16-4.プレゼント
私達はノアちゃんの誕生日プレゼントを選び終えて宿屋に戻る。
「お帰りなさい。
随分と遅かったですね。
用事は済んだのですか?」
「ええ。待たせてゴメンね。
これから行きたいところがあるから、
ノアちゃん達も支度してくれる?」
「良いですけど。
どこに行くんですか?」
「美味しそうなお店を見つけたから行ってみたいの。
そろそろ良い時間でしょ?
晩御飯にちょうどいいわ」
「わかりました。
けど、良いんですか?
まだ目的地までは少しかかりますよ?
あまり無駄遣いしている余裕は無さそうですが」
「大丈夫よ。
たまには贅沢しましょう。
ここまでよく頑張ってくれたもの」
「まあ、アルカがそう言うなら。
すぐに支度しますね」
今度は四人全員で、再び宿を出る。
プレゼントを探しながら目星を付けておいたレストランに向かった。
今日はノアちゃんの大好きな肉料理だ。
きっと喜んでくれるだろう。
そうして、席について料理が並んだ所で、
今回の趣旨を明かす。
「「誕生日おめでとう!」」
「・・・え?」
「まあ、
厳密にはまだ早いのだけど旅の最中だからね。
ゆっくり出来る時にちゃんと祝いたかったの」
「これプレゼントよ。
私とセレネで依頼をこなして準備したの」
私はノアちゃんにプレゼントの包を差し出す。
「ありがとうございます!」
「ママ、おめでとう?」
リヴィはまだ良くわかっていない。
「リヴィにもあるのよ。
前はドラゴンだったからこんな風には祝わなかったものね。
リヴィの誕生日はちょっと過ぎちゃってるけど、
おめでとう!リヴィ」
セレネがリヴィにも包を差し出す。
「ありがと!」
リヴィも嬉しそうだ。
何となく祝われている事はわかったらしい。
「開けていいですか?」
「「どうぞ!」」
二人にプレゼントしたのはお揃いのチョーカーだ。
色違いで鈴が付いている。
まさか奴隷の珍しくないこの世界で、
ファッションとしての物が見つかるとは。
しかも嬉しいことに、かなり出来が良かった。
そして、ちゃんと人間用だ。
決してペットの首輪じゃない。
というか、多分この世界でペットを飼う文化は一般的ではない。
一部の金持ちくらいだろう。
あとは鳩とかはいるだろうけど、
ペットというより仕事道具扱いに近い。
それでも、セレネは少し微妙な反応をしていた。
まあ、首輪って考えるといい気分はしないのだろう。
少なくとも私のいた世界ではチョーカー自体はファッションの一部だと話したら興味を持ってくれた。
最後には今度自分にも選んで欲しいとまで言い出した。
何か琴線に触れたのだろうか。
セレネは可愛いものが好きだしね。
ノアちゃんは何の道具かわかっていないようだ。
けど、鈴には興味を示してくれた。
手で振って、音を楽しんでいる。
私はノアちゃんの手から受け取って、
ノアちゃんの首に付けてみる。
「首輪ですか?」
「多分ノアちゃんが想像しているのとは違うわ。
チョーカーって言うんだけど、
装身具の一種よ。
奴隷や犯罪者に付ける意味での首輪ではないの。
この世界では一般的では無いから抵抗があるかしら」
「いえ。そんな事無いです。
むしろ首輪でも嬉しいです」
「え?」
「アルカのものだって証拠みたいですから。
リヴィの分も同じなのは少し複雑ですが」
なるほど。
そっちの意味をもたせちゃったか・・・
もしかしてセレネもそれで欲しくなっちゃったの?
ならいっそ、
早めにちゃんとした指輪を送ろうかしら。
もう十五歳まで待つのは認めてもらえないだろうし。
成長は止まってるからサイズも問題ないし。
「アルカ安心して。
ノアはちゃんと喜んでいるわ。
アルカの思っている以上にね」
私の沈黙をセレネがフォローする。
いけない。
折角の誕生日に考え込んでいる場合じゃない。
「それは良かった。
さあ、ご飯にしましょう!
今日はいっぱい食べてね!」
「「「は~い!」」」
リヴィはチョーカーを尻尾に付ける事にしたようだ。
首につけるのは単純に邪魔くさかったらしい。
ノアちゃんは、
髪飾りとかとは違い、
初めて毎日付けてくれた。
本当に気に入ってくれたようだ。
予想外の意味を見出してしまった時は焦ったけど、
これだけ気に入ってくれたのなら私も嬉しい。
『更に業が深まりましたね』
もうとっくに役満だもの。
今更一つ増えたくらいどうって事無いわ。