19-1.指名依頼
「新しいダンジョン?」
「ああ。ルスケアの直ぐ側に突如、
館型のダンジョンが出現した」
「なんでそれを私に?
向こうのギルドの管轄でしょ?」
「難易度が高すぎるんだ。
挑戦した冒険者は誰一人戻っていない。
その中にはAランクの者も含まれている」
「現地のギルドが応援を呼ぼうと考えていたところで、
例の領主がお前に指名依頼を出してきた。
実際、今はクレアもいない以上、
お前以外にこの近くで対応できる者はいないだろう。
最終的に、ギルドと領主の合同依頼という形になった」
「それって目的は?
救助?踏破?破壊?」
「行方不明者の救助と
ダンジョンコアの破壊が目的だ。
脅威度が高すぎるからな。
やむを得まい」
「まあ内容は承知したわ。
これから行ってみる」
「頼む」
私はギルドを出て、
既に別荘で幼少組の訓練を始めていたノアちゃんに念話を繋ぐ。
『ノアちゃん。今良い?』
『良いですよ。問題ですか?』
『ううん。お誘い。
今依頼受けたんだけど、
つい最近出来たばかりのダンジョンだって。
難易度が高すぎて破壊する事になったんだけど、
ノアちゃんも行ってみたいかなって思って』
『それは興味があります』
『生きてるかはわからないけど、
行方不明者の救助も必要なの。
一応セレネも連れて行きたいんだけど、
二人ともこれそうかしら』
『要救助という事は今すぐですね。
・・・
アリアとルカは、
レーネとリヴィに任せて大丈夫でしょう。
わかりました。私達も行きます』
『わかった』
私はノアちゃん達の元に転移する。
「アルカ!」
私を見つけて真っ先に駆け寄ってくるアリア。
私はアリアを受け止めて抱き上げる。
「アリアも行って良い?」
「ごめんね。ここで待っててくれる?
ちょっと危険なところに行かなきゃいけないのよ」
「アリア少し視えるようになったんだよ!」
「本当!?」
「どうやら本当に覚視を掴みかけています。
かなりの才能があるようですね」
「そんなレベルの話じゃなくない?
まだ訓練始めてから一月も経ってないじゃない」
『アリアなら出来ると思ったよ。うんうん』
「ニクスありがとう!」
「とはいえ、まだキッカケ程度です。
まだまだ精進が必要ですよ」
「はい!ノア先生!」
「アリアはルカを守ってあげてね」
「うん!」
「アルカ抱っこ」
「良いよ!ルカ!」
私はアリアを片手に持ち直して、
ルカも抱き上げる。
最近、日中は殆ど一緒にいられなかった。
今は全員で別荘に移り、
私は朝から晩まで飛び回っている。
帰ると娘達は訓練疲れで寝ている事が多く、
半分くらい単身赴任みたいな気分だ。
まあ、ノアちゃんとセレネは大体起きていてくれるのだけど。
レーネや幼少組とゆっくり話すのは週に一度くらいだ。
アリアとルカを抱えたまま、
別荘の近くに作った屋根付きのプールに向かう。
ここはレーネが主に訓練している場所だ。
歩行訓練と魔法の練習に水を使っているのだ。
レーネはプールに足を付けて座って、
魔力制御の練習をしていた。
隣にはセレネとリヴィもいる。
レーネの練習に付き合っていたようだ。
「アルカさま!」
レーネが私を見て声を出す。
喋る練習も順調だ。
皆優秀だなぁ。
私はアリアとルカをその場に降ろして、
レーネとリヴィも抱きしめる。
「今から急用でノアちゃんとセレネを連れていきたいの。
少しだけ皆で待っていてくれる?」
「「「「は~い!」」」」
「リヴィは皆を守ってあげてね」
「うん!」
「アリアもルカも絶対に結界から出ないこと」
「「はい!」」
「レーネは無理しないでね。
今は人魚の時ほど泳げないのだし、
魔力を使いすぎて倒れてもダメよ」
「はい!」
「全員訓練は中断して家の中で待っていてください」
「「「「はい!」」」」
「まあ、そっちの方が安全ね。
けどちょっと厳しくない?」
「良いんです。ここの監督は私です。
アルカも口ごたえは無しです」
「イエッサー」
「なんですそれ?」
「あれ?これは通じないの?」
『そもそも女性に対しては「イエスマム」だよ』
「へ~。知らなかったわ」
『どのみち通じないけど』
「ダメじゃん」
「アルカ。ゆっくりしていて良いんですか?」
「いえ。すぐに行きましょう。
セレネも大丈夫?」
「ええ。ノアから聞いたわ。
行きましょう」
私はノアちゃんとセレネを連れて、ルスケアに転移した。




