16-6.力
「何じゃその体たらくは!
本気でやらんか!!」
「そんな事言ったってぇ~!」
ルネルに転がされながら必死に逃げ回る。
魔法の使えない今の私がまともに攻撃出来るわけがない。
転移も無しに近づく方法なんて見つからない。
「大した実力も無いのに転移なんぞに頼るからじゃ!
強力な魔法に頼りすぎるにはお主の悪い癖じゃ!」
「良い機会じゃ!
魔法を取り戻しても転移の戦闘利用は禁止する!
この言い付けを破ることは決して許さぬぞ!」
「酷い!!!」
期限は!?
ルネルを越えるまで?
実質一生じゃない!?
そんなぁ!!
『やっぱおかしいって・・・』
ニクスのボヤキが聞こえる。
セレネとノアちゃんも一緒に拉致られた。
連帯責任のようだ。
私一人では辛すぎるから二人には悪いけど一緒に頑張ってもらおう・・・
『ニクス!助けて!何とかして!』
追い詰められすぎて神頼みまでしてしまう。
『・・・大丈夫です。
殺意はありません』
『そんな事はわかってるわよ!
それでも助けてってば!』
『わた』
「集中せんか!」
ニクスの言葉を遮って、
ルネルの怒鳴り声が響く。
なに今の!ニクスの妨害したの!?
今なにかいいかけてたわよ!!
ルネルいったい何やったの!?
「力に頼るなと言うておるのじゃ!
お主ほんと良い加減にせい!」
神頼みしたのバレてるの!?
更に苛烈さを増したルネルに投げ飛ばされていく。
気を失っても叩き起こされ、
結局、数日間に渡ってしごかれることになった。
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気が付くと、
いつかのように教会のベットに寝かされていた。
両隣にはセレネとノアちゃんも寝ている。
二人の寝顔を暫く眺めて、
ようやく地獄が終わったのだと実感が湧いてくる。
よく私魔王化しなかったわね・・・
二人の事じゃなければ問題ないのかしら・・・
『邪神もあの人には目を付けられたく無かったのでは?』
『ニクスも苦手?』
『・・・はい。
アルカとの繋がりを辿られました。
この世界の住人に攻撃されたのは初めてです・・・
あの方なら邪神倒せるかも・・・』
ルネル・・・
もうツッコまないわ。
『まあ、大丈夫よ。
ちょっかいかけない限り、
ルネルが自分からなにかしたりはしないから』
『・・・そうですね』
『少し雑談でもしてましょう。
やっとゆっくり休めるのだから、
あの地獄はもう思い出したくないわ』
『もう十分寝ていましたよ?』
『気持ちの問題よ。
良いから、ニクスの好きなものでも教えて?
まずはニクスの事をもっと知りたいの』
色々聞きたい事はあるけど、
まずは仲良くなろう。
話はそれからだ。
話す気があるのならとっくに教えてくれているのだろう。
私の心は見えているはずだ。
伝える意思が無くても勝手に読み取って言葉をくれる事は既に何度もあったのだから。
この考えも知っているのだろうけど、
別にやましい気持ちは無いのだから気にする必要はない。
『ありがとう。アルカ』
『私は・・・』
それからニクスは少しずつ話せる事を話してくれた。
普通の雑談でも言葉に詰まる事も少なくはなかった。
おそらく本当に話せない事が多いのだろう。
それでも、ノアちゃんとセレネが目覚めるまでは会話を続けた。