17-11.成長
「さてアルカ。
少し話をしましょう」
自宅に転移して落ち着くなり、
セレネはそう切り出した。
「待って!私まだ何もやってない!
何で!?今度は一体何でなの!?」
「そうじゃないわ。
別にお説教じゃないの。
ただの忠告よ」
『やはりアルカと私の相性は最高ですね。
狼狽え方までそっくりです!待って!私まだ何も』
「ニクスはまたお仕置きですか・・・
少し可愛そうになってきました」
「言葉遣い直すって約束したのだけど、
中々直らないのよね。
もっとニクスとも近づきたいのだけど」
「そんな理由だったの!?
本当にやりすぎないであげてね?
なんだかアルカが変わってしまったようで嫌よ私」
「大丈夫よ。
何度も言うけど、セレネにこんな事しないしできないわ。
これはあくまでニクスに対する想いをぶつけてあげているだけなの。
セレネにもノアちゃんにもあんな嫌悪感は持てないもの」
「わかった。もう言わない。
ニクスの自業自得なのでしょう。
そう思うことにするわ」
「諦めましたね?
まあ、私も同じ気持ちですが」
「それより今はレーネの事よ。
アルカよく聞きなさい。
レーネは既にアルカに恋しているわ」
「?・・・なんで?」
「「アルカだからじゃない?」」
「いやそんな洗脳装置でもあるまいし」
「似たようなものよ」
「レーネの感情は既に育っています。
まあ、幸い本人は気付いていないようですが」
「もしかしてノアちゃん力を使って見たの?」
「ええ。正確に把握しておきたかったので」
「でもそれ私以外に使えないって・・・」
「何時の話をしているんですか?
一年前から成長していないわけがないでしょう」
「さすノア」
「なんて?」
「いえ。ノアちゃんはやっぱり凄いなって。
さすが私のノアちゃんだわ」
「ふふん!私はアルカの一番ですから。
これくらい当然です!」
どやノア可愛い。
「私だって負けてないわ!
そんな力使わなくてもレーネの気持ちに気付いたもの」
「セレネも凄い!
さすが私のセレネ!
愛してる!」
「えへへ」
てれセレ可愛い。
「ズルいです!
私にも言って下さい!」
「もちろん!ノアちゃんも愛してるわ!」
「アルカぁ!」
「ほら、まだおっぱじめない。
話が終わってないわ」
「そうですね。取り乱しました」
「ともかく、既にレーネにはアルカへの想いが芽生えています。
きっとこの一年アルカに会いたいと思い続けていたのでしょう」
「でも、レーネと一番仲良くしていたのはセレネやリヴィじゃない。
私とノアちゃんはそこまででも無かったと思うのだけど」
「そこはまあ、アルカだからとしか」
「アルカだし」
「だからなんでなのよ!?」
「真面目な話をするとアルカはレーネの願いを直接叶えたのです。
ある意味、おとぎ話の人化の宝玉が人の姿で現れたとも言えるのです。
レーネは宝玉に思いを馳せていました。
きっとその気持も形を変えて引き継がれたのでしょう。
最初はただの憧れだったのかもしれません。
けれど、それを一年も想い続けていたのです。
本当にアルカとの出会いは嬉かったのでしょう。
一年間変わらずに抱き続ける程、
いえ、それ以上の気持ちに変わってしまうほど、
あの数日間はレーネにとって大きなものだったのです」
「まあ、つまりレーネの気持ちを知って、
ちゃんと考えてねって話よ。
アルカは気付いていないようだから」
「どの様な形であれ、
大きな力は人を惹きつけます。
アリアだって似たような想いを抱いているでしょう。
アルカはある意味では力そのものなのです。
力に惹きつけられるのは悪いことだけではないのです。
憧れも欲望も根幹は同じです。
だから簡単に変質してしまうのです」
「レーネはまだ幼いわ。
年齢は私達の一つ下だけど、
そんな事では勿論なくて、
あの閉じられた国での生活はレーネの成長に蓋をしてしまった。
ある意味ではリヴィとすらそう大差は無いのでしょう。
けれど、同時に姫としての自覚もある。
その部分だけは年齢以上にしっかりしている。
だからこそ余計に苦しむ事になるのでしょう。
アルカはそれをわかってあげてね?
ちゃんと一緒に考えてあげてね?
勿論私達だって協力するわ。
けれど、レーネの問題はきっと私達では想像もつかないでしょう。
国のために子を成すなんて考え方を当たり前だと思っているのだから。
きっと常識レベルで違うはずよ。
その差で苦しむことになるのは考えられる事だわ。
だからレーネの事をもっとよく知ってあげてほしいの」
「わかった。
二人ともありがとう。
二人の忠告は受け入れるわ。
私がどうして人を惹きつけてしまうのかも何となくわかったわ。
それに私の思っていた以上に状況は進んでいるのだとも理解した。
だから二人もよろしくね。
私の足りない所は助けてもらうからね」
「「もちろん!」」




