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2-10.二日目

二日目の野営予定地に到着した。



今日も一日何事もない退屈な旅だった。

まあわかってたけど・・・


私は、今日は隊列から少し離れた所に、

大きいテントを設置し、こたつセットを配置した。


「今日は良いんですか?」


「ちょっとね。聖女セレネ呼んできてくれる?」


「なるほど。わかりました。」


ノアちゃんを一人にするのは気が進まないが、

この距離なら何かあればすぐに察知できる。

ノアちゃんに呼びに行ってもらうこと自体にも

意味があるので仕方ない。


結局、聖女を隊列から連れ出すのも、

テントに誘い込むのも周囲へ与える印象は大差無いと思い、

大型のテントを設置する事にした。


昨晩、食事時にノアちゃんと聖女が一緒にいるところは

大勢に見られているので、ノアちゃんに呼びに行かせれば

口実になるだろうと判断した。


おそらく、聖女セレネにもその目的があったのだろう。



私はこたつの上に食事を配置していく。





「どうぞいらっしゃい」


ノアちゃんがセレネを連れて戻ってきた。


私達はこたつに入って、食事を始める。


「それにしても驚きました。

こんな快適な野営は初めてです。」


「ですよね!」


ノアちゃんのドヤ顔可愛すぎる!

カメラ!!!

ハアハア・・・



時間無いから真面目にやろう。


「防音結界張ったからここでの会話は外には聞こえないわ。」



「ありがとうございます。助かります。

では、あまり時間も無いので本題に入らせて頂きます。」


「まずは、申し訳ございません。神託は虚言でございます。

アルカ様達を騙しました。この旅にどうしても付いてきて頂きたかった為です。」


「私達は狙われています。犯人は枢機卿の一人。

今回同行している教会の戦力は全て枢機卿の息がかかっております。」


「味方は私の付人とアルカ様達、そして冒険者の皆様です。」


わたくしは明日の野営時に敵が動くものと予測しております。」


「大筋としては以上です。謝って済む事ではございませんが、

改めて本当に申し訳ございません。恥を承知でお願い致します。

どうか、アルカ様にお力添え頂けないでしょうか」



いつか聞いたセリフだ。

なんで同じ顔で同じ事を言うのだろう。



私は内心で頭を抱えながら、

表面は冷静さを取り繕う。


どう考えても冒険者に依頼する内容じゃない。

教会内の内輪もめに無理やり巻き込まれたのか。


今すぐノアちゃんを連れて逃げる?

そうすれば、この聖女はきっと殺されるのだろう。


ノアちゃんはきっと悲しむ。

昨日仲良くなったのはこのため?

そうだとするなら、私は聖女の事を許すことができない。

私を仲間にするためにノアちゃんを利用するなど。


一旦落ち着こう。

今はこの聖女の真意を問おう。

今話したのは表面上の事だけだ。

誰が何を考え、どう行動しているのか把握しなきゃ。

関わってしまった以上とやかく言っていられない。


とはいえ、長く話している時間は無いだろう。

昨日とは違い、人の目の届かないテントの中だ。

何か企んでいると思われたら本末転倒だ。


質問は慎重に選ぼう。





「なぜ私なの?」


わたくしは三年程前にアルカ様に救われました。

それ以来、アルカ様の事は常に調べさせて頂いております。

わたくしは貴方様を信頼しております。」



全く覚えていない。

確かに三年くらい前にこの辺りに居たはずだが、

顔を見ても記憶に掠りもしない。



「悪いけどあなたの事は記憶に無いわ。」



聖女セレネは突然、恍惚とした表情で熱く語りだした。


「覚えていないのも無理はありません。

アルカ様は私の顔は一瞬しか見ておりませんでしたので。

私の無事を確認して、何も言わずに立ち去られました。

まるで、こんな事は何でも無いと言うかのように。

颯爽と立ち去っていく姿が今でも鮮明に思い出せます。」


「今回、貴方様と再会して正面からその鋭い視線を目にした時、

この方はやはり変わっていない。

憧れた格好良い姿そのままだと感動致しました。」




何も言わなかったのはコミュ障発揮してただけね!

鋭い視線って、セレネの事警戒してたのが顔に出てたの!?

流石にこの話聞くと罪悪感湧いてくるわ・・・


というか、そんな目で見ないで!


ノアちゃんと同じ顔でノアちゃんとは温度の違う

熱視線送られると何かやばい!


あかん、語彙力が低下している。



冷静になろう。

私はセレネの事を昔救った。

故にセレネは私を信頼している。


重要なのはこの一点だけだ。

今は時間が惜しい。


今度は神託の話の時と違い、素直に信じる事が出来た。

おそらくセレネが本心で喋っているからだろう。



気を取り直して質問を続ける。


「なぜあなたは狙われているの?」


「それにつきましては、まず聖女が何なのかを説明させていただきます。

聖女とは、その昔勇者と共に魔王を封印した者が始まりでした。

それ以来、代々選ばれた者が聖女の名を継いできたのですが、

現在の聖女にそのような力はございません。

もはや名ばかりの存在となっております。」


魔王と勇者っていたのか・・・

そんな話聞いたことないけど、教会でしか継がれていないのだろうか?

今は関係ないから一旦置いておこう。


魔王復活とかしないよね?


セレネは続ける。





「言葉を選ばずに申し上げるならば、

力を失った現在の聖女とは教会内での政治の道具なのです。

聖女個人に強い権限を持たせる事もないのに、

聖女を手にした勢力が中心となるのです。

まるでトロフィーのように扱っているのです。」


よくわからない。

なんで何の力もない存在を求めるんだ?

なんでセレネは聖女なんてやっているんだ?


「現在、わたくしは誰の物でもありません。

各勢力がわたくしを求めて争っています。

一応、一定のルールはございますが、

当然手段を選ばない者はおります。」


「今回の巡礼の旅に手の者を差し向けた枢機卿はまさにそのような人物です。

おそらくわたくしを捕らえて傀儡とするのが目的でしょう。」


「教会内には私に味方する者もいます。

わたくしを懐柔しようとする者達でもありますが。」



セレネは殺されるわけではないの?


教会内ではあからさまな手段を取れないから、

人の目の無い所で行動するということ?


ある者は直接武力を差し向け、

ある者はそれを聖女に教えて味方に引き込もうとする。



なんでこんな回りくどい事をしているんだ?


やっぱり聖女という存在に何か意味があるんじゃないのか?

セレネ本人が知らない何かが。



もしくはまだ何か隠してる?

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