16-14.決戦の場
指輪の作成を依頼してから二ヶ月程が経過した。
結局、十分な魔力を貯めるのにそれだけの時間が必要だった。
その間にセレネの誕生日どころか、
リヴィの誕生日も過ぎてしまった。
まあ、セレネの誕生日に指輪を贈るのは、
なんだかノアちゃんに悪い気もするから、
かえって良かったのかもしれない。
ここまで時間がかかったのは、
セレネの誕生日プレゼントに用意するチョーカーが
この町では見つからなかった事も関係した。
やはりこの世界では一般的ではないようだ。
手に入れるためには転移する必要があった。
複数回は行けないので、
爺さんのところに製作を依頼せず、
以前ノアちゃんのチョーカーを購入した町に転移して購入してきた。
今回はリボンのついた可愛らしいものだ。
受け取ったセレネは、
以前ノアちゃんにしたように、
私の手でつけて欲しいと頼んできた。
何だか少し妙な気持ちが湧いてくる。
ノアちゃんの時はこんな感情は沸かなかったのに。
たぶんセレネのせいだ。
セレネがそんな感情も抱いていたから引きずられたのだろう。
そういえば、
神殿で二人からイジメられた仕返しがまだだった。
拘束・・・・
売ってるのかな?
本来の用途ならいくらでもありそうだけど・・・
流石にちょっと違う。
かと言って、
爺さんに頼むのは流石にキツイ。
そのうち良いものがあったら確保しておこう。
ともかく、今は指輪だ。
早く受け取りに行くとしよう。
『少しの間見るのを止めることって出来る?』
『え!?
あるかぁ・・・』
『大丈夫だから!
そんな一瞬で落ち込まないで!
別に嫌いになんてなってないのはわかるでしょ?
ただ、ノアちゃんとセレネに指輪を贈る場面を見せるのは悪いかなって思っただけだから』
『・・・わかりました。
今日一日だけ我慢します』
『ごめんね。後でいっぱいお話しましょう』
『はい。待ってます』
ニクスとの繋がりが途絶えた。
私は爺さんの店に転移する。
「これで良いか?」
早速、爺さんは三つの指輪を出してきた。
相変わらず素晴らしい腕だ。
文句のつけようもない。
私もノアちゃん程では無いが、
普段、装飾品はあまりつけない。
けれど、この指輪は違う。
見ただけで、ずっと付けていたいと思えるものだ。
思わず指輪に見とれていると、
ふと思いつく。
「もう一つ作って貰っても良い?
サイズはノアちゃん達のと同じでいいから」
「予備か?
そんな心配せんでも十分に頑丈に作ってあるぞ?」
「勿論疑ってなんかいないわ。
そうじゃなくて、万が一、
二人が無くしたりでもしたらとっても落ち込むと思うの。
だから予備を収納空間に入れておこうかなって」
「なら必要なのはお前さんのサイズじゃろうが」
「どういう意味よ!!
もう。私は大丈夫よ。
たとえ無くしても魔法で見つけられるだろうから」
「なるほどのう。
また別の娘にでもちょっかいかけるつもりかと思ったじゃろうが」
「・・・しないわよ!」
「・・・まあ良いわい。
それだけ気に入ってくれたのじゃろう」
「ありがとう。お願いね」
サイズ合うかしら。
今度は、
ノアちゃんとセレネを連れて、
別荘に転移してきた。
何だか良い感じの場所が思いつかなかったのだ。
二人に共通していて、
楽しい思い出のある場所が良いと考えた。
本当は二人から告白された、
町に近い方の拠点にしようかとも思ったのだけど、
あちらは引き払ってしまったのだ。
まあ、あの時はまだテントだったけど。
地下の町とその地上に作った町から
多少離れているとはいえ、
一応徒歩圏内だったので、
魔物除け魔道具を置いて放置するわけにはいかなかった。
管理者のいない状態で放置して盗まれるわけにはいかない。
なので、あそこに建てた家は地形操作魔法と収納魔法の合せ技で丸ごと収納空間にしまってある。
まだ出番は無いけど、どこかに移設しても良い。
まあ、魔力が完全に戻るまでは到底無理だけど。
そんなこんなで、
決戦の場を別荘に定めた。
今日は久々に掃除をしておこうと言って誘い出す事にした。
セレネには概ねバレているようだけど、
それでもサプライズの努力は必要だ。
セレネは特に拘るはずだ。
ノアちゃんはどこでも喜んでくれるだろう。
ルネルとグリアにも頼んで、
終日休みにしてもらっている。
軽く掃除を終えたら、
また滝に遊びに行こう。
最後は私の準備した食事で饗すつもりだ。
一日どこかでデートでも良かったのだけど、
妙なアクシデントにでも巻き込まれたらタイミングを逃すだろう。
絶対に成功させたいのだ。
そうして良いところで・・・
ふふふ!なんて素晴らしい日なのだろう!
もうニヤニヤが止まらない!
「アルカ・・・」
あかん。
セレネが不安になってる。
私の浮かれっぷりを見て、
その調子でこの後大丈夫なの?って目で訴えている。
やっぱり私の目論見などバレてしまっているようだ。
どうしよう・・・
今から考え直すべきかしら。
なにか追加のサプライズを用意するべき?
それとも雰囲気作りを頑張ってゴリ押すべき?
今はニクスとは繋がってないから相談相手もいない。
まあ、こんな事相談したらまた泣くだろうけど。
大丈夫。
準備はしっかりしてきたのだから。
多少の失態で今更怖気付いている場合ではない。
自分を信じてやり遂げよう!