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16-15.指輪

マズい・・・緊張してきた。



おかしい。

ついさっきまで楽しくて仕方がなかったのだ。


今は晩餐の準備をしながら、

この後の流れを考えていた。


詳細をイメージするに従い、

段々と不安が大きくなっていく。


別に二人に拒絶されると思っているわけじゃない。

喜んで受け取ってくれると確信している。


けれど、それでも何故か不安が湧き出してくる。



なんで?

今の今までこんな事考えもしなかったのに。


どういう事なの?


私は段々混乱していく。


心細くてたまらない。

ニクスに話しを聞いて欲しくなる。



マズいマズいマズい。


こんな状況でいい雰囲気なんか作れるわけがない。


予定を延期するべきかしら。


けど、魔力の事を考えたら、

次はまた一ヶ月以上後になるだろう。


今日のための料理だっていっぱい準備してきた。

頑張ってケーキだって焼いたのだ。


たった今、食卓も整え終わった。

クロスを敷いて、用意しておいた花を飾った。

アロマキャンドルまで設置した。


食器も並べ終わった。

今日のためにデザインにも拘って新しく用意した。



あとは料理を収納から出して並べるだけだ。


キャンドルに火を灯して、二人を招くだけだ。



そうすればもう、運命の時が訪れる。


今ならまだ・・・





「アルカ」


いつの間にか背後に居たセレネが私を抱きしめる。

考えに集中しすぎて全然気付かなかった。



「なんだかこんな事じゃないかと思っていたのよ。

アルカは本当に土壇場になるまでよく考えないのだもの」


「セレネ?ノアちゃんは?」


「ノアなら外してもらったわ。

食後のデザートに美味しいフルーツでもあればアルカも喜ぶかも?

なんて言ったら森に駆け出して行ってしまったの」


「こんな所に都合よくあるかしら」


「さあ?」


「セレネひどい」


少し笑ってしまう。



「大丈夫よ。安心して。

アルカが一人で頑張らなくて良いの。

私達は三人で一緒によ」


「ノアちゃんは除け者にしちゃったのに?」


「そんなひどい言い方しなくても良いじゃない。

アルカがかっこ悪いところ見せたくないのだろうと思って気を使ったのに」


「そうよね。ごめん。

セレネありがとう。

ノアちゃんにもお礼言っておかなきゃ。

きっとセレネの思惑も何となく察した上で行ってくれたのでしょうし」


「わかってるじゃない。

なら大丈夫よね?」


「うん。もう大丈夫。

三人で楽しみましょう。

美味しいものいっぱい用意してあるんだから」


「期待してる」


セレネはそう言って立ち去った。

ノアちゃんを迎えに行ったのだろう。




私ももう大丈夫だ。

いつもいつも二人に助けられっぱなしだ。


けれど、これからもそうやって生きていこう。

三人で助け合って。


もしかしたら、指輪だって三人で準備しても良かったのかもしれない。

サプライズだなんて拘らず、

二人の意見を聞きながら用意するべきだったのかもしれない。

もしかしたら、その方が喜んでくれたのかもしれない。



けど、もう立ち止まるのは無しだ。

後悔しながら渡したくなんてない。


本当に良いものが準備できたのだから。

絶対に二人も喜んでくれる。



私は気持ちを切り替えて料理を並べていく。


丁度並べ終わるタイミングで、

二人も部屋に入ってきた。


やっぱり全部バレバレなのだろう。


けど、私達はそれで良い。

セレネはそう言ってくれたのだ。

ノアちゃんも同意してくれたのだ。




私は椅子を引いて、二人をエスコートする。


見たことがない料理に目を輝かせるノアちゃん。

今日は醤油も使った大盤振る舞いだ。

日本食もいくつか作ってある。


料理だけでなく、

テーブルに並べられた花や食器、キャンドル等も見て、

私の本気度に嬉しそうに微笑むセレネ。



そうして始まった晩餐には、

先程の緊張感など欠片も無かった。

二人のお陰だ。



良い雰囲気で食事が落ち着いた所で、

私は遂に切り出す。

また少し、緊張感が湧いてきたけど、

なんだか逆に心地が良いくらいだ。



「二人に受け取ってほしいものがあるの」


私はそう言って、二つの箱を取り出す。



「これは?」


ノアちゃんはわかっていないようだ。



「開けて良い?」


セレネは待ち切れないって顔だ。



「もちろん。

今すぐに開けてほしいわ。

ノアちゃんも開けてみたらわかるから」



箱を開けて、指輪を見た二人。


そのまま硬直するノアちゃんと、

うっとりとしたため息を漏らすセレネ。


とりあえずセレネのお眼鏡には叶ったようだ。


ノアちゃんはどっちだろう。

雰囲気は察しているのだろうけど、

込められた意味がわかっていないのだろうか。

それとも、わかった上でフリーズしているのだろうか。



「二人にはずっと側にいて欲しいの。

これはその証よ。

出来れば肌身放さず身につけておいて欲しいな」


受け取ってくれる?なんて聞いたりはしない。

今更私達にそんな言葉は必要ない。




「アルカに着けてほしいわ」


「折角なら先に着けてもらった方が一番って事にしましょうか」


「ノア!良い考えね!

そうよね!そうしましょう!

意味を考えたら当然よね!」



ノアちゃんも意味はわかっていたようだ。



え!?


私は遅れて言われた言葉を理解する。

サプライズ返しかな?



じゃなくて!

セレネも乗らないで!

協力してくれるんじゃなかったの!?


折角ここまで良い流れにできたのに!


無茶言わないでよ!!!

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