16-20.パートナー会議
「さて、ニクス出して」
「もう終わったんじゃないの!?」
「ここからは真面目な話よ。
いえ、言い方が悪かったわ。
さっきも別に遊んでいたわけではないのだから。
それは、ともかく」
「まだニクスの言い分は聞いていないわ。
アルカが同情してしまった結果、
その感情を勝手に覗き込んで惚れてしまったという、
アルカの主張はわかったわ。
確かにそれでは防ぎようが無かったのでしょう」
「それじゃあ!」
「それはそれよ。
私達はパートナーとして、
ちゃんと知っておく必要があるの。
ニクスを敵として見る必要があるのか。
警戒にすら値しないのか」
「アルカの言い分は、
ただ、孤独な幼子が、
久しぶりに優しくされて舞い上がっているようだって事だけど、
何故そんな簡単に信用できるの?
相手は何千年も生きているのよ?
あなたは手玉に取られている可能性だってあるの。
相手の事を言葉だけで信用してはダメよ?
特に、姿も見せられないような相手はね」
「そんなはず・・・」
「アルカにその判断は無理よ。
だから私達が見極めるの。
安心して。アルカに何も言わず変なことはしないから」
「ニクスもそれでいいでしょ?
あなたが本当にアルカの事が好きなのなら、
私達の理解を得るのは必要なことよ?
そうでなければ絶対にアルカは納得しないもの」
「セレネ・・・本当に信じてくれてたんだ・・・」
『もちろん構いません。
望むところです』
「了承みたいね。
さあ、アルカ。
後はあなただけよ」
「わかった」
『アルカ。
力を抜いて。前回と同じです。
私に体を委ねて下さい』
言われた通り力を抜くと、
意識が遠のくのを感じる。
そうして、完全に途切れた。
「お久しぶりです。セレネ
そして、ノア。
先程は失礼致しました。
お話する機会を頂けて感謝します」
「正直出来るのならもっと早く出てきてほしかったわ。
アルカの事でなくとも、
聞きたいことは山程あるのだから」
「それはともかく、
アルカは今どうなってるの?
何で姿が変わっているの?」
「この姿は幻影とお考え下さい。
アルカの体を依代に、
私の意識の一部と姿を映し出しております」
「そして、アルカの意識は今は眠っています。
ここで話した事は伝わりません。
その方が良いのでしょう?」
「ええ。それで良いわ。
アルカにはあまり聞かれたくは無いもの」
「女神ニクス。
あなたは本当にアルカの話すニクスなのですか?
聞いていた印象とも、
先程まで、時折アルカから漏れ出ていた気配とも違い過ぎます。
あなたはアルカを騙しているのですか?」
「いいえ。ノア。
そうではありません。
アルカと話しをする時の私も、
今の私も同じ存在です」
「さっきのあなたからは常にはしゃいでいるような印象を受けたわ。
けれど、今のあなたも、
以前神殿で見かけたあなたからもそんなものは感じられない。
なにか妙な緊張感の様な、迫力の様な物を感じる。
こっちなら神だと言われても信じられるわね」
「そうでしょうね。
まさしくその通りなのです。
どちらも間違いなく私なのですが、
少しだけ意識が異なるのです」
「何で今はこっちなの?
私達はアルカのパートナーとして、
あなたの話しを聞こうとしているのよ?
アルカに惚れている方じゃなきゃ意味ないじゃない」
「ご安心を。それもまた私なのです。
私は間違いなくアルカの事を愛しく思っております。
ただ、今の私がアルカ以外と直接お話するには必要なことなのです」
「回りくどい言い方ばかりしないで。
もう少しハッキリ言えないの?」
「そうですね。
一言で言うならば、
今の私は仕事モードといったところでしょうか。
要するに極度の人見知りみたいなものです」
「「あ~。アルカと同じ・・・めんどくさ!!!」」
「うっそでしょ!?
何言い繕ってるのよ!
あんたただの人見知りなんでしょ!
何がみたいなものです。よ!
何が仕事モードよ!
カッコつけてるんじゃ無いわよ!
本当に腹割って話す気あるの!?」
「正直、ちょっとガッカリです。
神ってもっと凄いのかと思ってました」
「散々な言われようですね・・・」
「今ちょっと気配が緩みましたね。
緊張しているだけでこの圧力を放てるのは神だからでしょうか」
「力の無駄遣いすぎでしょ!」