表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/1352

2-16.聖女の力

「セレネ。なんでも良いから聖女について知っていることを教えて」



私はクレアとエルドスの観察を続けながら、質問する。


「初代聖女は癒やしと結界に優れていたと聞きます。

その癒やしは失った体すら取り戻し、

強固な結界は一切の魔物を寄せ付けなかったそうです。」


「それは魔法ではなかったの?」


「わかりません。力の詳細については記されていないのです。」



過去の枢機卿が書物とかも書き換えていったのだろうか。

聖女の力を失わせて、御しやすくするために。




「また、初代聖女は神のご加護を持っていたそうです。

度々、神より知恵を授かる事もあったとか。」



勇者や聖女が神に力を貰うというのはイメージできる。

なら、なぜ魔王まで似たような力を持っている?



魔王も神から力を貰っていた?邪神とか?


もしくは魔王が邪神そのものだった?


あの不自然な力場や、魔王の力による攻撃を

クレアが簡単に切断できるのは神の力によるものなのか?



じゃあ、聖女の力は邪神の力を弱めるもの?

少し取っ掛かりが見えてきた。




だとしても、どうやってそんな事をする?

神から力を授けられていないかもしれない現代の聖女に同じことが出来るの?

もう既に詰んでない?



「セレネ。あなたは本当の神託を受けたことがあるの?

私に話した嘘の神託などではなく。」


「いえ、ありません。」


「じゃあ、他にはなにか神の存在を実感できる出来事は?

なにか力を貰ったとか、声を聞いたとか、光っているのを見たとか

些細なことでもなんでもいいの。」


「いえ・・・何も心当たりは無いですね。」



万事休すか・・・



そもそも聖女が虚偽の神託なんて口にする?

神の言葉を偽るなど信心深い人間が出来ることなの?



「セレネ。貴方は神をどう思っているの?」


「我らを生み出し、時に導く偉大な存在と聞いております。」



聞いております?


「セレネ貴方は神の存在を信じている?」


「え?はい。信じております。」


「その信仰はどこからきてるの?」


「信仰とはなんでしょうか?」



は!?


「セレネ。貴方はお祈りする時に何に向かってするの?」


「・・・お祈りとはなんでしょうか?」



そういう事か。

ようやく腑に落ちた。


聖女は幼少期から特別に育てられる。

枢機卿達の都合の良い存在として。


魔王に魅入られた者たちに神への信仰心など存在しない。

聖女の力など邪魔なだけだ。


過去の枢機卿達に歪められた聖女は信仰を取り上げられた。

そうして、聖女が力を持たないように。

ただの鍵として機能するように。


だから、聖女と神が繋がっていない。

つまり魔王への対抗手段が存在しない。

魔王の力を持つ者達の天敵が存在しない。



そうやって聖女は力を失っていった。

聖女の力、素質とは神から力を授かる受け皿なのだろう。

神の力が入っていない聖女は何の力も発揮できない。

ただの入れ物なのだから。




今から急遽、信仰心を持ってくださいと言った所で無理だ。

聖女が力を取り戻す方法は時間をかけるしかない。



ノアちゃんはどうだ?


「ノアちゃん!神様って信じてる?」


「・・・すみません。信じていません。

いるなら恨んでいたと思います。」



まあ、そうだよね。

ノアちゃんは生まれから疎まれ続けてきたのだから。

そんな環境で信仰心なんて生まれないよね・・・



私は転移前が日本人だった。

お国柄、信仰心とは少々縁遠かった。


そもそもここは異世界だ。

しかも無理やり転移させられて。

今でこそ幸せだけど、それでもこの世界の神には恨みしかない。

日本に残してきた家族に会いたくて何度泣いたかもわからない。


まあ、そもそも私に聖女の力は無いだろうけど。




やっぱ無理じゃね?


一応クレアが出血した所も何度か見てはいるのだから、

いくら硬いとはいえ、絶対に攻撃が通らないわけじゃない。

耐久力を上回る威力さえあればダメージを与える事は可能なはずだ。


聖女の力は諦めて力ずくでやるしかないか・・・


でも、実際問題、残魔力量的にそんな攻撃もう何発も撃てない。

魔力を使い切って倒せなければこっちの負けだ。

まだそんな博打は打てない。


どうにかして、クレアと力を合わせるしかないだろう。



かといって、クレアとの共闘に慣れているわけでもない。

何度か共闘したことはあるが、各々勝手に動いているだけだ。

息を合わせて連携するなど不可能だ。



とはいえ、クレアの力は絶対に必要だ。



少ない魔力で出来て、クレアとの連携で威力をあげる方法・・・これなら!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ