17-5.監禁
「そろそろ出たいんだけど。
もう満足したでしょ?」
「何言ってるんですか!?
好きなだけ甘えさせてくれるって言ったじゃないですか!」
「いや、けどここに来てから何日経ったのよ・・・
こんな真っ暗闇じゃ全然わからないわ」
好きなだけは言葉を間違えたわね・・・・
神様の時間間隔だと数年は平気で過ぎてしまいそう。
「ならもう少し上に行きますか?
ここよりも明るいですよ!」
「上?」
「意識の表層です。
表層に近づくにつれて時間の差は無くなってしまいますけど」
「?
なら何でこんな所にいるの?」
「?
ああ。今ここにいるのはアルカと少しでも長く一緒にいるためですよ?
普段は私も表層にいます。
時間のズレも無くなりますし、
ここでは深すぎてアルカの心も見えませんしね」
「・・・それを早く言ってよ!
私はこんな暗闇に一人でいるんだと思ったから!」
「そんな事言われても・・・
今言ったようにここではアルカの心が見えませんからわかりませんよ」
「ともかく一度戻りましょう。
また今度来てあげるから。
神様と人間の感覚は違うの。
こんなに長くいたら不安になってしまうわ」
「嫌です!約束しました!
それにアルカはもう寿命が無いんですよ!
これくらいで音を上げてたら持ちませんよ!」
「え?無いの寿命?
せいぜい数千年かと思ってたんだけど」
「ありませんよ!
アルカがそう望んだんじゃないですか!」
「え!?私はただルネルみたいにって・・・
え?そういう事なの!?」
「ええ。あの方に寿命などありません。
あの方はエルフの祖となった種族の唯一の生き残りです。
わかりやすく言えばハイエルフと言ったところでしょうか。
人より神に近い存在なのです。
まあ、それでもあの力は異常なのですが」
「なんで他の人はいないの?
寿命なんて無いんでしょ?」
「・・・全員が自ら命を絶ちました。
長過ぎる生に心が耐えきれなかったのです」
「・・・」
私はルネルに・・・
なんて酷いことをしたのだろう。
またトラウマを弄くり回していたのか。
ヘパス爺さんの時と同じことを繰り返していたのね・・・
「アルカ。どうか落ち着いて下さい。
大丈夫です。あの方はそれでもアルカを受け入れてくれたのです。
それに、アルカが選ばずとも私が同じことをしました。
結果は変わらなかったのです。
だからアルカ。どうか・・・」
ニクスが私を抱きしめる。
長い事そうしてくれていた。
「アルカ。これはアドバイスです。
私の我儘でもあります。
少しここで暮らしてみませんか?
何年だって外では一瞬です。
アルカの心が持つように少しずつ慣らしていきませんか?」
「これから先、本当に長い時を生きることになります。
その事を少しでも実感してみるべきかもしれません。
少しだけアルカは甘く見ていたように見えます」
「安心してください。
どうしても耐えられないようなら、
アルカもノアもセレネも私が助けてあげます。
人間の生に戻してあげます」
「あの二人に苦しみを味合わせる前にアルカが試してみませんか?
私が側にいる間にそうしてみませんか?
そのついでで良いですから私の側にいてくれませんか?」
「わかった。少しだけお願いするわ。
ニクスも側で支えてくれるのでしょう?」
「はい。もちろんです。
私に任せて下さい!
伊達にこの世界を見守り続けてはいません!
何も出来ずに耐え続ける事だって何度もありました!
この役目を私以上に果たせる者などいないでしょう!」
「それは本当に自慢して良いことなの?」
「アルカの参考になるのなら私の苦しみにも意味が生まれます!」
「・・・あなたも中々愛が重いわね」
「今更何を言っているのですか?
私をヤンデレだと言ったのはアルカですよ?
アルカが振り向くまで開放されませんからね?」
「・・・やっぱり帰ろうかしら」
「ダメです!もう帰しません!
アルカからキスしてくれるまでは出られないんです!」
「心を無理やり支配するのは邪神と同じになっちゃうわよ?」
「結構です。私はアルカに邪な想いを抱いている神ですから!」
なんか何言ってもダメそう・・・
判断を誤った?
そうして、私とニクスの二人きりの生活が始まった。
まあ、この空間には何も無いし、
お腹が空くわけでもない。
ただひたすら話して眠って抱き合っているだけだ。
そんな生活も、いつの間にか数年が経過していた。