」
「ふふ。そう思ってくれて嬉しいわ!
ハルちゃん可愛い!」
「ふへ」




