19-12.吸血鬼の力
「ハルちゃんって肌白いよね。
吸血鬼だからなのかしら。
とっても綺麗」
「ありがと」
「ふふ。
ハルちゃんって太陽の光は大丈夫なの?」
「なんで?」
『アルカのイメージしているような弱点は無いよ。
十字架もにんにくも
川も招かれていない家も
全部問題ないよ』
『そもそも、創作の吸血鬼ってそんなに弱点があるのね』
「肌が真っ白だから太陽に当たるの苦手なのかなって」
「まぶし」
「きらい」
「ねる」
「むり」
「寝づらいから眩しいのは嫌いなのね~」
「そう」
「だから棺桶で寝ていたのね~」
「そう」
「くらい」
「いい」
「暗い所が好きなのね~」
「そう」
「ハルちゃんはママに魔法を教わったの?」
「そう」
「空間魔法以外にも使えるの」
「うん」
「どんなのが得意なの?」
「・・・」
「へんしん」
そう言うなり、
ハルちゃんが真っ黒な霧みたいに変化したかと思うと、
小さなコウモリの姿に変身していた。
「ハルちゃんすごいわ!
そんな魔法始めて見た!」
『これは吸血鬼の能力だったりするの?』
『ううん。血に関する能力はあるけど、
これは単純な魔法だね。
やってることはアルカの人化魔術の方が高度なくらいだよ。
まあ、能力頼りで術理を理解していないアルカと違って、
ちゃんと術として身につけてるみたいだけど』
コウモリになったハルちゃんが、
私の首に抱きついて再び変身する。
今度は黒い宝石の付いた首飾りだ。
無機物にまでなれるなんて多彩な魔術だ。
まあ、流石に用途は思いつかないけど。
ハルちゃんを褒める度に、
次々と変身していき、色々な姿を見せてくれる。
暫くして、元の姿に戻ったハルちゃんが
私の膝に戻ってきた。
「ハルちゃん。ありがとう。
いっぱい見せてくれて楽しかったわ!」
「そう」
「よかった」
「ふへ」
少しだけ口元を動かして笑うハルちゃん。
「ハルちゃん可愛いなぁもう!」
私は堪らず抱きしめて頬同士をこすり合わせる。
「ふふ」
「アルカ」
「ハル」
「すき」
「そうだよ~大好きだよ~
好き好きハルちゃ~ん!」
「ふふ」
「うれし」
「ハルちゃん!」
「アルカご飯ですよ。
浮かれすぎです」
「ノアちゃん!?
いつの間に!?」
「ハルに抱きついて顔をくっつけた所からです」
「!?」
「ほら、行きますよ。
もう皆待っています」
「ごめんなさい!
すぐに行くわ!」
「ハルちゃんもご飯一緒に食べられる?」
「・・・」
「おなか」
「いっぱい」
「そっか、さっき血を飲んでたものね。
どうする?ここで待ってる?
向こうは人がいっぱいいるんだけど」
「いや」
「アルカ」
「いっしょ」
「わかった。おいでハルちゃん」
私はハルちゃんを抱き上げて、
皆の待つ食卓に向かう。
「皆ゴメンね~
お待たせしました~」
「すっかり夢中みたいね。
ノアが呆れていたわよ」
「うぐ・・・」
「アルカ!浮気はダメよ!」
「アルカはルカの婚約者」
「リヴィも!」
「さあ、何時までも騒いで無いで食べますよ」
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
「ハルちゃんもやっぱり少し食べてみる?
ノアちゃんの作るご飯はとっても美味しいのよ~」
「うん」
「ちょっと」
私は膝に乗せたハルちゃんの口に、
自分の分を掬って差し出してみる。
「ハルちゃん。あ~ん」
開いた口に差し込むと、
もぐもぐと咀嚼するハルちゃん。
「おいし」
「そう!よかった!
じゃあもっと食べる?」
「うん」
私は少しずつ、
色んな料理をハルちゃんの口に運んでいく。
「ぜんぶ」
「おいし」
「けど」
「もう」
「いい」
「ありがと」
「口にあったようで何よりです。
明日からはお腹を空けておいてくださいね」
「うん」
「ノア」
「ありがと」
「はい。ハルは良い子ですね」
「ふへ」
「アルカ。ちょっとハル貸してください。
ハル。私の膝に乗りませんか?」
「ううん」
「アルカ」
「いい」
「そうですか・・・
残念です」
「ノアちゃんが陥落する時も近いわね!」
「ハル良いな~」
「ルカもして?」
「リヴィも!」
「ダメです。皆自分で食べてください。
そういうのは、今度アルカとデートする時にでもお願いすると良いです」
「「「は~い」」」
「アルカ」
「どうしたの?」
私がハルちゃんの方を向くと、
またハルちゃんの姿が闇の霧に変わって、
私の首に巻き付く。
『ねる』
首飾りに変化したハルちゃんから念話が届く。
もしかしたら、私がゆっくり食事を出来るように気を使ってくれたのかしら。
『おやすみ。ハルちゃん』
『うん』
『おやすみ』
「ハルすご~い!」
「アリア。食事中に立ち上がってはダメですよ」
「ごめんなさい。ノアお姉ちゃん」
「はい。アリアも良い子ですね」
「ふへへ」
アリアも可愛い。




