16-18.堕女神
「本当に着けていてはだめかしら」
「当たり前だろう。
君は仮にも聖女だぞ?
どう考えても駄目に決まっているだろうが」
「それはわかるのだけど・・・」
聖女はアイドルか何かなの?
『聖女は神のものというのがこの世界の認識ですから。
セレネも信仰集めの為に、
それすら利用してきたところもあります。
その辺りを踏まえればあの方の言い分はもっともでしょう』
『まあ、安心して下さい。
別に私はセレネを自分の物だなんて思っていません。
セレネはアルカのものです。
昨晩もお楽しみでしたものね』
『そんなカマかけには乗らないわよ。
というか私の心は見えているのでしょう?
なら必要ないじゃない』
『いいえ。
アルカの事でも見えているのは表層の意識のみです。
だから言葉で思考を誘導する事に意味はあるのです。
どうやら本当に手を出さなかったようですね。
仲良く話をしている間に寝落ちしたようです。
アルカにはガッカリです』
『私の記憶を掘り起こしてまで覗きたかったの?
あまりいい趣味とは言えないわよ?』
『うるさいです。
私は子供じゃないんです。
好きな人の事くらい興味を持って当然でしょ!』
『随分ハッキリ言うわね・・・』
『アルカのせいです!
アルカがスケコマしたんでしょ!』
『チョロすぎるでしょ・・・』
『はいはいそうですよ。
私はチョロくて残念な女神です。
特技は災いを振りまくこと。
好きな人は二股ロリコンやろうです』
『なんかごめんね・・・』
『迎えに来てくれるのでしょう?
ちゃんとその後の責任も取ってもらいますからね!』
『ちょっと今その話は許してくれないかしら。
流石に、プロポーズの翌日にそんな約束は出来ないの』
『今更何を言っているんですか!
あんな事考えておいて!
私の事堕としておいて!
今更逃げられると思ってるんですか!?
こっちは腐っても女神ですよ!?
本気にさせたら逃げられるわけがないでしょ!』
えぇ・・・
『何が飴細工ですか!
飴細工はアルカの思考の方です!
甘ったるいことばかり考えるくせに、
すぐパリパリ割れて砕け散ってしまう所なんてアルカにぴったりです!
アルカにはもう少し一貫性を求めます!
アルカの方こそ一回溶かして固めるべきです!
折れない、砕けない強い信念を持つべきです!』
なんかガチ説教が始まった・・・
さっき突然愛の告白してきたばかりなのに。
少し情緒不安定なのかしら・・・
というかあの時も聞いていたのね・・・
そっかぁ。私ニクスの攻略完了してたのかぁ。
ちょっとこのパターンは考えていなかったわ。
指輪まで用意しておいてあれだけど。
『アルカ!嬉しいです!
本当にくれるつもりなんですね!』
やっべ。
バレた・・・
『いえ、それは・・・
そういう気持ちで用意したんじゃなくて・・・』
『わかっています!
同情しているだけなのも伝わっています!
けれど、そんな事は問題じゃありません!
今度は私が口説き落としてみせます!
チャンスはいくらでもあります!
もうアルカは私から逃げられないのです!』
『もう少しメンタル弱いと思ってたわ・・・』
『何言ってるんですか?
伊達に何千年もこの世界を見守ってきたわけじゃありませんよ?
一度決めた目的のためならどこまででも頑張れます』
そうだった・・・
この子変なメンタルしてるんだった。
表層はポロポロ崩れるくせに、
芯の部分だけは謎の超合金で出来てるのよね・・・
『お互い寿命の心配はいりません。
万が一があってもちゃんと転生させてあげます!
世界の果てまでご一緒しましょう!』
・・・やばいのに目を付けられてない?
というか、この世界、転生とかあるの?
しかもニクスが自由に出来るの?
ヤンデレロリ神様とか属性過多じゃない?
そこにうっかりと超合金おからメンタルも付くの?
どこの萌えキャラなのよ・・・
『アルカのご希望があれば他にも付けましょうか?
語尾でも変えてみます?』
『いえ、そのままでお願い』
『かしこまりました!
気が変わったら何時でも言ってくださいね!』
「もう浮気?」
「なんでよ!」
「なんかニクスから嬉しそうな気配がするわよ?」
「なんでわかるの!?」
「アルカぁ?」
「違う!そういう意味じゃなくて!」
『ふふん!セレネにだって負けませんからね!』
「なんかイラっときたんだけど。
アルカ少し話をしましょう。
大丈夫。何があっても指輪は外さないわ。
幸いこれなら少し厚手の手袋しておけば目立たないし」
「信じてるから!私のことも信じて!」
「もちろん。信じてるってば。
ちゃんと話をすればわかってくれるってね」
「それ今は信じてないって事じゃん!」
「ほら、行くわよアルカ。
アルカがどれだけ情けなくても見捨てないって誓ったでしょ」
「なんで情けないことしてるって確信してるの~!」
セレネに引きずられて行った先で、
ノアちゃんと一緒に詰められた私は、
ニクスとの事を洗いざらい吐かされる事になった。
ニクスの為に用意した指輪の事以外。