18-6.矛盾
『アルカはまだお説教。
どこか落ち着けるところに行って』
『はい・・・』
『私に叱られたからって、
はいはい従っちゃダメなの!
自分の意思で決めなさい!』
『ありがとう。ニクス。
ちゃんと考える。
だから知恵を貸して』
『本当はあなた達の事であっても、
人の営みに口出しなんてしたくないんだからね。
私は神なの。
こんな事に本当は口出ししちゃいけないの。
そこを曲げてでも、アルカを助けてあげたいの。
ちゃんと理解してね』
『うん。ありがとう』
私は空いていた客間に移動する。
『先に話を聞いてあげる。
だからアルカの好きに話して』
『うん。私は・・・』
私はニクスの言う通り中途半端なのだろう。
ノアちゃんとセレネだけが側にいればいいと思ってた。
今でもその気持は変わっていないつもりだ。
けれど、そこにはニクスが加わった。
本当はその事でノアちゃんとセレネに負い目を感じている。
ニクスを邪魔になんて思いたくはないけど、
私はノアちゃんとセレネの為だけに生きたかったのに、
あんな風に無理やり落とすなんてって恨む気持ちが無いわけじゃない。
けれど、それでもニクスを手放すつもりなんて無い。
今ではニクスへの想いだって二人への想いに負けていない。
きっといつかレーネへの想いもそうなるのだろう。
私が一番気にしているのはその部分だ。
私は未だにノアちゃんとセレネのためだけに生きていたいのだ。
そこにニクスが加わったからって、
もうこれ以上増やしたくなんてない。
ニクスが加わった事さえ、
私にとっては不本意なのだ。
この気持ちはニクスへの想いとは別に未だに持ち続けている。
きっと、ノアちゃんとセレネに対する気持ちと、
ニクスに対する気持ちは完全に別物だからだ。
どちらも大切だと思っているのは間違いない。
手放すつもりがないのも一緒だ。
私の全てを捧げてもいいと思っているのも同じだ。
なのにやっぱりどこか違う。
私達がレーネを巻き込んだのはわかってる。
レーネが選べば私は受け入れるだろう。
ノアちゃん達と同様に扱うだろう。
何れは同等の気持ちを抱くのだろう。
けれど、今はまだどうしても抵抗がある。
ノアちゃんとセレネの為だけに生きていたい。
ニクスを側に縛り付けていたい。
レーネもアリアもルカも手放すつもりなんてない。
友達として、家族として側にいて欲しい。
それが私の本心だ。
矛盾してる。
自分の事しか考えていない。
ニクスがさっき言った事もわかってる。
ノアちゃんとセレネにも昔言われたことだ。
側にいろと縛り付けるくせに、
自分達を私から離れられなくさせたくせに、
恋もさせてくれないのかと。
私はきっとそう思っているのだ。
一生側にはいて欲しいけど、
恋をしては欲しくないのだ。
私の望んだ形で側にいて欲しいのだ。
きっとそんな最低な気持ちが私の本心だ。
けれど、そんなのまかり通るわけがない。
それであの子達が傷つけば私も耐えられない。
自分で傷つけておいてそうなるのだ。
そうして、何れは想いに応えるのだろう。
本当に自分勝手で最低だ。
こんな矛盾に好きな人を巻き込んでいくのだ。
私はどうすればいいのだろう。
『アルカの一番の問題はそれを自覚していなかった事。
そして、それを実現するための努力をしてこなかった事。
そう望んでいるのであれば、
相手に気取られずに立ち回るしか無かった。
どれだけそれが最低でも、
今の無自覚に振り回すアルカよりずっとマシだった』
『アルカには力がある。
数人の女の子を侍らせるくらいのお金も力も持っている。
それがどれだけ最低な行いでも、
アルカには出来るはずなの』
『けれど、アルカはそんな事はしたくない。
抱え込んだ全てに責任を持ちたい』
『けれど、アルカにはその意思も気概も無い
そう。無いんだよ。
アルカがどれだけ願ったって、
今のアルカにそんな意思は、責任感は無いの。
そうしたいって願ったってそれをするだけの度量がないの。
アルカには責任を果たすって気概がないの。
あなたの心は体に追いついていないの』
『急激に大きな力を得て、
その力に相応しいだけの心が育っていないの。
これは私のせいでもある。
それは謝る。
だから私も力になる事にしたの。
アルカがこれ以上、自分の行いに振り回されないように。
それで周囲が不幸にならないように。
私も側で支えるから。
少しずつでいいから一緒に考えよう』
『そうして、まずは責任を果たそう。
既に巻き込んでしまったあの三人は受け入れると決意しよう。
次に誰かを巻き込む時は、
その相手をどうしたいのかちゃんと考えよう。
そして相手との距離感を大切にしよう。
懐に入らせないと決めたのならそれを徹底しよう。
そう意識して少しずつ学んでいこう』
『うん・・・』
『うん。じゃないでしょ。
これは私の意見だよ。
アルカの本心からどうしたいのか考えて。
どうするべきか、だけじゃないよ。
どうしたいのか、だからね。
アルカは操り人形じゃ無いんだから、
今私が言った事をそのまま受け入れる必要はないの。
もっと良く考えてね』
『必要ならいくらでも話しは聞いてあげるし、
提案もしてあげる。
けれど、決めるのはアルカだよ。
どれだけ難しく感じても、
それだけは違えちゃダメだからね』
『わかった。
ありがとう。ニクス。
もう少し考えてみる』
『頑張って。応援してる』




