16-9.圧縮
本格的な訓練に入る前に、
私はルネルとグリアの前で寝転がって、
装置に繋がれていた。
『バッタの怪人にでもされそうですね』
『特撮も好きなの?』
ニクスは意外と多趣味だった。
まあ、時間だけはいっぱいあるのだろうし。
何も出来ず、暇だったのだろうし。
でも、お姉ちゃんバッタのはちょっとわからないわ。
流石に世代じゃないもの。
私の時は何だったかしら。
魔法使いのやつかな?
流石にJC時代は暇つぶし程度にしか見てないから詳しくないけど。
何で見たことあるのかって?
ボッチにテレビは必需品だったもの。
ニチアサはプリティなやつもやってたし。
『スマイルが好きでした』
『私も!』
「塞がっている?
おそらく無くなったわけでは無いようだね」
「神力が強すぎるのう。
埋もれてしまっておるのじゃろう」
「しかもかなり強引に詰め込まれているようだ」
「お主よく生きとるのう」
『ニクス?』
『・・・すみません』
二人に解析されていき、
ニクスすらわかっていなかった真実が解き明かされていく。
どうやら、私の体に無理やり大きすぎる力を詰め込んでしまったせいで、
中の魔力ごと、魔力を引き出す部分が潰れてしまっているようだ。
元々、人間どころか、
一つの生命体としては多すぎる魔力量だったらしく、
私の体に新たな力を入れるスペースは殆ど残っていなかった。
その上で、聖女をも上回る力を詰め込んでしまった事で、
内部の力が圧縮されていった。
魔力だけでなく、神力の一部も同様だ。
今は超圧縮された魔力を
これまた圧縮された神力が覆い隠しており、
私が扱えている神力は、
そのさらに上の圧縮されきっていないごく一部だという。
その圧縮率はルネルですら、
自力では見通せない程だと言う。
ルネルの力とグリアの発明により、
少しずつ掘り進めて、
内部の状況に予測をつけたらしい。
人間爆弾?
私が破裂したら、
滅びたドワーフの国を吹き飛ばした時以上の爆発が起きる?
二人がおっかない事を話し合っている。
神力を使いこなして自分の中の力を上手く動かしてやる必要があるという。
力の循環?を続ける必要があるそうだ。
それも、
少しずつ、
氷を溶かしていくように。
表面からゆっくりと開放していき、
その上で、自らの意思で、
再度力の圧縮も行わなければならない。
そうして、体の中を整理して、
力を引き出す為の道を作る必要があるという。
全ての力を使いこなすのはそれからだ。
いずれは、私の器そのものも大きくしなければいけないそうだ。
『どうにかできないの?
前に私の体で神力の実践してくれたみたいに』
『今下手に私が手を加えると破裂するかも?』
あの時もやばかったんかい!!
『・・・まずは自分でやってみるわ』
『すみません!すみません!すみません!』
私からはニクスの姿は見えないけど、
必死に土下座を繰り返すニクスを想像してしまった。
『いずれ元の力を取り戻せるって言っていたのは?』
『・・・話せません』
禁則事項らしい。
未来予知の力でもあるのだろうか。
『・・・』
『大丈夫よ。無理に聞いたりしないわ。
それに、ルネルとグリアが協力してくれるのだもの。
絶対に上手く行くとは思わない?』
『そうですね!
この方々なら心強いです!』
それからは、
ルネルの立てたプランを元に、
私は訓練を繰り返した。
ルネルは私が爆弾と化している事を知っても、
躊躇いなく転がしまくった。
「安心せい。加減は心得ておる」
心強いなぁ~
はあ・・・
まあ、結局のところ、
私が使いこなせる力を増やすしか無い。
ルネルの強化合宿はその目的なら最適だろう。
なんたって、先日の数日間のシゴキで、
それまでの一ヶ月以上の自主訓練を軽く倍は上回る程に成長したのだから。
文句を言わずに頑張ろう。
これ以上ルネルに失望されたくはない。
ノアちゃんとセレネも一緒に参加してくれている。
ニクスも見守ってくれている。
リヴィの応援だってある。
グリアもいっぱい協力してくれた。
きっと大丈夫。