17-14.信仰
次は地下の町、プラナだ。
大昔にドワーフによって生み出されたこの町は、
現在ギルドの管理化に置かれている。
もう少し頻繁に顔を出すつもりだったのだけど、
邪神騒ぎで随分と放置してしまった。
途中で中途半端に魔力を貯めてきても、
万が一、力を失っていることがバレたら困るので、
結局来るのは一年ぶりになってしまったのだ。
この地の元々の管理者の一人であり、
現在は町の代表の一人となったマーヤさんと、
もう一人の代表であるダーナさんに声を掛ける。
私達がこの町を巻き込んだ騒動の収拾を付ける際に協力してくれた二人だ。
最初に、いきなり来るのに時間が空いた事を謝罪する。
「アルカ様!よくぞお越し下さいました!
ご安心下さい!問題は起こっておりません!」
マーヤさんが答える。
「ギルドの方々も良くしてくださっております。
今の環境に不満はございません」
ダーナさんも続く。
良かった。
きっとユーリスさんが約束を守ってくれたのだろう。
けれど、今後はもう少し頻繁に様子を見ることにしよう。
そう、マーヤさん達に伝えて、
私は次の目的地に向かう。
『なんであのマーヤとか言う人はアルカの事信仰してるの?』
『さあ。私も知らないの』
次に一応、ルスケア領主の元にも訪れた。
何だかマーヤさんの事を見てたら思い出してしまった。
あの領主には最後に開放すると告げたら泣いて縋られた。
その姿を思い出し、流石にずっと放置は可哀想かな、
なんて気まぐれを起こしてしまったのだ。
思えばこれが失敗だったのだろう。
「ああ!我が主よ!
何と神々しいお姿に!
やはり我々の信仰は間違っていなかった!」
泣いて跪く領主。
これも、ノアちゃんの言っていた、
私は力そのものだから人を惹きつけるということなのだろうか。
なんか嫌だなぁ・・・
レーネみたいな可愛い子からの好意なら嬉しいんだけどなぁ・・・
『アルカって神だったの?』
『なんでよ』
『なんかこの地はアルカへの信仰心で溢れてるよ?』
『はぁ!?』
『このままだと本当に・・・力は十分に・・・
私が・・・そうすれば・・・』
多分ニクスの神威を私のと勘違いしているのだろう。
何でこの領主はそんなのわかるのだろう。
私を信仰してるから?
少なくともギルド長達は疑問に思ってなかったよ?
でも折角なら、
ニクスの名前を出して信仰先を差し替えられないだろうか。
『待って!このままにしておいて!
何だったら少し力を見せてあげようよ!』
『どうしたの?
ニクスの信仰心を集めるいいチャンスじゃない』
『ううん。それよりもっと良い方法思いついたの!
だからお願いアルカ?私の頼みを聞いてくれる?』
ニクスがめいいっぱい可愛い声でそんな事を言う。
『もちろん!任せておいて!
ニクスのお願いなら何でも聞いちゃうわ!』
『チョロい。
ごほん、じゃあ早速やっちゃおう!』
私はニクスの言うがままに力を披露していく。
段々と周囲に人が集まっていく。
どうやら領主が集めさせたようだ。
そうして、ニクスに乗せられた私は、
領主の町を練り歩きながら力を示していく。
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勿論、後日ギルド長に叱られた。
まあ、その話は置いておこう。
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『アルカ!またここに来るからね!』
『もう嫌よ・・・恥ずかしくて来れないわ』
一通り済んで我に返った私は、
自分のしでかした事に気づき赤面してしまう。
なんであんな目立つこと・・・
ニクスに囃し立てられてどんどん調子に乗っていった。
なんか妙な術でもかけられていたのかしら。
『そっそんな事してないよ!
アルカが皆に崇められる所を見たかっただけだよ!』
『もうやめて・・・思い出させないで・・・』
素敵な音色を聴いて少し心を癒やしてから、
次はテッサのギルド長さんの所に転移する。
『何で私の悲鳴で回復するの!?
おかしいよ!変だよアルカ!』
『今回も自分のせいでしょ。
それにしても相変わらずの復帰力ね。
やりすぎたと思って流石に加減したとはいえ、
ニクスも大概おかしいわよ』
『まあ、今回は愛も多めに混じってたからね。
あれならちょっと悪くないかも・・・』
ニクス、目覚めかけてるの?
『そんなことないよ!』
「ようやく復活したのか。
これで悩みのタネが一つ減ったな!
・・・むしろ増えたのか?」
「なんでよ!?」
「自分の胸に聞いてみろ」
『ニクスなんで?』
『何で私に聞くの!?』
『何言ってるの?ニクスは私の一部よ?
ちゃんと私の胸に聞いてるじゃない』
『もう!アルカったら!』
「それで?
遂に食っちまったのか?」
私の指輪に視線を送りながらそんな事を聞く。
「なにおっさんみたいなこと言ってるのよ!?
可愛い娘達で変な想像したら許さないわよ!」
「私を何だと思ってるんだ。
お前と一緒にするな。
というかお前が言えるか!」
「まあ、ともかく今度また連れてくるわ」
「その時はまた依頼やっていっても良いんだぞ?」
「それで恩返しになるならいくらでも」
「言ったな?用意しといてやる」
「ノアちゃんにも伝えとく」
「セレネも冒険者になったんだってな」
「言ったっけ?」
「いや、だが既に知れ渡っている。
お前の娘という情報とともにな。
正直その指輪はそういう意味でも困るのだが・・・」
「そっか。どうやって結びつけたのかしら・・・
それにしてもまだ情報集めててくれたのね。
そういえば本部の方はあなたに任せてたものね。
やっぱマズイかしらね・・・
さっきもピレウスのギルド長に叱られてきたのよ」
「当然だろう。
私の担当だったらと思うと寒気がするくらいだ。
タダでさえSランク冒険者の動向には気を使うのだ。
下手をすればあいつの首が飛ぶぞ」
「うぐ・・・」
「まあ、上手くやるだろうがな。
なんせお前に言う事を聞かせてきた唯一の男でもある。
本部もわざわざ手は出さんだろう」
「皆には迷惑かけっぱなしだわ」
「気にするな、とまでは言えんが、
まあ、それだけの恩恵をお前は周りに与えている。
気にしすぎる必要はない」
「前はもっと持ち上げてくれなかった?」
「最近やらかしすぎた上に長い事引っ込んでいただろうが。
その分色々負債が溜まってるんだ」
「返していかなきゃね」
「期待してるさ」
「ありがとう」
ギルド長さんとの話を終えて、
最後にアリアの所に転移した。




