18-24.家族
一通りの買い物を済ませて、
私達は自宅に帰ってきた。
最後には爺さんの店にも寄って、
レーネ用の雑貨を依頼してきたけど、
流石にまだ指輪は出来ていなかった。
色々拘ったから材料の仕入れに時間がかかるらしい。
なんだったら自分で取りに行くのも良いかもしれない。
私は荷物を置くと、
セレネとレーネを部屋に連れ込む。
二人をベットに転がして宣言する。
「まずはセレネからよ」
セレネに覆いかぶさって唇を奪う。
私達のキスを隣で見るレーネの顔が真っ赤に染まる。
『セレネ!セレネ!セレネ!』
私は気持ちを込めてセレネにも念話を送ってみる。
『これはレーネとの経験で思いついたのね?
頭の中がアルカでいっぱいになって幸せだけど、
なんだか少し癪だわ!』
セレネもキスを続けながら念話を送り返してくる。
暫く続けていると、
レーネの気配に違和感を感じて視線を向ける。
レーネは気を失っていた。
慌てて介抱するが、特におかしな所は無い。
「刺激が強すぎたのね」
「本当に加減してあげてよ?
見てただけでこれって相当じゃない」
「だからこそってのもあるのかも?
昨日、レーネにもこれくらいはしていたもの」
「とりあえず、今はもうお終いよ。
レーネが目覚めるまでお菓子作りの準備だけでも進めておきましょう」
「そうね。私がやっておくから、
セレネはレーネの側にいてあげてくれる?」
「わかった」
最後に短いキスをして、
私はキッチンに向かう。
「レーネは大丈夫なのですか?
調子に乗りすぎですよ。アルカ」
「はい・・・すみません」
ノアちゃんは説明せずとも既に状況を把握していた。
流石の知覚力だ。家の中の事など手に取る様にわかるのだろう。
「後で私にもしてもらいますからね」
そう最後に付け足して料理に戻っていった。
私はお菓子作りの準備をしてから、
ノアちゃんの手伝いをして時間を潰す。
そろそろ間に合わなくなるので
先に始めようかと思った所で、
セレネとレーネが降りてきた。
「レーネ。さっきはごめんね。
もう大丈夫?」
『はい。大丈夫です。
ご心配おかけしました』
「ううん。私のせいだから。
気にしないで」
『さっさあ!お菓子作りとやらを始めましょう!』
先程の事を思い出したらしく、
レーネの顔がまた赤く染まる。
そこには触れずに、
私とセレネとレーネで作業を始める。
セレネ・・・
相変わらず不器用ね。
レーネ・・・
あなたもなのね。
まあ、でもレーネはまだ成長の余地があるはずだ。
セレネ?
セレネはもう諦めたわ。
もはやセレネの不器用さは一種の才能よ。
萌えってやつよ。
セレネの事なら何でも愛せるわ。
欠点だってね。
そんなこんなで、
形も大きさも不揃いな大量のどら焼きを完成させた。
まあ、食べられれば一緒よ一緒。
むしろ二人の手が生み出したと思えば、
どんなものにも劣らない至高の逸品とも言えるわ。
『ノアー!アルカがー!』
『何言おうとしてるのよ!?』
『ノアの作る料理よりもこっちの方が良いんでしょ?』
『子どもの屁理屈みたいな事言わないでよ!』
『冗談だよ。冗談。
意味はちゃんとわかってるって。
アルカが自分を騙』
『やめなさい!』
そうして、準備を終え、
約束の時間になったので、
エイミーの家に向かった。
「ようこそ。いらっしゃい」
エイミーに招かれて七人でゾロゾロと家に入っていく。
「エイミー今日はありがとう!
この間はごめんね。
今日も驚かせてしまうかもしれないけど、どうか許してね」
「良いのよ。
こちらこそ来てくれてありがとう。
あなたは私の大切な家族だもの。
少し位失望したからって見限ったりなんてしないわ」
やっぱ失望はしてたんですね・・・
まあ、当然なのだけど・・・
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ。
それで、この子が新しい家族のレーネっていうの」
『レイネスと申します。
お気軽にレーネと及び下さい。
今後ともどうかよろしくお願い致します。お義姉様』
「詳しいことは席についてから話すわね」
「ええ。こちらこそよろしくね、レーネちゃん」
「礼儀正しい良い子ね。
この子、ノアちゃん達と年はそう変わらないわよね」
一発で見抜くお姉ちゃん。
ギルドの受付嬢は人を見る目でも養われるのだろうか。
あははと誤魔化し笑いで奥に向かい、
私達が持ち込んだ料理も並べて、
パーティーの準備を整える。
席につき、一通りの飲み物も行き渡った所で、
エイミーの挨拶が始まる。
今回の趣旨は、
元々は私とノアちゃんとセレネとの結婚祝いだ。
まあ、私達は結婚式とか挙げてないし、
役所とかに申請を出したわけでもない。
別にこの世界では珍しくもないのだけど。
ともかく、私達は既にそういう関係だ。
そして、私達の家族が増えた事と、
皆をエイミーに改めて紹介する事も含めた祝いの席となった。
「エイミー、
一つだけ先に報告をさせて欲しいのだけど、
私はノアちゃんとセレネ以外にも、
レーネとも結婚するの。今はまだ婚約者だけど」
「エイミーさん。この件は私達も承知しています。
どうか詳しい事情もお聞き頂けると嬉しいです」
「わかった。
ちゃんと聞いてからどう受け止めるかは判断するわね」
「ありがとう。エイミー」
そうして、エイミーの乾杯でパーティーが始まった。




