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16-11.転移

訓練を開始してから半年程経過した。



神術の習得はある程度進んだのだが、

そもそもの問題があった。


神術はあくまでも学問だ。

魔術や神術は数式に近い。


現状、

転移先は座標で指定できなければならない。


私は今まで、イメージした魔法が使える能力、

これの補助を受けて転移先を指定していた。


けれど、現在のグリアの知識では

イメージした場所に転移するなんて曖昧な条件では使えないのだ。


座標、つまり数字で場所の指定が出来ないといけない。



ルネルはこれにも協力はしてくれなかった。

そもそも、ルネルが転移を教えてくれた事などない。

瞬間転移については私が勝手に読み取っただけだ。


多分、ルネルは転移自体を広めたく無いのだろう。

そのため、グリアに教えるのは拒否したようだ。



ニクスもこれについてはまだ教えてくれなかった。

ニクスの場合はまだ私の技術が足りていないと言う理由だ。


私に教える場合だけ災い回避の抜け道があるらしい。

私の体を操作して神力を使ったような方法だ。

私はそれを理解出来るだけの感覚が必要になる。



ニクスがグリアに技術だけを教えるのはまた別の問題があるらしい。

というか、ニクスが私に口頭で教える場合にと言うべきか。

それをすると権能の範疇になってしまうようだ。

つまり災いが起こる。


しかも世界を変えかねない高度な技術を伝えるという事はそれ相応の代償が必要となる。

下手するとそれで世界を滅ぼしかねないらしい。


ニクスの場合はうっかりミスも有り得るので絶対に止めておこう。




グリアも転移魔法自体は使えるので、

それを応用して転移神術も生み出してはいたのだが、

同様の理由で移動先を自由に指定できない。


グリアの転移魔法は精々教会内で転移する程度にしか使えていない。


地下の町等、離れた場所への転移は座標の特定がまだ出来ていないからだ。



収納魔法も同様だ。


未だ私の収納空間には繋げられていない。


神術で以前のような力を取り戻すのはまだ難しいようだ。







その代わり、

最近ほんの少し魔力が引き出せるようになってきた。

けれど、未だ微々たるものだ。


私は以前セレネに教えてもらった神力の滞留技術を習得した。



神力は魔力に強いという特性がある。

これは、厳密には神力は魔力を通しづらいからだ。


つまり、神力で包めば魔力を貯めておけるのだ。



最近の私は、

常に周囲に球体状の神力を浮かべている。

そして、その中に自身の魔力を貯め込むようにしていた。



ようは魔力の貯金箱だ。

毎日コツコツ貯めていく事で、

遂に何度か転移出来るだけの魔力を貯める事に成功したのだ。


本当は収納空間から杖を取り出せばてっとり早いのだけど、

ルネルにこれ以上悪印象を持ってほしくないので杖は封印中だ。


本当に誰かの命がかかっている土壇場でもない限り、

こっそり隠れてだって使う気は無い。

これ以上信頼を裏切るわけにはいかない。







久々に転移を使えるようになった私は、

まずギルド長ズへの報告を済ませてきた。


久しぶりに顔を出した私に皆歓迎してくれた。

今度は全員で来れるようもっと魔力を貯めてこよう。


ノアちゃん達も皆に会いたいだろうし。



次にドワーフのへパス爺さんの店に向かった。



「指輪じゃと?」


私は久々の挨拶を済ませて、

爺さんに秘密の依頼をしていた。



「素材は最高級の物でお願い。

とにかく長持ちするものが良いわ。

デザインは爺さんのセンスなら文句なんてない。

同じものを三つ作って欲しいの。

サイズはノアちゃんのが二つと、私のが一つでね。

ノアちゃんのサイズは多分最後に見た時から変わってないから安心して」


「お前さん開き直っとるな?

しかもノアだけでなくセレネにまで手を出しおったのか」


「まあ、そういう事よ。

あと、私達不老魔法を使って寿命が千年単位で伸びてるから、

それくらい保つのが良いのだけど」


「はあ。まったく・・・」


爺さんは呆れながらも指輪の製作依頼を受けてくれた。

かなり無茶苦茶な事を言ったけど、

それ以上は聞いてこなかった。


流石にツッコミきれなかったのかもしれない。



「ついでに杖も置いていけ。

たまにはメンテナンスしといてやる」


一瞬悩んだけど、お願いする事にした。


ルネルの手前、

もう使うつもりは無いのだけど、

それとこれとは別問題だろう。

緊急時に手札の有る無しは大きい。

少なくとも、ノアちゃんとセレネの命がかかっている状況で使わない選択は出来ない。


私は素直に杖を取り出して、

爺さんに差し出す。


少し魔力を予定外に消耗してしまったが、

まだギリギリ問題ないだろう。


杖を受け取った爺さんはまた呆れてしまった。


杖は限界寸前だったらしい。


そういえば、巨大スライムモドキと戦った時に、

かなり無茶をさせたきり、

収納空間に放りっぱなしだった・・・



爺さんに言われなかったらマズイことになるところだった・・・



『その杖はもう使わないで下さい』


『突然どうしたの?』


『その技術は許可できません』


『複合魔石の事?』


『そうです』


『わかった。爺さんとも色々あるから、

修理だけはしてもらうけど、

その後は収納空間に封印しておくわ』


『・・・まあそれで良いでしょう。

どの道私はもうアルカから離れませんから。

もし使おうとしたら止めます』


『え!?一生?』


『そうですよ?

なんで今さら驚いているんですか?』


『ニクスも指輪いる?』


『・・・それはプロポーズしてくれているんですか?』


『いえ、何となく聞いてみただけ』


『じゃあいりません。

どの道受け取れませんし』


『あの神殿でなら会えるんじゃないの?』


『あれはホログラムのようなものです。

私の実体ではありません』


『そっか残念ね』


『・・・アルカのバカ。スケコマシ』


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