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2-11.聖女の目的

私は質問を続けていく。



「なぜ他の冒険者を巻き込んだの?」


「元々、わたくし個人で持てる戦力はございません。

そのため、巡礼の旅を行うにあたって、冒険者の方々に助力頂くつもりでした。

そうしてそのように手配したのですが、その後になってわたくしの護衛の為と、

枢機卿の手配した騎士達を同行させる事になりました。

彼の目論見は分かっていても、これを阻止する事が出来ませんでした。」


「このままでは、冒険者の方々は枢機卿の手の者によって始末されるでしょう。

かといって、護衛依頼を取り下げてしまえば私は無力です。

そうして、アルカ様をお呼びする事にいたしました。」


「つまり私を利用する為に冒険者達の命を人質にするのね?」


「アルカ!?そんな言い方!」


「ノアさん良いのです。アルカ様の言う通りです。

私は自分の命可愛さに皆様を巻き込んだのです。」




やりづらい!

聖女のやった事は到底許せるものではない。

かといって、それ以外に手段があったわけでもないのだろう。


今更引き返したところで、教会の騎士達がすぐに襲ってくるだけだろう。

ならば、油断させて待ち構えて返り討ちにする方が堅実だ。




「敵は私の事をどこまで把握しているの?」


「可能な限り隠蔽は行っております。

相手からは一冒険者として認識されているでしょう。」



本当に?

最高ランクの冒険者を動かして隠し通せるか?

相手だって馬鹿じゃないだろうし、

こちらの戦力把握くらいしてくるだろう。


念の為、相応の戦力を用意してきているものと考えておこう。




「なぜ聖女になったの?

そこまで分かっていてなぜ続けているの?」



「聖女は幼少期に素質があると見込まれた者が教育されます。

あの時の私にはそれ以外の選択肢を考える意思がありませんでした。

今では聖女の在り方に疑問を抱いておりますが。」


「それでも、私はこれ以外に生き方を知りません。

そして、私が逃げ出した所で次の者が聖女に選ばれるだけでしょう。」



洗脳教育?

なんでセレネは抜け出せた?

歳の割にずば抜けて賢いから?



聖女という立場や話し方、第一印象のせいもあり意識していなかったが、

この子もまだ子供だ。10に満たないのだ。

一人で教会を出て生きていけなど言えるはずがない。


自分で死を偽装してまで逃げたノアちゃんが凄いだけだ。

まあ、そこは受けた教育の違いも大きいのだろう。





あと気になることはなんだろう。


明日動くと考えている理由は、野営地の近くに深い谷があるからだろう。

もろもろ証拠を隠滅するのにおあつらえ向きだ。


これにはセレネも同意した。

他にもいくつか候補地はあるが、最初に動くとしたらここだろうとの事だ。




「セレネは今回の件の着地点をどう考えているの?

無事に教会まで帰れれば済むとは思っていないのでしょう?」


「はい。おっしゃるとおりです。

この件を元に枢機卿の失脚を目指します。」


「目算があるの?」


「かの者は強引で敵も多く、他の者達もこの機を逃すことはないでしょう。」


「今回の件が済んでも結局他の勢力に狙われるだけなのよね?」


「それはその通りです。しかし、そこはもはや変えようがありません。」





そろそろ限界だ。

ノアちゃんにセレネを送ってもらい、

この場は終わりにする。





一先ず、明日やるべき事は

騎士達からセレネ達と冒険者達を守る事だ。


そうして捕縛してしまえば証拠となるのだろう。



話を聞いていると、セレネの計画には不安要素が多い。

というかぶっちゃけ穴だらけにしか見えない。


本当に敵の戦力はこれだけ?

今いる者達は見た限り大したことはない。

同行している冒険者達を始末してセレネを捕縛するくらいは問題ないだろうが、

とても私の相手ではない。

どこかに伏兵はいないのだろうか。


敵だと分かっているのだから先に仕掛けてしまえばとも思うが、

名目上は聖女の護衛であり、大義名分は相手にある以上、

こちらから仕掛けるのは相手の思うつぼかもしれない。

付け入れられる隙は減らしたい。



無事に教会に帰れたとしても、枢機卿を失脚させる事が本当にできるのだろうか。

この旅で一方的に騎士達を同伴させてくるだけの力の差があるのに?

他の勢力もそれすら止められなかったのに?

セレネが当てにしている者たちは本当に味方になるの?

もう既にその枢機卿の手の内だったりしたら?


流石に、このまま黙ってセレネの考え通りに動くのは博打が過ぎる。

もう少し計画を詰めていかなければ。



結局のところ、セレネ本人も教会そのものに立ち向かえるほどの強さはないのだ。

どこかで聖女としての自分に諦めてしまっている。


ノアちゃんと同じにしてはいけない。



私はどうしたいのだろう。


ここまで関わった以上見捨てたくない気持ちも多少はある。

何より、相手は可愛くて幼い女の子だ!

しかも最愛のノアちゃんと同じ顔をしているのだ!

見捨てたら寝覚めが悪いなんてものじゃない。




それでも、はたしてそれが教会を敵に回してまで、

ましてや、セレネ本人が望んだわけでもない事までやるべきなのだろうか。




「アルカ!セレネを助けてください!」


帰ってきたノアちゃんが私に頼み込む。

その瞬間私の心は決まった。

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