18-5.選択
『どうするノアちゃん。
私達は既にレーネが私に惚れるのを織り込み済みで誘っているのよ?
そしてレーネにもそれを伝えてしまった。
ここで断わるのは不自然だわ』
『珍しく今日は冴えてますね』
『現実逃避してる場合じゃないでしょ!
一緒に考えて!』
『それを前提にされてしまうと、
時間をくれというのも変な話ですよね・・・』
『最悪娘を弄ぶつもりだったのかと思われかねないわ』
『事実じゃない?
ただでさえ種族も変えて、
どうせ寿命も延ばすことになるんだろうし。
これ以上ないほど弄んでるよ?』
『そうだけど!そういう意味じゃないでしょ!』
『レーネ自身の悩みを理由に時間を稼ぎましょう。
具体的には・・・』
私はノアちゃんから言われた事を元に、
王様へ返答する。
『返事をする前に、まずはレーネとも話をさせて貰えない?
本人にその気がないのであれば私達は受け入れられないわ』
『当然、そちらの間でも納得した上でよ。
私達と来ることが家族との不和に繋がるのならこの話は無しよ。
ちゃんと里帰りはさせてあげたいもの』
『承知した。
気遣い感謝する』
『ノアちゃん・・・
これやばくない?
向こうが全部納得したら
嫁として受け入れるって言ってるようなものよ?』
『・・・アルカのバカ!』
『ノアちゃんの提案なのに・・・』
『どの道もう手遅れだよ。
そもそもの時点で浅はかだったんだよ。ノア。
これはノアのレーネを巻き込もうって提案の時点で穴だらけだったんだからね?
今回は決してアルカだけのせいじゃないんだよ?』
『・・・すみません。アルカ。
ニクスの言うとおりです』
『こっちこそごめんねノアちゃん。
私が不甲斐ないから頑張って考えてくれたのだもの』
『ともかく、セレネも交えて話す必要があります。
レーネを預かるように提案してください。
地上で話しましょう』
『わかった』
私は一度レーネを連れて行きたい事を説明する。
少し話が長くなるかもしれないのと、
レーネの気持ちを聞くのに、
ご両親から離れたところの方が
本音も引き出しやすいのではと提案してみた。
王様は問題なく承知してくれた。
一晩レーネを預かるとしよう。
王様との会話が終わり、
レーネの部屋に移動する。
『今更だけどレーネもそれで良い?
とりあえず、今晩一緒に話し合って欲しいのだけど。
勿論無理強いなんてしないわ。
ただレーネの気持ちを聞かせて欲しいの』
『問題は在りません。
宜しくお願いします。アルカ様』
『わかった。じゃあ色々魔法をかけるからね』
そう言って、私は水中適応の魔法と人化の魔法をかける。
人間になったレーネも連れて、
自宅に転移した。
一旦、レーネにはアリア達と遊んでいてもらうことにした。
レーネも少し落ち着く必要があるだろうし、
私達も緊急会議を開く必要がある。
夜に話し合いを始める事を約束して、
私の部屋に三人だけで集まる。
ニクスも入れれば四人か。
「・・・ノアもいたのに」
「面目ないです・・・」
『セレネも乗った事だよ。
ノアのせいにしないの』
「そうね。ごめんノア」
「いえ・・・」
「方針を決めましょう。
極端な事を言えば、まだ挽回の余地はあるわ。
レーネ本人が納得しなければこの件は進まない。
逆に言えば、私達が無理に説得しなければ、
レーネの意思で国に残る可能性はあるのよ」
王様が最後に付け足した政略結婚の口実みたいなのを理由に断わるのは不可能だろう。
あれは娘を納得させる為の口実でしかないとわかっている。
そもそも、私に国を守ってくれと言っているのではないだろう。
国を守ろうとするレーネを守ってくれと言っているにすぎない。
「レーネの説得については、
こちらから誘っておいて、手を抜くような事をするのに抵抗がなければですね」
「いくらなんでもレーネに対して不誠実すぎるわね」
「勿論私だってそんな事したくないわ。
ちゃんとレーネに納得して家族になって欲しいと思ってるもの」
「そうですね。私もです」
「けれど、レーネを受け入れれば、私達と同じ扱いをする事になるわ。
嫁として受け入れておいて、そこで差を着けたらそれこそ不誠実だもの」
「つまりアルカ次第です。
私達と同等の扱いを出来ますか?」
「・・・まだ無理だけど、何れは出来るとは思う」
「まあ、正直そこは聞くまでもないわね。
私達のアルカが出来ないわけがないわ」
『つまりもう選択肢なんてないでしょ?
この会議はあくまでもノアとセレネの覚悟を決めるためだよ』
「「うぐ・・・」」
「どうしちゃったのニクス?
そんなまともな事ばかり言うなんて・・・」
『アルカ達があまりにも不甲斐ないからだよ!
三人とも良い加減にしてよ!
何時までくだらない事に拘ってるの?
『ノアとセレネ!
あなた達の愛しているアルカは
相手が増えたらあなた達を蔑ろにするような人なの?
あなた達はそう思っているの?
あなた達のアルカへの愛はその程度なの?』
『アルカ!
良い加減ハッキリしなさい!
あなたはレーネが欲しいの?いらないの?
あなたが決めるべきだった事はそれだけだよ!
手放したくないけど程々の好意で抑えたいなんて都合良くいくわけ無いでしょ!
どれだけ最低な事を続ける気なの?
責任を取れないのならいらないって突っぱねなさい!
友達止まりだと言うのなら家族に加えず遊びに行くだけで良かったはずだよ!
ノアとセレネにどんな思惑があったって、
あなたがどちらかハッキリと決めてしまえばこんな事にはなってないの!
もう、一度は家族に迎えると口にしたのだから責任を持ちなさい!
今更あなたに選択肢なんて無いの!』
「はい・・・」
『アリアとルカの事も同じことだよ?
あなたにその意思があろうと無かろうと、
例え二人が幼くとも、
あの首輪を贈った時点でもう道は決まったの!
あなたは国ごとあの子達を巻き込んだの!
それでもそう見れないのならハッキリ伝えなさい!
二人には言えなくても私達にそう言いなさい!
何時までもなあなあで済ますのは許さないよ!』
「はい・・・」
『わかったらアルカはもう行くよ!
後はノアとセレネだけにしてあげて!』
私はノアちゃんとセレネに視線を向ける。
二人が頷いたのを見て、私は部屋を後にした。




