15-15.顛末
ようやく本当に落ち着きを取り戻し、
改めて状況を整理する。
またこんな事を繰り返さない為には、
まずは認識することだ。
ニクスも言っていた通り。
「私は二人に嫌われたり、
失ってしまうと考えると、
邪神の干渉を許してしまう」
「私達は絶対にアルカにそんな風に思わせてはいけないのですね」
「そんな事があるわけないのだけど、
悪ふざけだろうと、
私達の我儘だろうと、
それらの感情を刺激するような言動は控えましょう。
たぶん、アルカは思い出してもダメなのよ。
そう感じてしまった時の事を思い出そうとするだけでも、
邪神の干渉を許してしまう」
「そんなのいつか全ての事が繋がってしまうかもしれないわ。
最悪、二人の顔を見ているだけで、
ふと思い出してしまうかもしれないもの」
「そうしないために、
常にアルカの気持ちを気遣いましょう。
心が穏やかであれば、
楽しく感じていれば、
嫌なことなど思い出さなくなります」
「そうね。
それに、私達がキッカケになって干渉を許してしまうほど、
アルカは私達の事を想ってくれているのだもの。
これ以上ない証拠とも言えるわ」
「流石に邪神の干渉を気持ちの証明に使うのはポジティブ過ぎない?」
「事実でしょ?」
「そうだけど・・・
なんか嫌だなそれ。
ちゃんと私の行動で二人のこと納得させたいもの」
「大丈夫です。
疑っているわけじゃありません」
「そうよ。
ただ、私達も気持ちが暴走してしまうだけなの。
それだけアルカの事を好きなのだともう知っているでしょう?」
「うん・・・」
「大丈夫よ。
もう二度も凌いだのだから。
また何度来ようが私達が必ず引き戻すわ」
「ありがとう。お願いね」
「「うん!」」
「この状況で話すのもあれなのだけど、
必要な事だと思うから言うわね」
「そんな警戒しなくても大丈夫よ。
何を言われても嫌いになったりしないわ」
「え~と、ニクスのくれた力の事だけど、」
「・・・続けて」
「うっうん。ニクスはセレネが力の使い方を導くって言ってたじゃない?」
「・・・そうね。
そんな事したかしら?」
「うん。実はしているのよ。
前にニクスとアムルの関係について、
セレネの考えた事を教えてくれたでしょ?」
「そうね。
ニクスはアムルを大切に思っているはずって話よね」
「そう。その話。
その話があったから、
私はニクスの事をもっと知ってみたいって思ったの」
「アムルの事を後悔して、
それでも私達を巻き込んで、
そうやって一人で戦い続けて来たのかなって。
私達に恨まれてもこの世界を守り通したいのかなって」
「けれど、
そんなのニクスは寂しいんじゃないかなって思ったの。
だって彼女は大昔の人の事をまだ想い続けているのだから。
少なくともそんな優しい心を持っているのだから」
「私なら絶対に耐えられないって思ったの。
だから話をしてみたいと思ったの。
もしかしたら彼女にも救いが必要なのかもしれない。
彼女の抱えているものを支えてあげるべきなのかもしれない。
私はそう思ったの」
「つまり、何が言いたいかって言うとね、
私はそう考えてニクスに心を開いたけど、
それで二人の事を不安にさせてしまったけど、
それでも、きっと後悔はしていないの」
「だから、これからはニクスと
そんな話しをするためにも行動したいの。
こんな事を頼まれたら嫌かもしれないけど、
二人も手伝ってくれる?」
「確かにこの状況でよくその話ししたわね」
「まあ、アルカですから」
「そうね・・・
けど、他にタイミングも無かったでしょうし、
黙ってそんな方針決めたことを後で知ったら、
私達も傷つくでしょうしね。
だから、まあ話すなら今しか無かったのでしょうけど・・・」
「少なくとも、私達が心配するような感情を抱いていないのは良くわかりました」
「けれど、ヘタをすると、
それ以上に入れ込んでいるわよ?」
「そうですね。
ちょっとした火遊び程度の方がまだマシだったかも知れません」
「私が塩を送ったせいよね・・・」
「けれど、アルカの為にもそれは必要なことでした。
女神もどうやってかその事を把握していたようですし避けられなかったのでは?」
「本当にね。
女神には未来でも視えているのかしら」
「そうでなければ説明出来ないピンポイントな助言でしたね」
「なんだか癪だわ。
手のひらで踊らされているのよね」
「まあ、あれでも神様ですし」
「二人とも散々な言いようね」
「仕方がないじゃない。
私達はまだアルカ程、
女神に心を許しているわけじゃないわ。
やっぱりチョロ過ぎよ」
「そこはアルカの良いところでもありますけどね。
まあ、欠点でもありますが」
「何かごめん・・・」
「まあ、ともかくアルカの気持ちはわかったわ。
私達も協力するって約束する」
「だから信じていますよ。アルカ。
目移りしないでくださいね」
「もちろん!
二人ともありがとう!」