18-9.悪い魔女と人魚姫
私はノアちゃんとセレネに正座させられて経緯を説明する。
「事情はわかりましたけど
ノックくらいしてください!」
「ここ私の部屋なんだけど・・・」
「アルカの物は私の物よ」
「アルカの部屋だからこそです」
「二人とも何してたの・・・」
『それはもちろんナ』
「やめなさい!」
「レーネもごめんね。
いきなり変なもの見せてしまったわ」
「変なものですって!?」
「アルカが言うのですか!?」
「わるかったってば!
私だって二人のそんな姿私以外に見せたくないわよ!
今のレーネに階段登らせるのに躊躇して横着しちゃっただけなの!
部屋の前に転移するべきでした!
ごめんなさい!」
「まったく。
ともかくこれ以上は後です。
何時までもレーネの前でみっともない真似を続けるのは止めましょう。
レーネ。すみません。
事情はわかりました。
早速始めましょう」
『はっはい!』
「レーネ大丈夫?
顔が真っ赤よ?
地上での生活はやっぱりなにか問題があった?」
『珍しくセレネが素でボケたね』
「私もビックリしたわ」
「いえ、セレネはあえてそう見せただけです。
まだ内心は動揺しています」
「ノア!」
「ああ。なるほど。
それなら納得だわ。
セレネだもんね。そうよね」
「アルカ!」
『セレネにも可愛いところがあるんだね』
「ニクス!」
『皆さん仲がよろしいのですね。
更に羨ましくなってしまいました』
「レーネまで!?」
「えーとそれじゃ、
そろそろ真面目に話しましょうか」
私はセレネを抱き寄せて横に侍らせた状態で仕切り直す。
「言ってる事とやってる事が違うわよ!」
「あまりにも可愛くてつい」
「アルカズルいです!
セレネは今は私のです!」
「はいはい。ノアちゃんもこっちおいで」
私はノアちゃんも魔法で抱き寄せる。
『アルカ様は不思議な術ばかり使いますね』
「レーネも試してみる?
レーネが私にとって大切な存在になってくれたら何時でもやってあげる」
『そのような言い方はあんまりです』
「私は本気でレーネを欲しいと思っているの。
だからこれからするのはレーネを口説き落とすこと。
話を聞くと誘っておいて悪いけど、
実は私、悪い魔女なの」
「開き直りましたね?」
「さっきまであんなグダグダ悩んでおいてよく言うわね」
『魔女が人魚姫を口説き落としてどうするのさ』
「ちょっと勢いで自分の事も騙してるんだから、余計なこと言わないで三人とも」
『ぷっふふ』
そのまま笑い始めるレーネ。
暫く笑った後、話を始める。
『まさかこの場でアルカ様に裏切られるとは予想もしておりませんでした。
お父様と言い、どうして皆で私を誘惑するのですか?
今までどれだけ好きにしてても、
姫としての役目を忘れたつもりは無かったのに』
「それでも、
家出して行倒れてしまうほど外の世界にも憧れているのでしょう?
だから皆レーネの事を心配しているの。
いつか我慢の限界を迎えてどこかで野垂れ死んでしまうんじゃないかって」
『・・・そうですね。
確かにその通りです。
実際に一度はアルカ様に救われなければ命を落としていました』
「ならその命は私にくれない?
私が救ったのだから私のために生きてくれない?」
「流石にそれはどうかと思います」
「それ言い出したらアルカは何人抱え込む事になるの?」
『それ自分で言い出したら悪人だよ!
ドン引きだよ!』
「一々茶々入れないで!
自分でも無茶苦茶だと思ってるんだから!」
『ふふ!皆さん!
もう笑わせないでください!
話がぜんぜん進みませんよ!ふふふ』
「改めてレーネの話を聞かせて。
問題があるのなら私に解決を手伝わせて」
『それは無理です。
それに、実はもう必要がないのです。
私は唯一の姫でした。
それが最大の懸念でした。
ですが、次の子が近々生まれるのです。
私に弟か妹ができるのです』
「・・・確かにそれは手伝えないわね」
「私達も認めませんよ」
「そもそも必要無いって言ってるでしょ」
『ちなみに人体錬成は認めないよ!』
「やらないわよ!」
『私はその話を聞いて、
自分がいらないと言われているように感じてしまいました。
そうして、意固地になっていたのです。
そんなはずは無かったのに。
お父様もお母様も私を愛して下さっていると知っていたのに。
それが故だとわかっているのに』
『それなのに・・・
ふふ。皆さん私の悩みを何だと思ってるのですか?
お父様もお母様も皆様も本当に・・・』
『わかりました。
私もアルカ様の伴侶に加えてください。
そして、いつの日か我が国に脅威が迫った時には、
私と共に守ってください。
その条件なら私はこの命の全てをアルカ様に捧げます』
「喜んで。
その約束は必ず果たすわ。
だからレーネ。よろしくね」
『はい!』




