17-13.報告
私はノアちゃんとセレネに家事を任せて、
挨拶周りに出ていた。
本当は全員で来たかったけど、
今度ゆっくりできる時にしよう。
これから暫くはある程度余裕があるのだから。
そもそも今日はもうあまり働きたくないし。
なんだったら二、三日は引き籠もっていたいくらいだ。
まあ、流石にそこまでの余裕はないだろうけど。
ともかく、最低限必要なことだけ済ませて家でゆっくりしよう。
とりあえず、
自宅に戻ったことは早めに知らせておく必要があるだろう。
ギルドが情報を一番早く得られるのは間違いないし。
ついでに他の所にも伝えておくことにする。
まずはへパス爺さんの店に来た。
爺さんにこの町に戻った事と、
予備として頼んだ指輪を受け取りに来た事を伝える。
『これが私の!』
「今度はノアも連れてこい。
そろそろノアの装備も見てやらにゃあならんじゃろう」
「可愛い孫娘にも会いたいしね」
「うるさいわい。
何時までも油売っとらんで早く用事を済ませて帰ってやれ」
「ありがとう。またくるわ」
「おう」
次はギルドに行く。
「ギルド長いる?」
「アルカ。久しぶりね。
元気そうで良かったわ」
「二ヶ月くらい前にも来たじゃない」
「前はもう少し小まめに連絡くれたじゃない」
「ああ。そっかエイミーには理由まで話してなかったわね。
事が事だけにギルド長も無闇に話せなかったわよね。
私、力を失ってたから気軽に移動できなかったのよ」
「ええ!大丈夫なの!?」
「うん。もう完全復活したわ。
なんなら前よりずっと強くなったもの」
「そう。それは良かったわ。
それじゃあ、その指輪のこと詳しく教えてもらおうかしら。
まさかお姉ちゃんに結婚相手の紹介が出来ないなんて言わないわよね?」
「あはは。ちょっとギルド長も忙しいみたいだしまた今度来ようかな~」
「俺が何だって?
まあ、そう言わずに奥に行こうじゃねえか。
エイミー。受付は他に任せてお前も来い。
ゆっくり話をしたいだろうしな」
「ありがとうございます。
さあ、行きましょうアルカ」
「待って!ちょっと心の準備させて!」
「往生際が悪いわよ。
ここまで来ておいて何で準備ができていないの?
そういう所は皆にも叱られてるのでしょう?
早く直しなさい」
「セレネみたいな事言わないで!」
私はエイミーとギルド長に引きずられて、
ギルド内の一室で詰められた。
「はぁ~。
どこで教育を間違えたのかしら。
保護者として情けないわ」
「まったく。
だらしない奴だとは思ってたが、
本当に大切なことは守り通すとも思っていたのだが」
「面目次第もございません・・・」
「今度時間を頂戴。
正直受け入れがたい気持ちが大きいけど、
アルカとあの子達の事だもの。
ちゃんと祝福させてね」
「エイミー・・・ありがとう!」
「お前も甘やかし過ぎじゃないのか?」
「かもしれないですね。
それでも可愛い妹の事ですから」
「まったくどいつもこいつも・・・」
「ギルド長は祝福してくれないの?」
「出来るわけ無いだろう!
調子に乗るな!
だいたいお前はSランク冒険者の立場を何だと・・・」
そのまま少しギルド長に説教された。
まあ、知れ渡ったら外聞が悪いのは間違いない。
そもそも私には敵が多いのだ。
本部内にもいる敵にいらぬ口実を与えかねない。
なんせ相手が未成年かつ自分の娘として育てていた子達だ。
日本なら犯罪者として扱われる事だろう。
単にこの世界にその法律が無いだけで、
普通に認識は変わらない。
まあ、成人年齢が十五歳なのでそこだけは違うけど。
まあ、ともかく、
一般社会から見たら私は犯罪者同然だ。
しかもギルドの冒険者だ。
雇用先の幹部が認めてくれるわけがない。
個人的な感情はともかくとして。
ギルド長はさんざん叱りつけたあと、
一言だけ付け足した。
「まあ、ともかく幸せにやれ」
やっぱりお父さんはツンデレさんだ。
思わずエイミーと一緒に吹き出して、
ギルド長に追われるようにギルドを後にした。




