15-14.弱点
何とか宿屋を追い出される前に事態の収拾に成功し、
泣きつかれたリヴィの眠るベットの横で、
私はセレネとノアちゃんに縋りつかれていた。
「もう二人とも安心して?
そんな簡単に心移りしたりはしないわ」
「・・・やっぱり信用できません」
ひどい・・・
「アルカの事を疑いたいわけじゃないけど、
流石にチョロ過ぎない?
きっと相当に心を開いていないと無理だと思うわよ?」
チョロ・・・
セレネもひどいことを言う。
まだ全然収拾ついてないなこれ。
「アリアもレーネもいるのに、
次はニクスも加わるのですね。
いずれはルカとリヴィも・・・」
「グリアさんもルネルさんも見た目だけは好みのはずよ。
油断はできないわ」
「二人とも~
信じてよ~」
二人のあんまりな言い分に私は情けない声で返すしかなかった・・・
「そうやって味を占めたら、
今度はエイミーさんにも手を出すかもしれませんよ。
特別な思いを抱いているのは違いありませんから」
「そうね。ありえそうだわ。
何としてもそんな未来は回避しましょう。
ハーレムなんて絶対に認めないわ」
「エイミーはお姉ちゃんで恩人だって言ってるのに・・・」
二人は私の事など無視して、
私を挟んで会話を続ける。
段々と私の心が粟立っていくのを感じる。
「そろそろ強引に事を進めるべきかしら。
ノアの成長を待っていられないのかも」
「セレネ!何をする気!?」
「どんな手段かは知りませんが、
方法があるのなら教えて下さい。
もう今さらですし、
二人で力を合わせてアルカを繋ぎ止めましょう」
「もうしっかり繋がってるってば!」
「そうね。
一番になるのは諦めないけど、
まずは本当に私達が一番なのだと刻みつけましょう」
「信じてよ二人とも~!」
「では一旦休戦という事で」
「二人とも!良い加減にしなさい!
私を追い詰め過ぎたら魔王になっちゃうのよ!
無視だけは止めて!」
「次は許さないって言ったわよ?」
「冗談なんかで言ってるんじゃないの!
本気でもう止めて!
あなた達を失うかもって思ったらすぐに堕ちちゃうってわかるの!」
「・・・ああ、それで。
本当みたいね。ごめんなさい。
もうしないから落ち着いて」
「私もやりすぎました」
「私もごめんね。
二人を不安にさせたかったんじゃないの」
「わかってるわ。
大丈夫よアルカ。
私達はどこにもいかない」
「ずっと側にいると約束しました」
「百年だって千年だってそれは変わらないわ。
永遠に側にいてあげる」
「だから不安にならないで下さい。
私達もアルカを信じますから、
私達の事も信じて下さい」
「うん。ありがとう。
信じてる」
二人に抱きしめられて、
心が落ち着いていくのを感じる。
ちょっと無視されただけでどうしてここまで落ち込んでしまったのだろう。
無視はしていても、
二人は私の事を振り向かせようと話していただけだ。
どうして失ってしまうかもなんて思ったのだろう。
何か既視感のようなものと妙な不安を感じる。
前にそう思った事を思い出したの?
なんでそんな事思ったんだっけ?
上手く思い出せない・・・
「アルカ!今すぐ考えるのを止めて!
こっちを見て!」
セレネの慌てた声が聞こえる・・・
「アルカ!
大丈夫ですから!私達はここにいるから!」
ノアちゃんの声が少し遠くに聞こえる。
おかしいな。眼の前にこうしているのに・・・
「「アルカ!!!」」
誰かにキスをされて沈みかけた意識が急浮上するのを感じる。
今のはどっち?
ノアちゃん?セレネ?
「「良かった~」」
二人は私の様子を見て安堵している。
なんだろう。この違和感。
「「ごめんなさい!」」
また私に縋り付いて泣き出してしまった二人を抱きしめる。